ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/05/13(母の日)

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とは140文字以内で書かれた短いお話です。
1
にゃおっく @_nyaok

#twnovel 夜は死の世界だという。何故なら、夜空の星と呼ばれるものは古の魔術師が灯した過去の世界の生き物の魂だからだ。星は夜にしか見えず、時と共に彷徨い、人の知らぬ間に姿を消す。移ろいながら、古の魔術師の強大な魂が今は月となり、その矮小な魂共を睥睨している。それが夜である。

2012-05-13 01:03:26
紺屋 @ysga1002

わたしは機械仕掛けのお人形。らしいけれど、本当のところはわからない。「わたしが本当に機械仕掛けなら、筋肉痛なんて縁がないんじゃないの?」張った太腿をさすりながら言うと、父は「それはそうさ、お前は最高傑作だからな」。さて、夢をみているのはわたし?それとも頑固な父? #twnovel

2012-05-13 01:52:24
あまね @gyakumei

美しい娘への至上の贈り物として、色とりどり何千もの目玉を並べてみせる。「この目玉の視界をわたしにくれるの?」「そうだよ。ご覧」「これだけ目玉があれば、さぞ沢山のものが見れるでしょう」色とりどり何千もの目玉が娘を覗きこみ、見え方の微妙に違う何千通りもの娘を見せる。 #twnovel

2012-05-13 03:22:35
@_clementia_

先生は、すぐダメと言う。必殺技は宿題で、秘奥義は親を召喚すること。でも、僕だって負けちゃいない。まず先生をパニックに。次はトンズラ。それでも回り込まれたら、僕もアレを召喚する。それはPTA。でも、子供一人の召喚には、なかなか応えてくれないんだ。レベル上げないと! #twnovel

2012-05-13 04:41:22
七歩 @naholograph

「母の日おめでとう」子供にとってお祝い事はみんなおめでとう。ありがとうって言えたとしても「母の日ありがとう」くらいで、お母さんありがとうはなかなか出ない。「でもパパが言ってたもんおめでとうって」パパが?「今年もりこんなく母の日を迎えられてよかっためでたいって。」#twnovel

2012-05-13 07:22:13
N.T.Works/凪司工房@介護生活中 @nagi_tter

#twnovel 今日子さんは家にいない。別に僕たちは喧嘩した訳でも別れた訳でも無い。事情は何となく分かるけど、彼女は決してそれを話さないだろうし、僕も訊く気は無かった。僕は「母」とメモリィした電話番号に電話する。「あ、母さん?」「あんたは今日子の。今日子、あんたの彼から」あれ?

2012-05-13 16:21:31
すわぞ @suwazo

#twnovel 45億年ぶりに宇宙を超えてやってきた木星と同じくらいの大きさの女の子が地球を眺めおろして「すこしいろがかわったね」と呟いて足りない養分を霧吹きで吹きかけ地球の傾きを僅かにずらして陽当たりを変えピンセットで害虫を摘んで捨てる。女の子の鼻歌を、地球上の誰もが聞いた。

2012-05-13 17:28:49
竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 子供の頃、よく日傘の女性についていった。亡き母が戻ってきたと思って。振り返った女は「入ってく?」と微笑んだ。今の義母だ。父の計略だった。でも、あの時、確かに見た。義母ではなく母の微笑を。確かに聞いた。「この人についていってもいいのよ」という母の声を。

2012-05-13 20:10:54
layback @laybacks

「お母さんに会いたいな」花摘みの少女は母親の顔も知りません。見かねた神様が言いました。「少女よ。次の母親を特別に選ばせてやろう」「ではパチンコ好きのお母さんを」「よかろう。だがなぜだ」「私のお母さんはパチンコが大好きだったって。ここに来た時に天使から聞きました」 #twnovel

2012-05-13 20:16:33
雪月 @setugetufuka

魔法使いから青い鳥をもらった。これで私も幸せになれる。さらに魔法使いは「この鳥は1日に1個卵を産むから、皆に分けてあげて」と言った。幸せのお裾分けって素敵だと思ったけど、鳥の世話が意外と面倒。しかも噂を聞きつけ、知らない人が何人も押しかけてくる。これが私の幸せ? #twnovel

2012-05-13 20:34:22
日向日影🍊📖@文化系物書きVtuber(HUB) @hyuugahikage

#twnovel 斧を握る指にヌルっとした感触が広がる。リビングには姉と父、母だったモノが転がっている。「あーすっきりした」僕は斧をふり快感を思い出しつつリモコンを取り出す。巻き戻しを押すと血液は家族の体に戻り、斧は物置に戻り、時間は逆回し。何も覚えていない家族との穏やかな朝。

2012-05-13 20:45:28
夢名 七志 @mumei7c

こここん。短く三度の音。三点投げは得物を逃がさぬ投擲法だ。だが、全て木の扉に当たるとは。台所に姿は無い。「ふ、我が領域で仕留めようなど、思い上がりだな」姿無き声がすると、食器棚が裏返り母上が現れた。どんでん返しとは不覚。手には刺さっていた筈のカーネーション三輪。 #twnovel

2012-05-13 20:52:18
二月大笑 @unpeu_G

街路樹の下の土の中から若い男が這い出してきた。「やっと会えたな唯一の直系。すっかり都会っ子になっちゃって。出る所すごく探したぞ。流石にコンクリは突き破れん。」突っ込み所は色々あるが…「どうして裸なんですか。」「ゾンビ化したのは体だけだ。服なぞとうに朽ち果てたわ」 #twnovel

2012-05-13 20:56:46
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 毛糸の手袋はスポンジがわり。肌着は靴磨き。傷みが少ない服はリサイクル。娘の古いものをみな処分した。ママ友だちは言葉を失ったけど、思い出ばかりでも仕方ないと気づいたの。「弟か妹が出来たみたい」母の日の今日、きっとあなたの贈りもの。検査薬を手に、幼い遺影へ微笑んだ。

2012-05-13 21:04:45
@mimimdr

海の中には母があるのね、とある日娘が言い出した。どうしたんだ急に。漢字の話よ。それから暫くして、娘は海を見つめながら泣き出した。お父さん、私、お母さんに会いに行くね。僕は娘を止められなかった。既に娘の足は、かつての妻にそっくりの美しい尾に変化していた。#twnovel

2012-05-13 21:14:02
Tsu mado @xxassydow

#twnovel 子供がお菓子売り場で赤札のチョコをしこたま抱えて半泣きだ。「どっちがいいかな。どれがいいかな」首には二百円の入ったビニールのがまぐち。仮面ライダーが印刷されている。抱えたチョコの先を見ると『二個お買い上げでカーネーションプレゼント』のプレート。微笑ましい夜の話。

2012-05-13 21:59:56
夕凪奏恵 @k_you_nagi

#twnovel カウンター席の端に座った時は要注意。口にする言葉も少なく、表情も乏しい。そんな彼女の様子を視界の隅に捉え、確信する。これで何度目だろう。いつもの微笑を最後に見せて、彼女は店を後にする。カクテル・グラスに残された指輪はそっとゴミ箱へ。次の「誰か」が僕ならいいのに。

2012-05-13 22:02:33
竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 3年前、父が帰ってきた日に母は出ていった。以来、父と2人暮らし。「お父さん、母の日ありがとう」父にカーネーションを渡そうとした時、母が帰ってきた。「あなたにカーネーションを渡したくないから戻ってきたわ」今度は父が出ていくのかと思ったら違った。翌年、妹が生まれた。

2012-05-13 22:04:58
らし @rashi_catwillow

#twnovel 「兄さんは事故で死んだといわれていますが、本当は違います」空中ブランコの少年は、くるくる宙を舞いながら客席には届かない声で囁いた。「あんまり見事に飛んだので、天使が仲間と間違えて空へ連れていったのです」響く喝采。テントの外では棒を持った団長が空を睨みつけている。

2012-05-13 22:12:00
五郎 @makimura_goro

#twnovel 機械の父は今日も錆びついたネジを食べている。僕には機械の考えている事が分からない。言葉のない父に言う「さようなら」。鉄塔に登り僕は頂点に上った太陽の作った影に飛び込んだ。影に触れる瞬間、鉄塔から生えた父の顔が僕を凝視し、捩じれた腕で僕の身体を天へと投げ捨てた。

2012-05-13 22:22:33
ろばたにスエノ🦀 @robatani

母親が娘の役をやり、娘が母親役をやる。この演目の規則である。「娘役の母」に「母役の娘」が傲然と詰め寄る。女王の衣を纏った少女の喉から響く嫉妬の歌は演技か真意か分からぬ激しさ。拍手の中微笑む少女。時が過ぎて少女は「娘役の母」となり「母役の娘」に同じ歌声で責められる。#twnovel

2012-05-13 22:26:28
あかね @akane2003

いつもお仏花を買って下さるお坊様が透明な自動ドアの向こうに見えた。徹夜明けで朦朧と仕事をしつつ様子を伺っていると、ゆっくり入ってこられた。「いらっしゃいませ」今日もお仏花かな?そう思っていたら、今日はなんだかケースの中のきれいな色の花を見ている。 #twnovel

2012-05-13 22:37:07
おぼろちゃん @oboroose

#twnovel いちご狩りも飽きたので、母を連れて言葉狩りに行った。親孝行である。薄暗い農園にはよく肥えたライターや作家やただの人がご機嫌な様子で言葉を実らせている。料金以上に狩るぞ、と意気込んだのも束の間、強烈な視線を感じた。振り向くと、農園に覆い被さる巨大なオシドリがいた。

2012-05-13 23:38:01
エイジ @ei_hito

雑居ビルでエレベーター停止の事故があった。外部とは通信が遮断されている。いかにして中の人は脱出するのか? 閉じ込められたのはニューハーフパブ勤務、カナエ(45歳男性)。同、ユウカ(48歳男性)。同、京香(56歳男性)。一週間後、三人は餓死した姿で発見された。 #twnovel

2012-05-13 23:38:33
橘 颯 @so__w

両の掌程に作られた朱塗の宮に、白石を磨きて玉とした物を詰める。其の数、百と八つ。夜毎、臥所にて掻き抱く事十日の後に何れかの玉より蝶が生じて羽ばたく。なれど稀に蝶の生じぬ者が居る。其の者はカノメと称ばれて宮へ上がり、訪いし神々に身を拉ぐと云う。決して実らぬ身故に。 #twnovel

2012-05-13 23:54:44