ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/05/21 (金環日食の日)

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とは140文字以内で書かれた短いお話です。
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unkofree @unkofree

ぼくはかいじゅうたちのまちでぺっととしてかわれている。みんなのまねをしてくちから火をだそうとしても、なにもでなくてげらげらわらわれてしまう。みんなができることがぼくにはできない。わらうかいじゅうたちがこわい。にんげんにあいたい。にんげんにあいたい #twnovel

2012-05-21 00:03:10
咲良 潤 #言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

「どう?おいしい?」幼馴染のお姉さんが作ったマドレーヌ。僕はその試食をお願いされた。片想いの人にあげるらしい。男性の味の好みが分からないからと言って僕が呼ばれたのだ。僕はよく味わって、味わって味わって、彼女に向かってこう言った。「はい。大好きです」 #twnovel

2012-05-21 00:03:36
雨音 @candypeal

優しい指で彼が背中を撫ぜる。その度、私は身をよじって逃げる。背中は毛深いから嫌だってば。何度言っても、彼はそれがいいんだと笑う。そんな年月を過ごし、私達は今日夫婦になる。美しいドレスを着た私の、綺麗に剃ったうなじや背中。彼は変わらぬ指で愛してくれるだろうか。 #twnovel

2012-05-21 00:05:55
しーな@GO2完走 @xsheeenax

「明日の金環を指輪に」というカップルたちに不思議な魔女は微笑ましいねぇと目を細める。きっといくつもの環が彼ら彼女らの指に輝くのだろう。本物は空に浮かぶたった一つだけでも。雲を抜けて箒から身を起こし、晴れたらいいねと口ずさむ。こればかりは不思議な魔女にも判らない。 #twnovel

2012-05-21 00:37:58
layback @laybacks

窓の外には少年が立っていて、壁には海を描いた油彩が掛かっていた。素敵な絵ね。見とれていると、それは窓だよ、と少年がいう。額縁に見えたところは実は窓枠で、ガラスの向こうには本物の海が広がっていた。素敵な景色ね。返事はない。振り向くとそこには少年の絵が掛かっていた。 #twnovel

2012-05-21 02:45:20
すなお @Svnao

#twnovel キッチンでインスタントコーヒーを入れていると、「お父さん私にも」と高校生の娘に声を掛けられた。「お前コーヒー飲めたっけ」「苦手だけど飲めるようになりたいの」「試験勉強の為か」「ううん、一緒に飲みたくて」「パパと?」「彼氏と」コーヒーの粉を通常の倍量にして渡した。

2012-05-21 09:04:08
まあぷる @nemu_tatibana

#twnovel 金環日食の日に産まれたから、うちの猫の名前はキンカン。瞳の色は太陽のような金色。でも三年経った今は名前の由来も金柑から来たと思われてる。人は忘れるのも早いけど、毎日が平穏ならそれでいいの、とでも言いたげにキンカンは日当たりのいい窓辺で気持ちよさそうに背を伸ばす。

2012-05-21 10:19:02
Hiroyuki inoue @hiro_kinako

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼と一緒に金環日食を観察した。ねぇ知ってる?今回と同じ規模で次に見られるのは300年後なんだって。一生に一度の天体ショーだね。そう言うと彼は頷いた。「ああ、何度見てもいいものだ」

2012-05-21 11:04:02
夢名 七志 @mumei7c

「この辺りは降らなかったんだな」道路も濡れていないし、壊れた建物もない。地球単位だと世紀のショーでもないが、地域だと何百年振りの所もある。観測できた場所で偏りがあるのは何故だろう。光の輪で浮かび上がった多数のにわか天使たち。五分ほど昇天した距離からの墜落だった。 #twnovel

2012-05-21 12:35:49
すわぞ @suwazo

#twnovel 黒い水面から何百本もの手が伸び、柄杓で僕の舟に海水を落とし始めた。僕は手の群れの中に見覚えのある指輪を探す。赤い、彼女の誕生石の指輪。それを付けた手を見つけ、強引に指輪を引っこ抜き、代わりに別の指輪をはめてやる。結婚指輪。海で死んだ彼女に、僕は会いに来たのだ。

2012-05-21 19:47:35
夢名 七志 @mumei7c

結局言い当てられたサプライズを実行した。指輪を渡そうとしたら、抑揚なく「わあ、眩しくて見えないー」と言う。「あ、これがあった」と、日食観測グラスを掛ける。「あれぇ見えない。どこー」と、手に取らない。なんでこんな娘を好きになったのか。日食が毎年じゃ無くて良かった。 #twnovel

2012-05-21 20:19:14
だりむくれ @darimukuretyu

作り物の車が家にある。本物ではないので、もちろん乗ることは出来ない。ただの置物だ。しかし、周りの家の人はみんな本物だと思っている。見た目だけは高級車だ。感心され、今度乗せて、と何度も言われた。いいよ、と応えた。それで大過なく済んでいる。私は満足している。 #twnovel

2012-05-21 20:32:37
七歩 @naholograph

僕の人生にカンペ係が配属された。僕が困ると、カンペを出して助けてくれる。顔はわかるけど名前がうろ覚えの時とか、漢字が正確にわからなくなった時も便利だ。最近では好きになった女の子の性格や趣味を教えてくれた。だけど「この恋うまくいかない」ってカンペは見たくなかったな。#twnovel

2012-05-21 21:13:02
雪月 @setugetufuka

祖父は変な虫を飼っていた。人の感情を吸い取る虫だ。様々な感情で豆の様に膨らんだ虫が帰ってくる。一匹一匹摘まんで感情を吐き出させると灰色の雲ができた。今日は悲しい気持ちが多いから、雨に濡れると悲しくなるぞ。祖父が呟く。雲はどんどん空に昇っていく。遠くで雷が鳴った。 #twnovel

2012-05-21 21:16:43
竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 多くの人間は上空を見上げていて気づかなかった。足下で同じように空を見上げている小さな宇宙服の一団がいたことに。「儀式は終了した」「次の日蝕まで、また人工冬眠だ」目撃情報を元に作成された似顔絵は、遮光器土偶によく似ていた。

2012-05-21 21:35:45
(ゆないキズト) @Kyzt__

「日食?そんなモノは別に珍しくもないな」船長は僕に言った。「俺の宇宙船に乗れば、いくらでも見せてあげるよ」宇宙航行する船にとっては、日食など別に珍しいモノではない。技術の進歩により、望めば好きな時に日食を眺められるのだ。こうやって、どんどん情緒は失われていく…。 #twnovel

2012-05-21 21:47:30
添嶋譲 @literaryace

結婚するにあたって好きなものを全部処分することになった。そうしないとダメだと言われたからだ。そんなもんなのか。結婚ってそういうものだったのか。しかたなく好きだった小説、CD、雑誌、洋服、写真、思い出、手紙なんか全部庭で火をつけた。最後に君をくべておしまいにした。 #twnovel

2012-05-21 21:56:23
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel その魔鏡は日食の太陽の光で反射させた時だけ像が浮かぶ。欠ける部分が大きくなるにつれて像の形が不自然に変わる。月が完全に重なると異形の像から手が伸び私を掴もうとし、部分食に戻ると消えた。今日が金環食で良かった。皆既日食ならこれを書いている自分は居なかっただろう。

2012-05-21 22:37:28
キヨシロウ @kiyoshiro_aoi

#twnovel 「なあ、俺ら太陽見とるんか、それとも月見とるんか」「うーん、両方ちゃうか」「ふっ、アオいな。俺らが見とるんはつかの間の夢や」「なんかかっこええなあ」ガチャッ。「あんたらいつまでそんなとこおるん。はよガッコいき!」兄弟はランドセルを揺らして逃げるように走っていく。

2012-05-21 22:47:13
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 帰宅ラッシュのはずが電車はガラガラ。僕はひとり座って文庫本を読む。お気に入りの一冊だ。駅に着いて顔をあげると、窓に群がる無数のゾンビ。本を閉じて身構えた。ドアが開く。妻と娘をみつけた。自分で信じられない力が出た。他のゾンビを蹴散らして進む。せめて家族いっしょに。

2012-05-21 23:13:13
ショウ @SHO_Y

彼が緊張の面持ちで差し出したのは日食グラス。そういえば今日は金環日食。普段気の利かない彼にしては珍しい。でも、今は雲に隠れて真っ暗だ。「僕と結婚して下さい」その直後、暗闇だった私の世界に美しい光の輪が現れた。私の婚約指輪は、300年後の空にまた輝くらしい。 #twnovel

2012-05-21 23:30:47