鎌仲ひとみ監督作品「ヒバクシャ　世界の終りに」を鑑賞して～沖縄より

mai @jrmmnisi

内部被曝の人体に与える影響がはっきりと分かっていたら、原爆も、核弾頭の製造競争が繰り広げられた東西冷戦も、そして平和利用と言われている原子力発電も存在しなかったかもしれない。それほど、「内部被曝」に関する情報は重要なのだ。（「内部被曝の脅威」ｐ10～鎌仲）

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病院は慢性の薬不足が続いていて単純な消毒薬にも事欠くありさまだった。優秀で熱意ある医師たちも、薬がなくてはどうしようもない。手術室やあらゆる場所で医療機器が老朽化し、交換部品がないために使えない状態で放置されていた。（「内部被曝の脅威」ｐ１５～鎌仲）

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子供たちは再建されない浄水場から送られてくる水を飲み、下痢をして腸チフスが流行した～経済制裁が直接の原因で、15歳以下の子どもがなんと60万人も死んだと言う。国連は、水の消毒薬や抗癌剤が大量破壊兵器の材料になるとして、イラクへの輸出を制限していた。（「内部被曝の脅威」ｐ１５～鎌仲

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発熱と下血が共通して続くので医師団はチフスと赤痢を考えた。～特に効果的な治療法があるわけではなく、高熱、口内壊死、紫斑、出血、脱毛に加えて下痢、嘔吐の急性症状を発症する患者の数は一向に減らなかった。（「内部被曝の脅威」ｐ３５～肥田）

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1943年、原爆製造中のマンハッタン計画の中枢で、中心的な科学者のエンリコ・フェルミが主任のオッペンハイマーに「ヒットラーに原爆製造を思い留まらせるには放射性物質をドイツの小麦畑に蒔くのが効果的だ」と話した時、

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オッペンハイマーが「それには骨に沈着して離れにくいストロンチウム90が一番よい。ただし、50万人を殺せる確信ができるまではやめたほうがいい」と答えたという話が残っている。（「内部被曝の脅威」ｐ８１～肥田）

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ボードマンが私の渡した報告書を高く掲げて、「ここにあった！私のほしいものが広島にあった」と／「原爆ブラブラ病」の項を指し「広島の原爆被害に今までの医学書に記載のなかった『ブ、ラ、ブ、ラ、シンドローム』がはっきり書かれている。私はこれがほしかった」（「内部被曝の脅威」ｐ１０９～肥田

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統計学者のＪ．Ｍ．グールドは報告に使われた統計に不審を抱き、全米３０５0郡が保有する40年間の乳癌死者数を全てコンピューターに入力し～調査した。その結果、１３１９の郡が増加し～それが郡の所在地と原子炉の距離に相関していることを発見した。（「内部被曝の脅威」ｐ114～肥田）

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すなわち、原子炉から100マイル以内にある郡では乳癌死者数が明らかに増加し、以遠にある郡では横ばい、または減少していたのである。乳癌死者数の地域差を左右していたのは～全米に散在する多数の各種原子炉から排出される低線量放射線だったのである。（「内部被曝の脅威」ｐ114～肥田）

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2002年に私はグールドに倣い、日本に５２基ある原子力発電所ではどのようなことになっているのか、調べてみた。ところが日本全土が原発を中心にして１００マイルの円を描くとすっぽり入ってしまい、原発のある県とない県を比較することができなかった。（「内部被曝の脅威」ｐ115～肥田）

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ハンフォード・エリアには九つの原子炉がコロンビア川のほとりに建設～1987年、政府はハンフォードに関する機密書類を公開した。～さまざまな種類の放射性物質を放出していたことである。その放出量の総量は、スリーマイル島の事故の１万倍にも相当していた。（「内部被曝の脅威」ｐ130～鎌仲）

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ハンフォードの風下地区は政府の灌漑整備によってアメリカ有数の穀倉地帯となった。あらゆる作物がここで生産され、もっぱら輸出される。りんご、じゃがいも、小麦、コーン、牧草、蕎麦などだ。その大部分を買っているのはファーストフード産業と日本の商社である。（「内部被曝の脅威」p133～鎌仲

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1985年、新たに監督官として赴任してきたケイシー・ルードは、ハンフォード独特ともいえる放射能に対する人々の態度に驚いた。放射線などとるにたらないものだ、という姿勢が隅々まで浸透し、ちょっとした事故も報告書なしですまされるありさまだった。（「内部被曝の脅威」p136～鎌仲）

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この町の食料品店で「放射性降下物質」という名のサルサ・ソースや「アトミック・ピクルス」、そしてハンフォード労働者のたまり場である洒落たレストラン「アトミック・エール」で「プルトニウム・ポーター」と命名された地ビールを発見した。（「内部被曝の脅威」ｐ137～鎌仲）

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いったん汚染された大地と水を浄化する技術はいまだ開発されていない。コロンビア川流域の600万人の住民が影響を受けることになる汚染の進行を止める方法は何もないのだ。また、この川をさかのぼり産卵する鮭はアラスカを回遊することが知られている。（「内部被曝の脅威」p139～鎌仲）

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イラクの子供たちの間に白血病や癌が増えはじめた～おびただしい数の障害児の出産、白血病、癌の増加はサダム・フセインの使った化学兵器が原因ではないかとアメリカは言い始めた。このような態度は、広島・長崎の被ばく者の内部被曝を否定してきた延長線上にある（「内部被曝の脅威」ｐ145～鎌仲）

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腫瘍専門医として経験したことのない症例が次々と出現する。多重癌もその一つだ。白血病と膀胱癌を同時に発症したり、脳腫瘍と胃癌が同時に見つかったり～一人の患者に同時にいくつもの癌ができるのは現在、高齢化した日本の被ばく者に起きていることと重なってくる（「内部被曝の脅威」ｐ147～鎌仲

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湾岸戦争で使われた劣化ウラン弾は300～900ｔだといわれている～今回のイラク戦争でおよそ2000ｔが使われ、しかもバグダッドなどの人口密集地でも大量の劣化ウラン弾の痕跡が発見されている～市街地で劣化ウラン弾を使うことにすでに米軍は踏み切っている（「内部被曝の脅威」ｐ149～鎌仲

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初めて湾岸戦争症候群と正式に診断され、亡くなったテリー・リデオン中尉～めまい、吐き気、出血、短期間の記憶力低下、震え、性的不全を起こしていた。放射能汚染と重金属毒性を併せ持つウラン２３８が、複数の内臓に高い濃度で沈着した結果が湾岸戦争症候群となる（「内部被曝の脅威」ｐ154～鎌仲

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彼が亡くなった時、実際は45歳だったが85歳の老人にしか思えなかった、と彼女（中尉の妻）は述懐する。重ねて言うと、リオドン中尉は決して湾岸戦争に参戦したわけではない。ただ戦後のイラクに滞在し、諜報活動をしただけで湾岸戦争症候群を発症したのだ。（「内部被曝の脅威」ｐ154～鎌仲）

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一方で、劣化ウランの放射性毒性に関しては影響が少ないとしながら、その金属毒性に関して影響があると示唆する科学者や医療者は多い～つまり、劣化ウラン弾の影響は放射性毒性と重金属毒性のダブルの危険があるともいえる。（「内部被曝の脅威」ｐ162～鎌仲）

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現代の科学では、体内に入った微量の放射性物質がどう振る舞うのか、100％解明されていないという壁がある～「ホールボディカウンター」で測ることができるのはガンマ線だけ～体内に潜んで弱い放射線を出す微粒子が、たとえ数億粒あろうと、それを外部から測る機械はどこにもまだ存在しない、

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体内に入って測ることももちろんできない。死んでから解剖する以外に方法はない。動物において放射線がどのような影響を与えるかは～同じ実験をしても動物の種類によって、全く違う結果が出てきている～人間は犬に近いのかマウスに近いのか誰にも分からないのが現状（「内部被曝の脅威」ｐ163～鎌仲

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ＷＨＯはチェルノブイリ事故の後、ベラルーシ共和国で増加した小児白血病に関しても、数年間もチェルノブイリ事故が原因だということを認めなかった。～事故後、ギリシャでは160％、ドイツでは48％、イギリスでは200％以上も、小児白血病が増加している。（「内部被曝の脅威」ｐ164～鎌仲）

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原発は事故の可能性、核廃棄物の処理の問題、ウラン鉱を掘り出すことによる周辺の環境汚染～などの理由で反対する人々も多い。しかし、事故が起こらなくとも確実に毎日、原発から「微量」の放射性物質が放出されている。その存在だけで被ばく者が生み出されていく。（「内部被曝の脅威」ｐ169～鎌仲