ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/05/05（子供の日＆スーパームーン）

おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 薄暗い部屋でやることと言えば、現実と虚構を区別していく作業ぐらいしかない。太陽、青空、雲、草原、森、川、海、ほとんどのモノは自分の脳内にしか存在しないとわかり愕然とした。本当にそれらが虚構なのか確かめるために窓の外を見ようとしたが、その窓もまた虚構の一つだった。

Ask @may_rabbit

#twnovel セックスの最中にだけ囁かれる愛の言葉は嘘くさい。セクサロイドである彼女は男の心拍数や脳内物質を計測し、分析し、それを快楽による興奮状態を愛だと勘違いしているだけだ、と判断する。それでも彼女は、セクサロイドと知りながら優しく触れ、愛を囁く男が少しだけいとしい。

layback @laybacks

台所で途方に暮れていると小さなおっさんがしゃしゃり出てきた。どないしたんや。水が流れないの。そらS字管で詰まっとるんやろ。わしが見てきたろ。止める間もなく排水口に潜り込んでしまった。暫くすると、あかん、と弱々しい声がした。どうしたの？　わしも引っかかってしもた。 #twnovel

tokoya @tokoya

#twnovel 小さい頃から僕の家には犬がいる。頭から尻尾まで真っ黒な犬。最初は子犬だったけど、今ではずいぶん大きくなった。でも一度も触れあった事が無い。いつもガラスの向こう側の部屋にいるからだ。どうしてなんだろう？「クロ？またそこにいたのか。オマエってホントに鏡が好きだな」

分煙 @POP_literary

#twnovel ビルが飛んでる、牛が飛んでる、草が飛んでる。でも私だけ地に足をつけている。生き物ってのは逞しいんだな、大地が無くても生きる術を見つけている。そう言えば私の事を「重力に愛されてる」なんて言った人がいたけれど、そんな事よりそろそろ首が痛いから何とかして欲しい。

天道三月@ノクターンでゆるっと活動中 @tendouyayoi

夕立の中、とある橋の上で対峙する俺と、自称“地球外生命体”の彼。空には宇宙船。今日は俺と彼の別れの日。「せっかく友だちになれたのに残念だよ」「ごめんね。でも仕方ないんだ。だって、あっしは渡り鳥。流れの宇宙人ですけん」「なんだよその口調。お前、宇宙人って嘘だろ絶対」#twnovel

ろばたにスエノ🦀 @robatani

長い旅の末とうとう赤い靴が壊れた。元々靴が壊れたらその場所に留まろうと考えていたので、小屋を建てた。ヒビが入ったガラスを砕き、破片を使って飾り窓を作る。長い旅の友であった赤いガラスの靴は放浪生活を止めた今でも、差し込む西日の光の中、こうして歩き、踊り続けている。　#twnovel

碧 @mimimdr

鉄板の上でたいやき君は怒りに震えた。子供達はこいのぼりに夢中である。鯉の分際で！こっちはあんこを詰め込まれているとはいえ、腐っても鯛だぞ！いや、新鮮だけど。悔しいのでたいやき君は空を飛ぶことにした。こいのぼりより高く飛んだところでカラスに食われた。美味しいでしょ？#twnovel

ふらっと @L_582

連休になればどの高速道路も渋滞になるわけで、ここも例外ではなかった。しかし、一日過ぎても進む気配すらしないというのは、どうもおかしい。そのうち、路上でBBQを始めたり、シートを広げ食事をする者も出てきた。何日経っても車列は動かず、皆はあきらめここで暮らし始めた。 #twnovel

いつみ @castle_ita

#twnovel 桃色の雨が降ってきた。空に平行なものには水玉模様、垂直なものには縦縞模様が、拒否権なくつけられる。わたしも例外ではなく、頭と肩が水玉模様で、他は縦縞になった。今日はせっかくお気に入りの花柄の服を着てたのに、柄物と柄物の組み合わせになってしまって非常にくどい。

塩中 吉里 @shionaka_kiri

#twnovel 巨大低気圧が街の上を通り過ぎると、幸福の象徴は風に吸い上げられて、どこか遠くに運ばれる。ハンターは気象図を広げ、低気圧が消えた海域を探り、潜水し、サルベイジした何かをブルーシートの上で売る。たくさんの人々が訪れる。ハンターは欠けたものを求める人々の顔を見つめる。

七歩 @naholograph

この時期のミケは狩人だ。またとってきた。「ミケ！鯉のぼりとっちゃダメ！」鯉の足りないお宅を探しては返す。ああ恥ずかしい。#twnovel　ご主人は解ってないにゃ。折角美人の奥様のお宅を狙っているのにこいのひとつも食えないなんて。人妻？そんなの関係ないにゃ。鯉も恋も命がけにゃ。

日向日影🍊📖@文化系物書きVtuber（HUB） @hyuugahikage

#twnovel 地球の中心にはつぶあんが詰まっている。この事実を人々は一笑に付した。写真を公開しても信じてもらえない。しかし、一部の日本人は歓喜した。やはりこの世界はつぶあんの世界であったのだと。一方ムキになって反対し、研究所を襲撃する人々もいた。こしあん過激派の誕生である。

碧 @mimimdr

死んだ君の脳を人工知能にトレースする。姿も仕草も言動も思考パターンも皆かつての君そのもの。一からやり直して、全ての失敗を回避し、今度こそ君を幸せにする。それでも君はある日別の男に走っていく。また失敗だったと君を眠らせる。死んだ君の脳を人工知能にトレースする… #twnovel

葦沢かもめ @AshizawaKamome

「ごちそうさま」皿を下げろ、とロボットに目を向けた。「博士、食べ残しがあります」「ピーマンは苦いからね」「好き嫌いはよくありません」「代わりに野菜ジュースでも飲めばいいだろう？」「駄目です。代償なしに何も得ることは出来ないのが人間だと、プログラムされております」 #twnovel

夢名 七志 @mumei7c

夜空に響く笑い声。「誰だ」悪事を働く輩が騒めく。「此の世に悪の栄えた例しはない」満月を背負いマントはためくその勇姿。「なんだ、きさまか」気を抜く悪漢ども。「おまえたちに負けた私ではない」飛び降りながら「30％明るく16％大きく」見得を切って着地する。「微妙だな」 #twnovel

七歩 @naholograph

月が綺麗ですね、と入力した。今日は特別大きく明るい月らしい。けれども雲が邪魔をして、噂の月は見えやしない。僕は正直安堵してる。君と最後に見た月よりも綺麗な月とか困るから。メール送信。届かない。君のいないこの世界で、僕の空にはいつもいつも、あの日の月が浮かんでる。#twnovel

山本アヒコ @lostoman

彼は空を一心に見つめていた。そこには夜空に輝く、大きな大きな満月。その美しさに魅入られた彼は自らの縛めを引きちぎり、月に向かって夜空を登る。月光に浮かぶその黒い影は、一枚の名画のようだった。その日、空を泳ぐ鯉のぼりの姿を多くの人が目撃したという。 #twnovel

Misty @rinacrux

お月さんの明かりを浴びてお座敷に上がります。「月が綺麗だね」と言ってくれたあのお方はちっとも来ちゃくれませんが。着物の糸を噛みきって結んだ小指の契りは永に。今宵も別のお方に手を引かれ底無しの夜へ沈みます。きれいなきれいなお月さんだけが冷たいお顔で見てるんです。#twnovel

とおる7th @windcreator

「しょうがないからチュウしてあげる、略して焼酎」「今まさに焼酎のメニューを見ていた私の前でそれを言うかな、普通」「ご注文をどうぞ」「なんかズルい」「お代はお安くしておきますよ」「お幾らかしら？」「ざっと人生80年分くらいで」「しょうがないから、結婚してあげる」 #twnovel

サハラ @tobiironi

私は王女であり、作家でもある。そして私には偽物がいる。王女が義賊というありがちな、けれどいつの時代でも需要のある話を書いていたら、現実にその義賊が現れてなんと私の名前を騙りだした。そうして何がどうなってか、いつの間にやら私はその義賊の活躍の語り部となっていた。 #twnovel

銭喰 @zeniqui

#twnovel 「にがむしぃ～、にがむしはいらんかえ～」「おっちゃん、頂戴」「あいよ、何にする？」「騒動は時間が解決してくれたけど、時間は自分の心の中まで解決してくれなかったから笑顔を取り戻したみんなが『あれは気の迷いだったね』『バカが騒いでただけさ』というのを見つめる時用で」

竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 引っ越しのトラックが着いて、新しい子供達がやってきた。さあ、一緒に背比べしよう。柱の傷に思い出を刻もう。写真は嫌い。僕だけぶれてしまうから。背比べしよう。君の傷が僕には手が届かなくなる日まで。僕のことが見えなくなる日まで。＃座敷わらしと柱の傷

葦沢かもめ @AshizawaKamome

ケルト音楽をかけると、お湯をかける時になって電気ケトルの開ける所がロックされていなくても気付けるとのことです。スケルトンの製品では、自動で透けるという仕様になっているので、ケルト音楽をかけるという手間を省けるということになります。湿気ると溶ける時もあります。 #twnovel

layback @laybacks

月を見に行くか。珍しく夫が散歩に誘ってくれる。昔みたいに手をつないで近所の公園に向かう。小高い丘に登ると、左手に双眼鏡、右手にカウンターを持って、一羽、二羽と、呟いている人がいた。私は夫の耳元で囁く。「こんな夜なのに野鳥なんて見えるのかしら」「きっと月の兎だよ」 #twnovel