オカマだらけの本能寺~敵(ブス)は本能寺にあり~

2011本能寺記念にかいたtwitter小説。 踏んづけてやる!
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ラー油ちゃん @rahyuchan

「トシ美」 「アタシ、ミツママの行く所ならどこへだってついていくわ」 光秀は涙を堪えるように顔を歪ませる。 「ママ、そんな顔しないで。これからあのブスを踏んづけに行くんだから!景気よくいきましょ!」

2011-06-02 21:17:19
ラー油ちゃん @rahyuchan

微かに叫び声が聞こえた。 信長は本能寺の一室で休んでいた。何事かと思い、手を二度打つと蘭丸を呼んだ。 「ランちゃん、ちょっと外を見てきてくれない?外が騒がしいわ」 「ハーイ」 蘭丸は静かに障子を閉め、部屋を後にした。

2011-06-02 21:20:59
ラー油ちゃん @rahyuchan

「ママ!」 「あらランちゃん、ずいぶん慌ててるじゃない」 蘭丸が慌ただしく障子を開ける。信長は蘭丸のただならぬ様子に何事かと思いつつもあまり気にかけた様子も見せなかった。 「大変!囲まれてるわ!」

2011-06-02 21:31:47
ラー油ちゃん @rahyuchan

「どんだけー!ってどういうことよ?」 「ここが、本能寺が兵に囲まれてるの…!」 蘭丸は涙目になりながら言った。 「そう」 信長は唇を舐めると、毅然とした様子で蘭丸に尋ねる。 「そのよほど踏んづけられたいおバカさんは誰なの?」

2011-06-02 21:36:47
ラー油ちゃん @rahyuchan

信長の落ち着き払った様子に驚いた蘭丸が言葉に詰まっていると、さらに信長が続けた。 「誰なの?もしかして、ストレンジ?やだあの子ったら」 「ち、違うわママ…旗指物は、木瓜じゃなくて」 信長が目を細める。 「指物は、水色桔梗」

2011-06-02 21:42:56
ラー油ちゃん @rahyuchan

「謀反は、ミッツさんなの…!」 蘭丸の言葉を聞くと、信長は口の端を吊り上げた。 「フフ、是非もないわ」 信長は手を三度叩く。隣の部屋に控えた小姓が片膝をついて信長の前に出た。 「弓を持ってきなさい」

2011-06-02 21:47:26
ラー油ちゃん @rahyuchan

「ママ!」 「ランちゃん、あなた逃げてもいいわよ」 信長は小姓から弓を受けとると部屋の外へと歩き出した。 「あなたまだピッチピチのガラスの10代でしょ、未来があるんだから」 「ママ!」 蘭丸が叫ぶ。 「嫌!アタシ、ママの小姓だもの!絶対に逃げないわ!」

2011-06-02 21:57:37
ラー油ちゃん @rahyuchan

「ランちゃん」 「だって…だってアタシ、ママについて行くって決めてオカマになったんだもの…ママはアタシが守る!」 信長は少し悲しげに笑うと、蘭丸に歩みよってその頭を撫でた。 「その決意、本物ね?」 蘭丸は信長の目を見て頷いた。 「ランちゃん、刀持っていらっしゃい」

2011-06-02 22:05:02
ラー油ちゃん @rahyuchan

その言葉に蘭丸は満面の笑みで頷くと刀を抜く。 信長は廊下を大声で家臣たちに檄を飛ばしながら歩く。 「アンタたち!謀反人はミッツよ!ミッツの兵は全部ピンヒールで踏んづけてやんなさい!」 信長は障子を開くと、弓を構える。 「ナメた真似してんじゃねぇぞ」 低く呟き、矢を射る。

2011-06-02 22:15:09
ラー油ちゃん @rahyuchan

「きゃん!」 水色桔梗の指物を背中に差した足軽が倒れた。 それを見た別の足軽が喚きながら信長に迫る。 「お黙り!」 信長は次々に矢を射る。その度に足軽が倒れ、また側に控えた蘭丸に斬り倒されていく。

2011-06-02 22:20:23
ラー油ちゃん @rahyuchan

信長が次の矢を取ろうとする。しかし手応えがない。矢を使いきっていた。 ならばと槍に持ち変えようとしたその時、信長の肩に痛みが走った。 「ぐっ…!」 白い寝巻きの肩が赤く染まっていた。

2011-06-02 22:26:06
ラー油ちゃん @rahyuchan

信長の動きが止まった一瞬の隙をついて、足軽の射った矢が肩に刺さっていた。 更に矢の数は増える。肩に刺さり、脇腹や顔を掠めた。 横から蘭丸が飛び出した。矢を叩き折り、射った者をことごとく斬り伏せる。 「ママ!下がって!」 蘭丸が叫んだ。

2011-06-02 22:32:07
ラー油ちゃん @rahyuchan

「ランちゃん、ちょっといらっしゃい!」 信長が部屋の奥へ下がる。蘭丸はその肩を支えた。 「ママ…アタシ、ママにケガさせて…!」 「ランちゃん、火」 「……!」 血を失い、白くなったかおでニヤリと笑みを浮かべながら信長は言った。

2011-06-02 22:43:21
ラー油ちゃん @rahyuchan

「ランちゃん」 「ママ」 「蘭丸!」 信長は愕然とする蘭丸に一喝をくれる。 「火をかけるわよ!アタシの首も、カラダも、あのブスキンカンになんか渡してやらないんだから!」 信長はにやりと笑い、部屋を後にした。 蘭丸はそれを見送ると唇を噛みしめ、台所へと走った。

2011-06-02 22:51:43
ラー油ちゃん @rahyuchan

信長は最上階の一室にいた。遠くで火が上がった、と叫ぶ声が聞こえる。 「アタシも随分恨まれたものね」 誰に聞かせる訳でもなく一人つぶやく。風のある日だ、火は早く回るだろう。 「人間五十年、か」 信長は大きく息を吐くと、扇子を取り出した。

2011-06-02 23:21:35
ラー油ちゃん @rahyuchan

白い寝間着に血が赤い花模様のように彩りを添えている。 ちょっとアタシの趣味じゃないけど最後の衣装としてはなかなか悪くないじゃない。赤は好きだわ。 信長は回り始めた火の音を聞きながら考えた。

2011-06-02 23:28:23
ラー油ちゃん @rahyuchan

信長は肩に手をやると自らの血を指先に一掬いする。 その指先で唇をなぞる。 「最後にルージュも塗らないなんて、オカマ失格よ」 信長は赤く染まった唇で呟く。 「さあ、ラストステージよ」

2011-06-02 23:32:37
ラー油ちゃん @rahyuchan

音楽はいらない。何度も踊ったから、体にしみついている。 「人間五十年、下天のうちをくらぶれば」 ここでターン。しなやかに回る。 「夢幻のごとくなり」 強さと優雅さを腕の動きで表現する。 燃え盛る炎は最高の照明となって信長の横顔を照らす。

2011-06-02 23:40:00
ラー油ちゃん @rahyuchan

最後のターンを決めた。 柱の焼けるぱちぱちという音がまるで拍手のように響いた。 信長は見えない観客に深々と礼をする。 最高の照明、最高の舞台。信長は心底満足した笑みを浮かべた。 「ミッツ、これがアタシのラストステージよ」 信長は置いていた刀を手に取った。

2011-06-02 23:47:18
ラー油ちゃん @rahyuchan

光秀は燃え盛る本能寺を見つめていた。 ものが焦げる臭いで辺りは満ちている。 「ママ…」 主君殺し、その汚名はいつかはわからないが死ぬまでついてまわるだろう。 それを思うと、光秀は目眩を覚えた。

2011-06-02 23:56:24
ラー油ちゃん @rahyuchan

水色桔梗の旗が炎に照らされている。 信長の放った火は光秀の心までを焦がすかのように勢いを増している。 光秀は、心の焦げる音を聞いたような気がした。

2011-06-02 23:59:13