クローズアップ現代「フィルム映画の灯を守りたい~デジタル化の嵐の中で~」書き起こし・ほぼ完全版 #nhk
- toshihiro36
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東映・村松:将来的にはフィルムをなくしてデジタル一本と。フィルムに対する愛着もありますけど、それにとらわれていると…今後我々の業界の進む道というのが、そちら(デジタル化)に向かって進まないといけないので。
2012-05-30 21:53:45<ナレーション> 映画界を席巻するデジタル化の波。その陰で地方の映画館の廃業も相次いでいます。デジタル機器の導入には1000万円もの投資が必要で、資金力のない劇場は存続を諦めざるをえないといいます。デジタル化の波は、関連産業にも深刻な影響を及ぼしています。
2012-05-30 21:58:28<ナレーション> 今年3月、国内最大手のフィルム映写機メーカーが破産、業界に衝撃を与えました。創業は昭和41年、長年国内ナンバーワンの座を誇ってきましたが、この数年売り上げが激減し倒産を余儀なくされたのです。
2012-05-30 22:05:44<ナレーション> 創業時からの社員だった、加藤元治さんです。最盛期には年間100台を超える映写機を取り付けてまわったといいます。現在は全国の映画館に残っている映写機のメンテナンスを、手弁当で引き受けています。
2012-05-30 22:09:01加藤:だって現実にこれ使ってる所、いっぱいあるじゃん。やっぱりそういうお客さんに残しておきたいっていうのが、絶対にあるんだよね。
2012-05-30 22:12:56<ナレーション> 加藤さんは映写機が廃棄されると聞くたびに劇場に駆けつけます。新たな部品が生産されなくなった今、使える部品を少しでも多く残しておきたいと考えているからです。すでに大手シネコンの8割以上がデジタル配給を導入、来年には100%完了する予定です。
2012-05-30 22:18:26<ナレーション> 1世紀以上もの時間をかけて培われてきた、フィルム映画という名の文化遺産。加藤さんは1台でも多くフィルムの映写機を残すことで、その文化を守りたいと考えています。
2012-05-30 22:22:33加藤:フィルムからデジタルに移行してくるっていうのは、どうしても逆らえないのかな。フィルムそのもの(の価値)は全く変わってないから…(フィルムが)ある間はそれを映写できるような機械は少しでも見守ってあげたい。それだけですけどね。
2012-05-30 22:27:24<ナレーション> 町の人々に多様な映画を提供し続けてきた、新富座の水野さん。今回は昭和30年代の大衆映画に光を当て、その魅力を伝える特別上映会を開こうと考えました。水野さんは配給会社に頼みこみ、倉庫の片隅に眠っていたこのフィルムを探し出してもらいました。
2012-05-30 22:31:49<ナレーション> しかし古いフィルムを扱うのは容易ではありません。この日も試写の途中、突然フィルムが切れてしまいました。ただちに切れた個所をつなぎ修復します。30年近く映写技師の腕を磨いてきた水野さん、どんなフィルムでも扱える技術があってこそ、こうした映画を上映できるといいます。
2012-05-30 22:36:53<ナレーション> デジタル配給の場合、こうしたアクシデントはほとんどないといいます。しかしそうなれば、フィルムを扱う技術を伝承する機会が失われてしまいます。
2012-05-30 22:40:12水野:このフィルムのやり方というのは、本当に長い時間変わらずにやってきた。そういう歴史の上にいるんだなと思いますね、僕たちは。それをこうも簡単に捨てちゃってることが…いま本当に「えーっ」と思いますね。
2012-05-30 22:44:30<ナレーション> 映画の多様性を守ってきたフィルムの世界。そのよさを改めて見直そうという動きも始まっています。きっかけとなったのは、アメリカの映画芸術科学アカデミーが発表した論文「デジタル・ジレンマ」。
2012-05-30 22:50:41<ナレーション> デジタルでの長期保存の場合、数年おきに規格が変わりそのたびにコピーを繰り返す必要がある。その結果フィルムの11倍ものコストがかかるだけでなく、保存の安全性も保証されないというのです。
2012-05-30 22:53:08<ナレーション> 100年にもわたる映画の豊かな記録を残そうと設立されたフィルムセンター。ここではデジタル化全盛のいまも、4万本に上る映画をすべてフィルムで保存しています。室温・湿度に気をつければ、数百年は映像を保存できるといいます。
2012-05-30 22:59:16主任研究員:現時点ではアーカイブの世界の認識では、長期的に保管できる媒体としてはフィルム以上のものはないというのが…現在のとりあえずの結論。
2012-05-30 23:02:34<ナレーション> 特別上映会の当日、新富座にはいつになく大勢の観客が詰めかけていました。これまでさまざまな映画を掘り起こしてきた水野さん、今度はどんな映画を見せてくれるのか。映画の出演者の一人である桂小金治さんも駆けつけました。
2012-05-30 23:07:29<ナレーション> 映画「羽織の大将」は下町を舞台に、人々の心のふれあいを描いた人情喜劇。映画の世界に浸りきる人々。しかし水野さんには心配事がありました。上映中にフィルムが切れれば、観客とこの映画との出会いが不完全なものになる。もしもに備え、見守り続けます。
2012-05-30 23:12:22水野:古いフィルムだと、やっぱりすごい神経も使うし。でも大切にせなあかんと思いますよね。本当にお客さんが見るkとによって、命を与えてほしいと…映画にね。
2012-05-30 23:16:29<ナレーション> 2時間後、上映は無事終了。今の映画にはない独特の味わいを持つ作品との出会いに、大きな拍手が起こりました。埋もれていた映画を掘り起こし、人々に豊かな映画体験を提供してきた水野さん。この日も手応えを感じていました。
2012-05-30 23:20:29観客の感想:「今日は本当に知らなかったものに出会えて、感動して泣きました」 「良い映画が…こんなこと言ったらいかんけど、最近少ないように思えて。昔の映画を見ると、余計よろしいね」
2012-05-30 23:27:03水野:フィルムに対するノスタルジックなことではなくて、フィルムで100年の映画館が培ってきたものを、どうデジタルの時代に引き継いでいくか。僕らは変わる時の証人として、悩まなきゃいけないと思うんですよ。この時代にい劇場を預かっているから。だから、その苦しみだと思っているんで。
2012-05-30 23:32:49スタジオに戻ります
国谷:今夜は映画監督の瀬々敬久さんにお越しいただきました。今の水野さんの「劇場を預かっている者として、デジタルの時代にどう引き継ぐのか悩まなくてはならない」という言葉、どのようにお聞きになりました?
2012-05-31 05:58:27