空想の街【仕立屋】【宅配便】

はりか（玻璃花） @likeanalleycat

その客人は画集に見入っていた。「ミルクティーをウバで。畏まりました」これは私も好む組み合わせである。「サンドウィッチでしたら、ハムたまごサンドとレタスサンドをご用意しております」あいにくカツサンドは品切れだった。 @naholograph #空想の街 #仕立屋 #ブックカフェ黒猫

七歩 @naholograph

レタスサンドは美味しかった。肝心の紅茶の方も、なんてストロング。思いがけず素敵な場所を発見した喜びに顔がにやけるけれど、雰囲気を壊したくなくて画集に夢中な振り。今度はこのお店に似合う服仕立てて着てくるんだ！@likeanalleycat #空想の街 #仕立屋 #ブックカフェ黒猫

七歩 @naholograph

店に戻ると仕事が待ってる。さ、始めるよ。依頼者は女子高生。相手は同じ高校の先輩らしい。マルケーで、朝と帰りに一駅分だけ一緒になる。相手とは会話したことなし、か。何この甘酸っぱさ。見詰めるだけの片想いなんて、もう何年前に燃えないゴミに捨て去ったか。#空想の街 #仕立屋

七歩 @naholograph

片想い。それもどこにでもあるような。ぶっちゃけ服でどうこうできるって話じゃないわ。けれど彼女は服に頼った。だったらしてあげられる事は1つ。彼女が信じるに足る「恋が叶う服」を作るの。告白しないと恋は始まらないのよ。だから告白しない言い訳ができないそんな服を作る。#空想の街 #仕立屋

七歩 @naholograph

お守りに相応しい布を使おう。流れ星の流れる布のワンピースとかどうかしら。紺色で清楚、比較的安価。女子高生には丁度いいわ。ざくざく切ってざくざく縫って、戦闘服を調える。星が流れる。後悔少なめに戦えますように。よし、終了。今日は頑張ったな。これで明日はお届け二件。#空想の街 #仕立屋

七歩 @naholograph

カランカラン。ドアの音と共に女の子が駆け込んできた。「わーん」泣いている。たじろぐバイト君。あ、この子もしかして。「なーに？失恋？」声を掛けた私を睨んだ。その真っ黒なおかっぱに流星のワンピース、よく似合ってるじゃない。さすが私。貴方、恋が叶う服のお客様ね。#空想の街 #仕立屋

七歩 @naholograph

奥に通して紅茶をクッキーをだすと、少し落ち着いてきたようだった。女の子は顔を赤らめる。そりゃ恥ずかしいよね。さてと。「告白できた？」「でもダメでした」「できたならよかったじゃない」「よくないです。私は恋が叶う服をお願いしたのに」知ってる知ってる。#空想の街 #仕立屋

七歩 @naholograph

「この服すっごく可愛くて、これならってさっき告白しました」「そしたら？」「君のこと知らないから付き合えないって」まーそうよね。可愛いからとりあえず食っちゃおう系の相手じゃなくて良かったじゃない。「恋が叶う服をお願いしたんです。恋が叶わないなら約束違反です」#空想の街 #仕立屋

七歩 @naholograph

うんうんそう言うと思った。「で、諦めるの？」女の子は不思議そうな顔をする。「だって断られて」「好きってそれで終わっちゃうの？」女の子は黙り込んだ。「あなた今回、知らない人から告白してくれた人に格上げされたのよね？」「そうですけど」「なのに諦めちゃうの？」#空想の街 #仕立屋

七歩 @naholograph

「諦めないってありなんですか？」「ありなしって話じゃないもの。気持ちってそうなるようにしかならないじゃない」女の子は考え込む。「私、好きです。諦めたくない」「じゃ、それでいいんじゃない？」「いいのかな」「だから今回、あなたがしたのは失恋じゃない。」#空想の街 #仕立屋

七歩 @naholograph

あの服のお陰であの子は気持ちを伝えられた。気持ちを伝えることを覚えた。それが出来れば、いつか必ず、あの子の恋は叶うはず。今この恋じゃないとしても、あの子の恋はいつか叶うの。言葉にしないと伝わらない。それさえ解れば、いつか、恋って叶うのよ。#空想の街 #仕立屋

七歩 @naholograph

なーんて言ったって今だと言い訳がましいじゃない？言葉には旬ってものがある。この言葉を最高の状態で食べて貰う為には、もう少し熟成が必要なのよ。だから今、一番大切なのは、あの子との関係を繋ぐこと。それには成功したみたい。いつかウェディングドレスの注文ゲットするわ！#空想の街　#仕立屋

七歩 @naholograph

「僕びっくりしましたよ。こういう事、よくあるんですか？」バイト君が聞く。「あるわよ？っていうか無茶ぶり注文は殆どがこんな感じかな」「仕立屋って大変なんすね」甘いなバイト君。この街では、仕立屋が仕立てるのはその人の人生よ？だからそれくらい当然なのよ。#空想の街　#仕立屋

原 沙良葉 @harasaraha

仕立屋の郵便受けにそっと手紙が落ちた。白い封筒の手紙。『こんにちは。神楽山洋子といいます。以前にレインコートシルエットの橙のコートを仕立てて頂いたのだけど覚えておられるかしら。一つ注文があって手紙を書きました』 @naholograph #空想の街 #黒山春樹の３日間 #仕立屋

原 沙良葉 @harasaraha

封筒の後から郵便受けの上にそっと包みが置かれた。もこもこした中身は布製の何かのようだった。 @naholograph #空想の街 #黒山春樹の３日間 #仕立屋

原 沙良葉 @harasaraha

『あの橙のコートを何か別の物に仕立て直してほしいのです。何にするかはお任せします。数日中に一人、眼鏡の男がそちらを訪れると思います。彼へ品物を渡して下さい。お代は同封の石でお支払します。よろしくお願いします』 @naholograph #空想の街 #黒山春樹の３日間 #仕立屋

七歩 @naholograph

「なあに？この訳あり臭プンプンな依頼」シンプルな白い手紙。「神楽山洋子。店長覚えてますか？」バイト君が言う。当たり前じゃない。「この橙は特別よ？時計塔の上から眺めた夕焼けの色っていうご指定だったの。」美しい橙のコート。#空想の街 #黒山春樹の３日間 #仕立屋@to_rakei

七歩 @naholograph

「そんな素敵な私の仕事を突き返すなんて許せないわ。きっちり納めさせてもらおうじゃない」「何に仕立て直すんですか」そうよ、そこよ。「欲しいです。ああもっと。って言わせるようなもの作ってやるわ」「店長、ドS過ぎます」#空想の街 #黒山春樹の３日間 #仕立屋@to_rakei

七歩 @naholograph

さてどうしよう。今の彼女のサイズがわからない以上、ぴったりなものは難しい。「そうねえ。それじゃ、マントにでもしようかしら」少し大きめに作って、後々サイズ調節が出来るようにしておこう。今夜までには出来るはず。#空想の街 #黒山春樹の３日間 #仕立屋@to_rakei

七歩 @naholograph

夕焼けの布と夕焼けの糸。この糸は、夜を教えると簡単にほどける。布には報せないようにするのが難しいけれど、そこら辺は匠の技ってやつ。糸解き時計を夜に合わせる。鳩がなく。するすると糸が解けて布に戻る。さて、やりますか。#空想の街 #黒山春樹の３日間 #仕立屋

七歩 @naholograph

橙の布を鋏が走る。迷ったことなんかない。頭の中にあるものをそのまま描くだけだもの。縫製。今回は夕焼け同志だから、なんの苦労もない。ただただ合わせる。種も仕掛けもいらない作業。うーん。布余ったな。おまけにブックカバーでも作っておこう。#空想の街 #黒山春樹の３日間 #仕立屋

七歩 @naholograph

「今回は」「お仕事ないの？」うちのお店に入り浸るウサギ宅配便が尋ねる。期待に満ち溢れた瞳。「ないわ。眼鏡の人が取りにくるって」顔を見合わせるウサ耳少女達。「商売敵？」「我々は耳、やつは目」「「不自由同志！」」いや、ただの代理人だと思うの…#空想の街 #黒山春樹の３日間 #仕立屋

七歩 @naholograph

「はい」バイト君にマントとブックカバーを渡す。「包んでおいてね。多分近いうちに取りに来られると思うから」「はい。ああ例の訳あり依頼ですか」「そうそう、宜しくね」うちでは包装はバイト君の仕事だ。意外と器用でセンスいいのよね。#空想の街 #黒山春樹の３日間 #仕立屋@to_rakei

七歩 @naholograph

商品を並べる。「「お手伝うー」」なぜついてきた。ウサ耳少女s。流れ星の布、たんぽぽ綿毛布、苺畑布他にも色々。それにしても、他のお店が気になるわけよね。「ねえ、ウサギさん達」「「なんだね」」「手伝いにきたのよね？」「「うん」」「店番お願い」遊ばにゃ損損。#夜市　#空想の街　#仕立屋