修正→「(1)人と物を区別するのがおかしいという論理に立てば,多くの自治体が,原発周辺地域からの避難者を受け入れているのだから,原発周辺の高濃度に汚染されたがれきも全国で処理しろ,ということになります。」
2012-05-24 21:37:00(2)もし早川さんがそのように主張されるのならば首尾一貫していますが,おそらくそうではないでしょう。おそらく,早川さんも原発周辺からの避難者を受け入れることは否定しない一方で,福島第1原発周辺のがれきを持ち出して他の地方で処理することには否定的だと思います。
2012-05-24 21:09:49(3)このことからすれば,人と物とを分けて考えることそれ自体がおかしいのではありません。むしろ実際には,汚染の程度によってどこまでが許容範囲かが先行判断され,この先行判断によってどこまで受け入れるかが決定されているはずです。
2012-05-24 21:10:06(4)ただし,早川さんの言いたいこと自体は理解できます。おそらく早川さんの指摘の要点は,もし放射能汚染を理由として宮城と岩手のがれき受け入れを拒否すれば,今後長期間にわたり,宮城県と岩手県の人や物に対する禁忌が生じてしまう恐れがある点にあります。
2012-05-24 21:10:25(5)つまり,がれきに含まれる放射性物質の量は,がれきのある地域に降下した放射性物質の量をそのまま表しているので,放射能汚染を理由としてがれきを拒否する場合,論理的には,その地域の人と物の全てが,放射性物質に汚染されていることを理由として消極的評価を与えられることになります。
2012-05-24 21:11:03(6)早川さんは,岩手や宮城に対するこのような地域禁忌が,がれき受け入れ(によって生じると彼が考える)リスクと比較して望ましくないと評価しているのです。
2012-05-24 21:11:19(7)しかし,この評価を基礎づけるために早川さんが用いている言い回しには,かなり詭弁が含まれます。先に述べた人と物の区別だけではなく,がれきを東京で処理すれば東京はむしろきれいになるとの論法もそうです。その理由は次のとおりです。
2012-05-24 21:11:39(8)がれきをA県からB県へ大量に移送すれば,B県の放射性物質の総量は確実に増加します。この事実を捉えて,B県の汚物の濃度が下がるからきれいになると述べることは,むしろ印象操作に近いといえます。
2012-05-24 21:11:57(9)放射性物質に汚染された地域に,他の地域から濃度の低い放射性物質を大量に持ち込めば,たしかにB県の放射性物質全体の濃度は下がりますが,放射性物質の総量は増加します。これをもってきれいになったという人はほとんどいないでしょう。
2012-05-24 21:12:27(10)イメージが湧きにくければ,あまり良い喩えではありませんが,「放射性物質」を「糞尿」に置き換えると分かりやすいと思います。
2012-05-24 21:12:38(11)このことからすれば,放射性物質がある程度含まれているがれき(100Bq/kg程度?)を大量に(数百万t?)別の都道府県に移すことは,移送先の住民にとって一定の不利益になるという事実をまず明確にする必要があります。
2012-05-24 21:13:04(12)早川さんもこの不利益を認識しているので,がれき受け入れに反対する人に対して,「差別」とか「利己的」とかの言葉を用いざるを得ないのです。ある人が差別的かどうか,利己的かどうかは価値判断であり客観的に確定できる事実ではありません。
2012-05-24 21:13:56(13)なぜ彼がこのような詭弁を使うのか,私には不思議です(「嫁にやれない」と同様の炎上マーケティングと理解すべきなのでしょうか)。
2012-05-24 21:14:27(14)むしろ率直に,受け入れ先に一定の不利益になることを認めたうえ,(彼のリスク評価では)あまり根拠のない禁忌を回避するために受け入れるのが望ましい,と述べる方が理解を得やすいように思われます。
2012-05-24 21:14:34(15)次に,がれき受け入れに対する私見を述べておきます。私は早川さんの見解に賛成しません。理由は次のとおりです。
2012-05-24 21:14:58(16)まず,がれき受け入れのリスク評価については素人なのでよく分かりませんが,受け入れ可能性のあるがれきに含まれる放射性物質の総量のうち,どの程度が環境に放出され,焼却灰がどの程度の濃度になり,(続)
2012-05-24 21:16:06(17)(承前)どのように処理されるのかが明確にならなければ,そもそもがれき受け入れに伴うリスク評価はできないはずです。
2012-05-24 21:16:13(18)そして,そのようにして受け入れに伴うリスクが適切に評価されれば,次に,これをもとに民主的手続きを経て,根拠法令に基づいて受け入れが決定され実施されることが必要です。しかし,これらの要件を現状は全く充たしていません。
2012-05-24 21:16:59(19)すなわち,がれき広域処理の根拠法令が存在することを前提としたうえ,さらに「全体としてのがれきの受入量は○○t,含まれる放射性物質の総量はCs134と137の合計が100Bq/kgとして○○Bq,このうち空気中に放出されると予想される割合は○○%,(続)
2012-05-24 21:17:19(20)(承前)焼却灰の予想濃度は○○Bq,焼却灰の処理方法は○○,Cs以外の放射性物質がどの程度含まれるかは○○」等の基本情報が適切に受け入れ側自治体と市民に公開され,これらの情報が共有されたうえで議論がなされて受け入れが決定されるなら,問題はありません。
2012-05-24 21:17:48(21)しかしこのような手続きのないまま,受け入れろ,受け入れなければ差別だ,利己主義だと言われるような社会は,私見ではとても健全とは言えません。
2012-05-24 21:18:07(22)また,がれきの広域処理は根拠法令を欠き違法であるとの指摘がなされています。私はこの点をまだ詳細に検討していないので何とも言えませんが,少なくとも,法に基づく行政の原則からすれば,行政側が根拠法令を明確にすべきです。この点でも,現時点でのがれきの広域処理には問題があります。
2012-05-24 21:18:49