茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第605回「芸術か、娯楽かそれが問題だ」

脳科学者・茂木健一郎さんの5月25日の連続ツイート。 本日は、昨日街を歩きながら、ふと思い出していたこと。
7
茂木健一郎 @kenichiromogi

しゅりんくっ! ぷれいりーどっぐくん、おはよう!

2012-05-25 06:17:43
茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第605回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、昨日街を歩きながら、ふと思い出していたこと。

2012-05-25 07:13:04
茂木健一郎 @kenichiromogi

げご(1)小学校の頃から、毎月のように映画を見に行っていた。たいていがハリウッド映画のロードショーで、A級からB級、級外までいろいろ見たけれども、そんな中で、映画というのはこんなものであるという「相場観」ができあがっていった。一つのジャンルの性質は、いくつか見ないとわからない。

2012-05-25 07:16:05
茂木健一郎 @kenichiromogi

げご(2)それが、高校くらいからいわゆる名画系の映画を見るようになった。最初はタルコフスキーとか、ヴィスコンティあたりではなかったか。当時はビデオなんかないから、名画座に通って、せっせと見た。そうしたら、それまでのハリウッドの大作とは、明らかに異なる。

2012-05-25 07:17:11
茂木健一郎 @kenichiromogi

げご(3)タルコフスキーなんて、何の説明もない。詩的な映像が、延々と続く。ベルイマンのはっと息を呑むような美しい画面。一度これらの「芸術映画」を知ってしまうと、それまで見ていたハリウッド映画が、なんだかばからしく思えてしまって、「くだらねえよな」とか友達に言っていた。

2012-05-25 07:18:33
茂木健一郎 @kenichiromogi

げご(4)こうなると、ハリウッドが敵になる。映画好きの友達と、「スケアクロウ」や「ミッドナイトカウボーイ」などのアメリカン・ニュー・シネマの頃は良かったけど、最近のアカデミー賞なんてホントにくだらねえ、とよく怪気炎を上げていた。オレたちは、そんなもん見ないぜ、と吹かしてたのだ。

2012-05-25 07:20:17
茂木健一郎 @kenichiromogi

げご(5)ところが、世の中にはいろんな人がいることを思い知らされる。心から感動したエリセ監督の『ミツバチのささやき』。この名作を見て、「小さな女の子」(アンナ)をひどい目に遭わせる、と怒った人がいるというから驚いた。その人は、ミッキーやミニーが好きでTDL行きまくっているという。

2012-05-25 07:22:45
茂木健一郎 @kenichiromogi

げご(6)『ミツバチのささやき』を見て、「ああ、この映画は自分のことを描いてくれている」と思う人と、『プリティ・ウーマン』とか、ああいった商業大作命の人と、世の中はいろいろだなあ、と思って、やたらと映画の話をしていた青春時代があった。後藤聡くん、君は元気でどこにいますか?

2012-05-25 07:24:18
茂木健一郎 @kenichiromogi

げご(7)ハリウッドの大作も、まっ、いいかと思うきっかけは、フロリダのユニヴァーサル・スタジオに行ったこと。インディ・ジョーンズの舞台がマジ凄くて、それだけのエネルギーを費やしてエンタメを作るという志に感動した。ま、世の中いろいろあっていいんだよ。青春のオレは、暑苦しかったね。

2012-05-25 07:25:48
茂木健一郎 @kenichiromogi

げご(8)日本酒飲むようになると、いい酒は翌日残らない。あー、楽しかったと劇場を出て、そのあとすっきり何も残らないハリウッド大作は、極上の日本酒のようなものだろう。タルコフスキーとか心に刺さって、ずっと残る。芸術映画は、そうやって足跡残すけど、ハリウッドは違う道でいいよね。

2012-05-25 07:27:24
茂木健一郎 @kenichiromogi

げご(9)保坂和志さんと話していたとき、小津作品は、ロードショウ当時は普通の人が見に行って、「笠智衆がこんなばかなことを言ってたよ」と笑うような娯楽大作でもあったという。スゲーな、小津安二郎。今見たら神の業だけど、娯楽でもあり、芸術でもあるものを作ったのは、愛が深かったんだろう。

2012-05-25 07:29:33
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート第605回「芸術か、娯楽かそれが問題だ」でした。

2012-05-25 07:30:08

その後のツイート

茂木健一郎 @kenichiromogi

ところで、芸術映画としても娯楽映画としてもすぐれているのが、『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』です。本当に胸がきゅんとして、深い感動がある、映画史に残る傑作だと思います。どんな傾向の人にも自信を持っておすすめできる。

2012-05-25 07:42:22
茂木健一郎 @kenichiromogi

「すぐれた芸術作品には、どこか、人の心を傷つけるところがある。人は、芸術作品に接することで、積極的に傷つけられることを望むとさえ言えるのである。」 茂木健一郎『脳と仮想』(新潮社)

2012-05-25 07:44:29
茂木健一郎 @kenichiromogi

『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』だけど、イングマル少年がかわいすぎて。あることを悟ったとき、イングマル少年が、おじさんに向かって、庭の小屋の中から「ワン! ワン!」と吠えるシーンは、思い出すだけでも涙が出そうになるなあ。

2012-05-25 07:46:13
茂木健一郎 @kenichiromogi

『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』、お母さんが病気で寝てて、そこに、犬のシッカンがワンワン、って入っていってしまって、イングマル少年があわてておいかけて、お母さんがヒステリーになって叫んで、イングマル少年がシッカンを押さえて、耳をふさいで何か言っているところとか、たまらん。

2012-05-25 07:47:35
茂木健一郎 @kenichiromogi

あとさ、『ゴッド・ファーザー』の「愛のテーマ」をいわゆるその「暴走関係」に使おう、と思いついた人って、天才だと思うんだよね。「ぱぱらぱらぱらぱらぱらぱー」って鳴らしているのを聞くと、迷惑だな、と思いつつ、血が騒ぐもんね。

2012-05-25 07:49:19