ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/05/08

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とは140文字以内で書かれた短いお話です。
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clum @clum_memo

好きなところを数えて恋をしたわけじゃないから、嫌いなところを数えてもこの恋を終わらせることなんてできない。終わりそうで終わらない。終わらせたくても終われない。君が君である限り。僕が僕である限り。いっそ、消えてしまえば終われるのに。xxxxx が消えてしまえば。 #twnovel

2012-05-08 00:55:11
@saeba7

#twnovel 涙が手に付くと染みのように取れなくなった。それは世界中に伝播し、よく泣く人々は涙対策に手袋を着けるようになった。彼はそんな人々の手袋をよく眺めている。聞けばある事を境に泣けなくなったのだとか。手袋を見つめる彼の胸の内にどんな感情が去来してるのか僕には知る由もない

2012-05-08 01:36:36
浅葉積木 @tsumiki_a

#twnovel お互いこの歳で相手を残して死ぬのは忍びないから一緒に逝こうと約束した。その日の内に、おじいさんたら幽霊になって現れた。「相変わらずそそっかしいわねえ」「おまえと別れたくなかったんだ」「別れない相談をしてたんでしょう。ほんとにそそっかしい。あなたまだ生きてるわよ」

2012-05-08 07:04:46
七歩 @naholograph

俺はこの国の王。やめろ。俺にはこの国を守る義務がある。それなのにお前は。解せぬ。何故王たる俺に逆らうのだ。逃げる俺を抱き、揺らし、寝かしつける。許せぬ。いいか、孫子の代まで許しはせぬぞ。こてっ。#twnovel 「やっと寝た。赤ちゃんって愚かよね。眠いなら寝ればいいのに」ばぶー。

2012-05-08 07:56:36
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 残業中にプリンタのインク切れ。替えを探していると「お疲れ様です」立っていたのは女子の間で可愛いと評判の後輩。「カートリッジですか。僕持ってますけど」彼は私との距離を詰める。「ただであげたくありませんね」上下する喉仏に彼も男だと知る。窓には満月。彼の口元に尖る牙。

2012-05-08 13:34:02
黄金の米菓子 @OK_1111

#twnovel キットカットを割ると白い煙と共に一人の男が現れた。その甘いマスクには見覚えがあった。21世紀を代表する名脇役、ドロン・ドロンだ。なぜ彼がここに。するとドロン・ドロンは独特の甘いボイスでこう言った。「ブレイクはさせない」「生意気なこと言わないでよ。死体役のくせに」

2012-05-08 13:45:21
mt @mt_er_222

部屋が散らかるのは心の乱れ。脱ぎ散らかした服、使い捨てのコンドーム、飲み干したペットボトル、読みふけった本、食い散らしたお菓子の袋。まるで寂しさを埋めてくれるよう。片付けないのはこの部屋を見れば、彼を思い出すから。私と彼は、恋人じゃないことを思い出すから。 #twnovel

2012-05-08 15:54:02
layback @laybacks

じめじめと湿った井戸の底。丸く切り取られた空。それが蛙の知る世界の全てだった。ある日降り出した猛烈な雨で井戸の水位が上がる。蛙の頭上に突如として大空が広がる。虹が見えた。蝶が舞っていた。蛙は水に浮かび、ぼんやりとそれを眺めていた。飽きることなくずっと眺めていた。 #twnovel

2012-05-08 18:45:00
雪月 @setugetufuka

僕を育てたロボットは話せなかった。たぶん育児用のものではなかったんだと思う。ロボットは…彼は、ピアノの音で僕を呼んだ。僕の名前は軽やかで楽しげな曲。彼はいつも穏やかな旋律で僕に語りかけた。 #twnovel ある日、大人が来て僕たちは引き離された。僕は話す事が苦手な大人になった。

2012-05-08 19:25:21
@mimimdr

毎晩自分にぶつかってくる蛾が本当は月に向かいたいのだと知って、街灯は夜道を駆け出した。追っても追っても遠ざかる本物の月のように振舞ってあげたかったのだ。だがすぐに電球が切れてしまった。突然の暗がりに蛾は暫く慌てていたが、やがて僅かに残った電球の温もりに身を寄せた。#twnovel

2012-05-08 20:12:02
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 「あなた、汚れてる」帰宅した僕の背中を妻がはたく。ぱんぱん、と玄関に響く音。とれないわ。力がこもり、だんだん強くなる。おいおい痛いよ、と苦笑しかけてはっとした。「ありがとう。きれいになったよ」泣きながら叩く妻を僕は抱きしめた。浮気なんて、もう二度としないから。

2012-05-08 21:42:57
しぃとろん @seatoron

蔵の奥に隠されるようにあった古書。誰かのへそくりでも入っていたりして…そっと開くと、ほこりが宙を舞った。「何か期待しているだろう?」初めのページ。「誰でも同じ事を考えるものさ」。以下白紙。僕は古書を再び奥に片づけた。我が家は代々、似たような事を考えているんだな… #twnovel

2012-05-08 21:48:28
おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 深夜、この辺りの商店がシャッターを下ろす理由を知る者は少ない。人が眠る間、自我に目覚めた商品が街へ逃亡しないように閉じ込めているのだ。万が一逃げ出した場合は神にでも祈るしかない。朝になってもシャッターを閉ざしたままの店があれば、それは店主が喰われてしまったのだ。

2012-05-08 22:29:48
ちゃーち @churchdevil

ロウソク少女を補充した。料理のとき、風呂を沸かすとき、暗闇で物を探すとき。前世紀に失われた電力の変わりに、今では一家に一人ロウソク少女が必要だ。「……」無表情に手のひらから火を起こす白髪の少女。魔法術式が組み込まれた体は同時に小さくなっていき、やがては消滅する。 #twnovel

2012-05-08 22:56:14
竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 朝は子供達をあやし、お母さん達の愚痴を聞いてやり、昼はリストラされたお父さんを慰め、夜は不良達をなだめる。俺って、いったい何?ま、名もない公園のジャングルジムなんだけどね。あんた、本物のジャングル行ったことある?俺、似てるかな?1度行ってみたいな~。

2012-05-08 22:44:11
らし @rashi_catwillow

#twnovel 「魂の半分を探しに来たんだ」と白熊は呟いた。「失った後で気がついた。それがどんなに大切だったか」北極の午後。出会ったばかりの白熊は泣いていた。「世界中探したけれどいないんだ。黒い姿の僕の片割れ…」僕は尋ねた。中国の生まれですか? 白熊は答えずただ鼻をかんでいる。

2012-05-08 23:53:50