工房径ついのべ集 2012年5月

今月は少なかったですね。体調不良や小説の執筆などであまりついのべられず。無念です。アイコンははじめは鯉のぼり、そして最後は昨年から参加した震災復興支援チャリティ「プロジェクトうりゃま」でいただいたアイコン。このアイコンを残したくて昨日11:45過ぎからついのべを作りました。計21作。
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工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 風薫る5月。読書が好きな君のために、初めてのデートに選んだのは、少し遠い街の大きな図書館。嬉々として書架の間を縫う君のあとを、陽に照らされた埃がきらきら、夜空の星みたいに輝いて。僕はそっと君を追う。初めてのキスはどの書棚の影がロマンティックかな、と悩みながら。

2012-05-01 17:53:45
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 初めてのデートは高原でBBQのはずだった。「雨じゃ無理ね」赤い傘をゆっくり観覧車のように回す君。嫌だ、帰したくない。「カ、カレー、好き?」緊張で声が上擦る。「僕のは飴色玉葱どっさりで美味いんだ。うち来る?」いや、いきなり家はないか。俯く僕に君は笑って「いいかも」

2012-05-03 03:30:49
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel どうして帰らないの。残業中の私の横、チョコレートの包み紙で折鶴を作っている同期の彼。ふたりきりの部屋、響くのは私のキーボードを叩く音だけ。「なあ、終わったら話があるんだけど」胸の中で小さな火がくすぶる。ねえ、今夜こそくれる? ふたりの関係を変える切符を。

2012-05-07 21:26:01
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 残業中にプリンタのインク切れ。替えを探していると「お疲れ様です」立っていたのは女子の間で可愛いと評判の後輩。「カートリッジですか。僕持ってますけど」彼は私との距離を詰める。「ただであげたくありませんね」上下する喉仏に彼も男だと知る。窓には満月。彼の口元に尖る牙。

2012-05-08 13:34:02
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 私は壊れたピアノ。楽譜どおりに鳴らないひねくれ者。彼が掛けてくれる優しい言葉も、嬉しいくせに「からかわないで」としか言えなくて。「あなただって黒鍵ばかりの暗いメロディは嫌でしょう?」俯く私を彼は後ろから抱きしめる。「僕は好きだよ? 君の『ネコフンジャッタ』」

2012-05-08 18:07:11
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 水面に櫂を差し入れるように、そっと。臆病な君を慎重に追い込むつもりだった。なのに呼び出したカフェで、君が指でなぞるティーカップにすら嫉妬して。「話って、何?」結局大きく櫂を上げ、漕ぎ出す僕を許して。「愛してる」 #5月9日は告白の日というわけで告白してください

2012-05-09 23:15:15
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 重い資料を抱えていると「見てらんねえ。貸せ」荷物を奪い取る同僚の彼。ふたりで廊下を歩くうち、突然呪文のようにいくつも映画のタイトルを呟いて「おい、お前どうせ土曜暇だろ」。不器用なアプローチに顔が綻ぶ。カステラのザラメのところを上手く剥がせたみたいな、幸せな予感。

2012-05-10 16:57:55
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 泣きはらした私の前で、あなたはケーキの箱をゆっくりと開けた。「何で笑うのよう」「だって、目はしっかりケーキに釘付けなんだもん」そうだよ、心が潰れたってケーキが好きな私の中身はそのまんま。口にクリームがついたままあなたに抱きつく。「泣くなよ」ケーキより甘いあなた。

2012-05-12 04:29:03

5月14日ついのべの日【お題 空】

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#twnvday 落ち込む君を慰めたくて公園に呼び出した。なのに僕の言葉はへたくそなスケートみたいに、つらつらと滑るだけ。青空に上るため息は、ふたり分。ああ、金の翼のペガザスよ。叶うなら彼女の胸を塞ぐ雲を蹴散らし、僕に言葉を。「ありがとう」「え?」微笑む彼女の後ろに金のたてがみ。

2012-05-14 03:56:24
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空から恋石が落ちて来た。 #twnvday 真っ赤な小石がひとつ、私の胸にころんと入った。「ほんとにお前が好きなんだよ」背の高い幼なじみは照れくさそうに笑う。何よ、何よ。昨日まで子供扱いしてた癖に。七色の恋石が落ちてきて胸がいっぱい。「泣くなよ」最後に降ってきたのは、甘いキス。

2012-05-14 13:56:21
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#twnvday 円らな瞳の新人君は、我が課のアイドル。「先輩、これが分からなくて」計算ソフトが苦手だという彼と、PCを携え空き会議室へ。「え?」かちっという音と共に後ろ手に閉められた鍵。「この機会を待ってたんです」窓から見える鈍色の空をバックに、彼の背に浮かぶ、黒い翼。

2012-05-14 19:12:05
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday あなたと夜のデートは初めて。「君と夜空を見たかった」それはとてもロマンティックな理由だけれど。夜の丘の上は人影もまばらで、あなたは私の顔ばかり見てる。「空を見に来たんでしょう?」困った顔して笑わないで。このあとのことが気になるのは、あなただけじゃないんだから。

2012-05-14 21:42:48

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#twnovel 転属で同じ課になった憧れの彼女。あわよくばと期待したのに、鉄壁の防御は崩れない。それならせめて、孤高の谷間の百合でいて。甘く香って他の奴らを誘わないで。思いの丈を込めた視線に彼女は頬を赤らめる。「そんなに見ないで。どきどきしちゃう」あれ、高嶺の花は意外と近くに。

2012-05-17 21:57:46
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 今日は母校の文化祭。キャンプファイヤーの向こうに、ぽつりぽつり、教室の灯りが浮かぶ。最後の後夜祭、同級生に告白されて、教室を飛び出したことを思い出す。「懐かしい?」足音に振り向くと、そこには他ならぬ彼。「今度は逃がさない」耳元をくすぐる声はあの頃より低く、甘い。

2012-05-20 21:41:55
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 目を覚ますとキッチンから包丁の音。ぷん、と出汁の匂いが鼻をくすぐる。テーブルに並んだオクラと長芋の和え物、納豆。そっと近づき、耳元で囁いてやる。「糸を引く物ばっか。これ以上俺を元気にしてどうする気?」「そ、そう言う意味じゃないし!」慌てる君に、おはようのキスを。

2012-05-21 18:45:47
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel メールすらくれない彼に愛想が尽きた。「さよなら」ドアに手をかけても、悲しむでもない。ただ無骨な指で、ぽちゃん、ぽちゃん、紅茶に角砂糖2つ。ああ、私にも甘い言葉をくれたなら。「おい、忘れ物」彼が真っ赤になって差し出したのは、輝く指輪。「遅すぎたか?」ううん、全然。

2012-05-22 18:13:32
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 「簡単に目を閉じちゃだめだ」そう言いながら僕は君にキスをする。僕らは鳥のように自由。ただ君が僕を愛していないだけ。「何度キスをすれば、僕のものになる?」肩をすくめて、君はまた目を閉じる。君を繋ぎ止める呪文を知りたい。だからまた、僕は君にキスをする。 #キスの日 

2012-05-23 12:57:11
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel #今日は恋文の日 。「あなた、くれたことない」君はそう言って拗ねるけど。僕は書いてる。仕事に疲れて窓の外を眺めるとき。電車の中で夕暮れの町を見るとき。夜、先に眠る君にそっと毛布を掛けるとき。ねえ、君は違うの? 「そんなの、ずるい」そこで赤くなる君のほうがずるい。

2012-05-23 18:10:27
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 営業成績はいいほうだけど。君の前では、脳味噌が胡桃になっちまったか、からきし知恵が回らない俺だ。気の効いた言葉ひとつかけられず、車はもう君ん家の前。鬱屈した気持ちでドアを開ければ、君は笑顔で「お茶、飲んでく?」なあ、君みたいな営業手腕が俺にも欲しいよ。

2012-05-24 19:18:00
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 書類と格闘して3時間、そろそろ限界。肩を揉みつつ部屋を出た。廊下でバレッタを外し首を振れば、髪が解ける感覚が気持ちいい。「おい」戒めるような声に振り返れば、すぐ後ろに同期の彼が。「ごめん。髪当たった?」憮然とした彼は赤い顔。「シャンプーの匂いとか反則なんだよ!」

2012-05-27 09:49:21
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 夜の帳が降りると、私は素直になる。山積みになった仕事も、つまらない噂話も、すべては闇に溶けて見えなくなる。「会いたいの」電話をすれば願いは叶い、ドアは静かに叩かれる。あなたの側に猫のように擦り寄い今夜は眠ろう。「ありがとう」今なら言えるよ、こんな優しい夜だから。

2012-05-31 23:57:23