サツバツ・ナイト・バイ・ナイト #5
(あらすじ:ヤモト・コキやザクロが守るニチョーム・ストリートに、アマクダリの魔の手が迫る。別離したヤモトの親友アサリもまた、偶然このストリートに足を運んでいた。だが皮肉にも、ニンジャスレイヤーはスゴイタカイ・ビル屋上にて動かず。ニチョームとの関連性を知られる事を避けるために……)
2012-05-12 21:57:17非常ボンボリが回転。その色は赤。レッドアラート。最悪の事態だ。緊張の糸が張り詰める。通信機が混線し、慌しいノイズ。ニチョーム自治会の全員が席を立ち、自警団からのIRC通信を待つ。その一瞬を惜しむように、ヤモト、ザクロ、そして彼女らを非難した自警団員ノタゴは、オチョコを掲げた。 1
2012-05-12 22:02:21「「「ユウジョウ」」」三者は素早く視線を交錯させ、オチョコに注がれた少量のサケを飲み干す。直後、錆び付いたスピーカーから、ゼン・トランス前警備隊長テガタの声がノイズ交じりで響いた。「畜生め、正面からクローンヤクザ……!数ダースだ!何が起こるんだ!?戦争でも始まるってのか!?」 2
2012-05-12 22:12:19ストリートからはバクチクめいた銃声。役員たちは、ストリップステージの壁に掛けられたショットガンやカタナを手に取る。ザクロのレザージャケットが展開し、わずか3秒で黒光りするレザーニンジャ装束へと変わった。ヤモトの口元を隠すように、桜色のマフラーめいた淡い布メンポが出現する。 3
2012-05-12 22:19:48二人はさも当然のごとく、ストリートに面した窓へと疾走した。ハードル競技めいて鮮やかに蹴破る。冷たいネオサイタマの夜風と、七色のネオン光を全身に浴びる。ソクシ級の高さ。だがそれは常人の話。彼女らはニンジャだ。「烏賊」「合法」と書かれたカンバンを蹴り渡り、イクサの場へと躍り出る! 4
2012-05-12 22:28:20一方、絵馴染のバーカウンターに突っ伏し、アサリは酷い頭痛を覚えていた。カクテルが利きすぎたのだろうか。「気分が悪いなら、トイレまで運ぶよ」先輩男子がアサリの肩に過剰に触れながら囁く。欺瞞!実は彼がアサリのグラスに合法薬物を混入させたのだ。代理のゲイマイコが不安そうに見守る。 5
2012-05-12 22:40:11その時!絵馴染の店内に灯るムーディーな間接照明が火花をバチバチと散らしながら消え、非常ボンボリが赤く回転!「アーレエエエ!」「タスケテー!」オイラン装束を着た非力なゲイマイコらが、ストリートから指定避難場所の絵馴染へと駆け込んでくる!無軌道大学生らは物物しい雰囲気に圧される! 6
2012-05-12 22:43:17「ヤクザ!ヤクザがスゴイの!」「ものすごい数のヤクザ!」「ザクロ=サンとヤモト=サンは!?」ゲイマイコが次々雪崩れ込んで来る。「ワーコワーイ!」バリキで理性が飛んだ無軌道女子大生は、無邪気に男子の逞しい胸にすがりついた。「ヤモト…サン?」アサリは混濁した頭でオウム返しに呟く。 7
2012-05-12 22:49:54ストリートでは既に、激しい戦闘が展開されていた。「ダッテメッコラー!」テガタに率いられたエクス・ヤクザ自警団の6名は、一般客やストリートの住人を奥へ奥へと避難させながら、クローンヤクザの波状攻撃に対抗する。しかし、誰が見てもこの戦況は明らかにジリー・プアー(徐々に不利)だ。 8
2012-05-12 23:01:38テガタは正面のアサルトヤクザを殴り飛ばしてから、左耳に装着したIRC通信機のノイズ除去スイッチを押す。「突破される!あと頼む!」「スッゾコラー!」ドスダガーを構えたアサルトヤクザが、側面死角から迫る!コワイ!そこへ、ビル屋上から銃声!タギザワの狙撃だ!クローンヤクザは即死! 9
2012-05-12 23:10:41「いつもすまねえな…」テガタは一瞬だけ屋上に目配せしてから、周囲の自警団に檄を飛ばす。「ダッテンジャネッゾコラー!シャッコラー!」「「「シャッコラー!」」」復唱される恐るべきヤクザスラング!だが何と悲愴で頼もしいことか!皆満身創痍だ。テガタ自身も脇腹に浅い刀傷を受けている。 10
2012-05-12 23:16:31ニチョーム自警団は横一列に並んで壁を作った。だが、おお……ナムアミダブツ!彼らが倒した12人は、敵の攻勢第一波に過ぎない。20メートル先の道路に緊急展開された車止め鋼鉄トリイの周囲には武装ベンツが並び、古代ローマ密集陣形めいた重い足取りで迫る数十人のアサルトヤクザ軍団の姿! 11
2012-05-12 23:24:14「「「スッゾコラー!」」」自警団は再装填したチャカ・ガンで一斉射撃を加えた。だが、敵の最前列が構えるケンドー機動隊仕様の暴徒鎮圧盾によって、銃弾は雨粒の如く弾き返される。アサルトヤクザ軍団の黒い革靴が、一糸乱れぬ軍靴のごとく、「治安を守りたい」と書かれたビラを踏みしだいた。 12
2012-05-12 23:32:47もはやこれまでか?自警団はドスダガーを構え直し、衝突に備える。……その時!「武田信玄」のネオンカンバンを蹴ったヤモトとネザークイーンが飛来し、アサルトヤクザ軍団の真っ只中へと飛び込んだのだ!「ザッケンナコラーッ!」ザクロの怒号!直後、数名のクローンヤクザが弾き飛ばされる! 13
2012-05-12 23:46:36「イヤーッ!」ヤモトも愛刀ウバステを抜き放ち、桜色のつむじ風めいてイアイを閃かせる!「「「アバババーッ!」」」周囲のアサルトヤクザは、防刃スーツに守られていない喉元を切り裂かれ、緑色の血をスプリンクラーめいて撒き散らしながら即死!「やってくれたぜ!」テガタと自警団員が唸る。 14
2012-05-12 23:54:01周囲のビルでは、ニチョーム住人達が息を呑んでストリートの戦闘を見守っていた。これで流れを変わるか?……誰もがそう思った矢先!車止め鋼鉄トリイに折り重なるように突っ込んでいた武装ベンツの山をジャンプ台代わりに使い、サイドカー付ハーレーがヤクザ軍団の頭上を飛び越えたのだ! 15
2012-05-12 23:57:36「アイエエエエエ!」不運な自警団員をネギトロに変えながら、武装ハーレーは重々しく着地する!そして摩擦熱でアスファルトに炎の円弧を擦りつけながら、滑るように後方へ回転した。 16
2012-05-13 00:05:51「イヤーッ!」サイドカーから飛び降り、回転着地を決めるバイセクター。「のけい!」それと同時にディスエイブラーの大音声が響き渡る!ヤクザ軍団は直ちに戦闘を停止し、整然と前倣えをして列を作り直すと、ストリートの両脇に向かって走った。ヤモトとザクロを武装ハーレーのライトが照らす! 17
2012-05-13 00:09:49一瞬の沈黙。サツバツとした風が吹き、ズタズタになった街宣ビラが宙に舞う。「ドーモ、ディスエイブラーです」「ドーモ、バイセクターです」アマクダリ・ニンジャ勢が先にアイサツを決めた。「ドーモ、ネザークイーンです」「ドーモ、ヤモト・コキです」ニチョーム勢が続いた。 18
2012-05-13 00:13:07「……不可侵条約を忘れたのか?」ネザークイーンが低い声で唸る。ザクロ自身も、その言葉にほとんど意味が無いことを悟りながらも。「アマクダリ・セクトは裏切りを許さん」ディスエイブラーはハーレーから降りると、近くで仰向けに倒れている虫の息の自警団員を踏みつけながら言った。 19
2012-05-13 00:19:42めきめきと骨の軋む音。「アバッ!」大岩のような足に両膝を破壊される自警団員。その呻き声を聞き、イタミニンジャ・クランのソウル憑依者ディスエイブラーは愉快そうに口元を歪ませた。「止めろッ!」ヤモトがウバステを構えて叫んだ。「……慌てるな小娘」バイセクターが機械音声で威嚇する。 20
2012-05-13 00:26:13ザクロは怒りに満ちた目で、かつ冷静に敵の出方を窺っていた。交渉の余地があるのか否かを見極めるために。「こちらのアイサツがまだだ」バイセクターは顎をしゃくって、相方に指図する。嗜虐行為への期待に我を忘れかけていた巨漢ニンジャは、思い出したように背中のカンオケのスイッチを押す。 21
2012-05-13 00:31:12(((何だ……?)))ヤモトは、ぞくりと、背中に悪寒が走るのを感じた。肌が粟立つ。ウバステの柄を強く握り締め直した。ネザークイーンも、鼻をすんすんと鳴らし、露骨に顔を歪ませる。「……ハカバの臭いかよ」。直後、ディスエイブラーに背負われていたカンオケが、勢い良く開け放たれた! 22
2012-05-13 00:36:49「……キョムー……」姿を現したのは、ユーレイじみた灰色のニンジャローブを纏う、見るからに不吉なアンデッド・ニンジャ!顔はフードに隠れ、足は無く、ネガティブ・カラテの力により空中30センチ付近を浮遊している!ストリートに戦慄が走り、常人たちは小さく震えて全員一斉同時失禁した! 23
2012-05-13 00:44:25