【よくはわからないが】 福間健二 2factory26
悪天候の、なつかしい都市。ちょっと気取ったポーズを許してしまえば、再会も、新しい出会いも、塩と胡椒、ほとんどそれだけの味で十分に劇的だ。カメラになった目を素材が誘い込む。途中までだが、新しい道ができている。卓球をした。十年ぶりかな。(よくはわからないが1)#2factory26
2013-02-20 10:35:03この手紙、どうも、いまごろになって、申し訳ないです。体と一緒に心もほぐれ、そんなふうに書きだした手紙を書きつづける午後。ここに飛び、彼や彼女の表情が凍りついたままのあそこに行かない。だめなのだろうが、大きな前提として、蕾をいとおしむ。(よくはわからないが2)#2factory26
2013-02-21 08:07:27必死に生きること。人にやさしくすること。明日に希望をもつこと。大事なのは、それだ。と、だれが言っているのだろう。神戸、長田界隈、カメラの目を閉じて、気配とたたかう。いつもどこかの物陰からぼくを見ている悪魔の、実は声を奪われた道化師の。(よくはわからないが3)#2factory26
2013-02-22 08:02:39前後に傾き、閉ざされた鎧戸。必要以上にある煤けた休憩所。ありがたいが、回収できない壜たち。生きのびた太宰や中也、破滅しない天才になんの用があるだろう。ぼくはひと眠りする。血とはらわたを隠した箱のなかの革命が終わったら、起こしてね。(よくはわからないが4)#2factory26
2013-02-23 08:14:23それを見る。でも、それを世界に存在させていない。蕾、指、そして唇。だれの、何の排泄に怯えるのか。説明するの、億劫がりながら、窓にむかってやっているのは説明しているだけだ。これ、触っていい? 最後までめんどうみる気があるならいいけど。(よくはわからないが5)#2factory26
2013-02-24 08:07:14きのう、ここはさびしかった。きょうも、さびしい。でも、南から風が吹いている。ぼくたちは踊った。それぞれの、はじまらない作品を、溶岩の流れに押しつぶされ、三人。ほかにだれも見ていない夢のかたすみの、アジアの横丁。もうイカ炒めていーか?(よくはわからないが6)#2factory26
2013-02-25 06:36:10屋台から屋台へ、ぬくもりを求め、三人、それぞれの歪みを唐草模様の下にかくして、絵を描く。つまり、残った情熱の滴で雲をつくる。こんなときに辞書なんかひくな。「いい気になっている指導者」をボロボロにできるのは、どんな手、何と結ばれる手か。(よくはわからないが7)#2factory26
2013-02-26 06:48:31レイ、王様じゃない。荒地に雨を呼ぶための生贄になる牛じゃない。ひとりの娘の名前だ。レイちゃん、ぼくの『ピンク・ヌーヴェルヴァーグ』をアマゾンの中古品で買って読んでいる。その気を引くために破滅を通りこして「なんでもする」動物、この指に。(よくはわからないが8)#2factory26
2013-02-27 07:41:14目がさめてしまった。満月の夜。みんな、いる。何に操られているのか、賎しい王様から美しいロボットまで。でも、構成力をとくに必要としない嘘泣きの、涙のアジアだ。輝く青のなかをひとりで歩く。よくはわからないが、この先、安全地帯は消えている。(よくはわからないが9)#2factory26
2013-02-28 07:18:31赤磐市の緑屋でみどりラーメン食べた。西日本のネギ。でも、ぼくの任務、何だったろう。秘密にしているうちに思い出せなくなった。何年も前の、はじまらなかった春が、いくつも迷子になっている。蕾たちの闘争に驚くふりだけの。みんな、食べすぎだ。(よくはわからないが10)#2factory26
2013-03-01 08:23:05