【夜をつくる】福間健二 k2factory01

福間健二 @acasaazul

ミヤザワケンジを英語で読みながら、やまない雨と風に閉じ込められていた。終わった物語のなかに。それでも、涙腺がゆるみ、焼いた新キャベツがおいしかったりする。春ってつじつまのあわない季節だったね。枕元の目覚まし時計が時限爆弾のように音を刻む。（夜をつくる１） #k2factory01

福間健二 @acasaazul

「いのちが今日までだとしても、困らないように今日を生きる」。先生は言った。大地の裂ける夢に襲われた夜明けの唇がかわかない、それは隠さずに、曇り空の下、何を棄てたのか。季節はずれの、ビキニスタイルの娘たちを追い抜き、ふりかえらなかった。（夜をつくる２） #k2factory01

福間健二 @acasaazul

忘れない。でも、壊れたままにしている。たとえば、新しい町で暮らしだした四月の「青い照明」。避けられない路上の出来事の先の、そのときには気づかない、点滅のなかの入れかわり。黙らないどのケンジからも距離をおいて。交流、一方向じゃないってこと。（夜をつくる3） #k2factory01

福間健二 @acasaazul

生きのびて、この罠。甘い罠。見えない内側のデザインにたどりつけない直線の動きは卒業した。いまは酔って、正しさにも柔らかさにも見放される。雨と風にどう負けても。ニーソックスとストッキング、無邪気な妹と悪魔の姉のどちらに翻弄されたとしても。（夜をつくる４） #k2factory01

福間健二 @acasaazul

どう再会するのか。はなればなれになって「悪い人間にだまされている」とたがいに想像しあった仲間たち。雨の日の、冷えた足で、それぞれの、苦痛にみちた昼からおりていく夜の斜面をこなごなにする細部の用意。これはできて、電話は苦手の、まだひとり。（夜をつくる５） #k2factory01

福間健二 @acasaazul

かれらがいて、ブルースがよみがえって、二十一世紀もたいした違いはない。入口をまちがえた冒険の結末。病んだ子供とあくびをする母親のあいだに隠れる。ジャンキーになる。十一月三日のメモを読みなおす。「王子様、こんなことで終わりにしていいの？」（夜をつくる６） #k2factory01

福間健二 @acasaazul

ちがう斜面の夜をつくる。素材、うなだれた頭のアップと瞼のなかの森で。半分はできた。いつもここまではできて、長靴にキスしてくれるプリンセスは到着しない。じゃあ、何を切る。「きょうも、おまえの森、勇気が足りない」とは言われたくないそのナイフ。（夜をつくる７） #k2factory01

福間健二 @acasaazul

まだあったんだね。古い道具の、この相棒。錆びて、くやしそうに入ってきた。渇いた冬の町から、でなければ年代物の壜が全滅したあの地下室から、この現在に。断面、危機、涙。「闇の中から出てくる犬が怖いんだ」とか「きみは外を見ろ」とか言うために。（夜をつくる８） #k2factory01

福間健二 @acasaazul

そういう滑り方をして、感じていることをあらわせない複製へのオペレーション。ナンバーと種別、不明。でも、うまく行く。季節の外に予感をつくれば。近未来の、この森に、小さなコミューンだ。「きのうまではそれに気づかなかった。いまはわかる」ってさ。（夜をつくる９） #k2factory01

福間健二 @acasaazul

どこかのケンジに生き方を学べるなんて思っちゃいけない。そうだった。ひとつの出口。唯一の出口ではない。ぼくは、昼は森に忘れものしたふりして姿をくらまし、夜は飲みに行く。月と金星をみちづれに、徐々に数が増えてくる赤い光の粒の、あの町まで。（夜をつくる10） #k2factory01