オカマだらけの本能寺~敵(ブス)は本能寺にあり~

2011本能寺記念にかいたtwitter小説。 踏んづけてやる!
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ラー油ちゃん @rahyuchan

歴史がわかりやすいようでわかりづらい、もしかしたらちょっとわかりやすく読める小話をツイートします。

2011-06-01 20:57:54
ラー油ちゃん @rahyuchan

なお、このツイート小話は主にwikipedia他歴史小説などまあシナリオに都合のいい逸話などを元にしたものですので、史実とは大いに異なる場合があります。ご了承ください。

2011-06-01 21:03:02
ラー油ちゃん @rahyuchan

1582年、3月。 甲斐武田氏当主である武田勝頼が自刃。 後の世にいう武田征伐である。 武田氏滅亡。その知らせを受けて祝杯の宴が開かれていた。 輪の中心で家臣に酒を注がれながら祝辞を受けている人物がいた。織田信長である。

2011-06-01 21:05:30
ラー油ちゃん @rahyuchan

「ママおめでとう!」 「これでもうママを阻むものはいないわね!」 「ありがとう!ホラ、あんたたち飲みなさい!お祝いなんだからパーッと行かなきゃ!」 信長は酒も入り、機嫌も上々である。武田家の滅亡に家臣たちは労をねぎらいあっていた。

2011-06-01 21:05:43
ラー油ちゃん @rahyuchan

「これでママの進む道を阻むものがまた一つ減ったわね」 明智光秀はほっ、と息をついて隣人へ向けて言った。 「大変だったけど、うまくいってよかったわ。これも私たちが骨を折ったからね」 信長の耳はその言葉を捉え、信長は光秀をぎろりと睨みつけた。

2011-06-01 22:09:24
ラー油ちゃん @rahyuchan

「何よそれ」 信長が盃から口を離して言った。 「アンタが何をしたっていうのよ」 「…は」 光秀は困ったように眉を寄せた。 「何よその顔!アンタがこの戦場で何をしたか言ってみろっていってんのよ!」 信長は光秀の髪をひっ掴むと、その顔に向けてその中身をぶちまけた。

2011-06-01 22:10:49
ラー油ちゃん @rahyuchan

呆然とする光秀の髪から手を離さぬまま信長はずるずると光秀の体を引きずった。 引きずった勢いをそのままに、信長は光秀の額を欄干に向かってしたたかに打ちつけた。 「ぐっ」 光秀からこもった声が漏れる。信長は繰り返す。

2011-06-01 22:12:24
ラー油ちゃん @rahyuchan

「ホラ言ってみなさいよ!」 信長は振り子のごとく腕を振る。その度に光秀の額は欄干に激突した。 何度も繰り返すうち、光秀の額には赤いものが滲みはじめた。 静まり返った広間に額を打ちつける音だけが響く。 「う、あっ、くっ」 「何か言いなさいよブス!踏んづけるわよ!」

2011-06-01 22:14:00
ラー油ちゃん @rahyuchan

「ちょ、ちょっと!待ってママ!」 見かねた家康が立ち上がって二人のそばに寄った。 「あらヤスちゃん」 「ほら、せっかくのおめでたい席なんだから、今日はアタシに免じて…ネ?」 「…フン、ヤスちゃんがいうなら仕方ないわねッ!もういいわ、ランちゃん!行くわよ!」

2011-06-01 22:21:48
ラー油ちゃん @rahyuchan

「ミッツさん、大丈夫?」 「ヤダ、変なトコ見せちゃったわね…」 光秀が座り直すと家康は懐紙を手渡した。 「これ、使って」 「気ぃ遣わせちゃったわね、アリガト」 光秀は懐紙を受けとると額に当てた。懐紙にじわりと赤い染みが広がった。

2011-06-01 22:36:31
ラー油ちゃん @rahyuchan

「じゃ、ミッツ。ヤスちゃんのおもてなし、頼んだわよ」 武田征伐の後、信長は武田と長年にらみ合っていた徳川家康のねぎらいのための接待役を光秀に命じた。 光秀は、今度は失敗は許されないとばかりに早々に準備に手をかけた。 信長の命ということもあるが、いつぞやの懐紙のこともある。

2011-06-02 09:54:00
ラー油ちゃん @rahyuchan

光秀は食事の管理も、宿泊場所の管理も、全てにおいて粗相のないようにと丁重に事を運んでいた。 「あらなあに?これ」 信長が魚を指して言った。 「腐ってるんじゃないの?臭いわよぉ」 「えっ」 光秀は驚きそんな馬鹿な、と叫びたい気持ちを抑えながら魚をあらためた。

2011-06-02 09:57:27
ラー油ちゃん @rahyuchan

魚はいたんでいるというほどではなかったが確かに臭いは出ている。 隅々まで指示が行っていなかったのだろうか。光秀は眉を寄せた。 「ミッツ!あなた何をしているの?」 信長が光秀に鋭く言い、足を払った。 「当代きっての教養人、なんて言われてるから期待してたんだけどねぇ」

2011-06-02 10:07:04
ラー油ちゃん @rahyuchan

「ランちゃん!」 信長が二度手を打つと、控えていた小姓の森蘭丸が進み出た。 蘭丸に信長は鉄扇を差し出す。 「このブスったら本当にダメなのよ…当代きっての教養人、なんて言うから期待してたんだけど」 「マ、ママ」 「こんなんじゃオカマの風上にもおけないわ」

2011-06-02 11:37:06
ラー油ちゃん @rahyuchan

「これでひっぱたいてちょうだい。このくらいしないとわかんないわよ」 「ハーイ」 蘭丸は信長から鉄扇を受け取ると風を切る音が聞こえるほど勢いよく振りおろした。 「ぐっ」 鉄扇の鈍い音がして、光秀がうめいた。

2011-06-02 19:25:55
ラー油ちゃん @rahyuchan

鉄扇が風を切る音が続き、光秀の額に赤いものが拡がる。 「ねえミッツさん」 蘭丸が光秀だけに聞こえるように囁く。 「近江坂本八万石」 「…っ?」 「ありがとう、ネッ」 蘭丸の笑顔は残酷なまでに美しかった。

2011-06-02 19:34:01
ラー油ちゃん @rahyuchan

松明に照らされた光秀の顔はひどく疲れていた。 なぜわたしは西へむかっているのだろう。 うつろな目を進行方向に向けながら光秀は馬を進める。 「もうそろそろ川が見えるわよ」 利三の声が聞こえる。川を越え、西へ向かう。そして援軍として毛利攻めに参加する。

2011-06-02 19:40:15
ラー油ちゃん @rahyuchan

「ミッツ、あんたはもうこの接待から外すわ」 「そんな…っ!アタシ、もう失敗は…!」 鉄扇で打ちすえられた後、額から血を流す光秀に信長が言った。 ほんの些細な、失敗とすら言えないような失敗に対しては厳しすぎるほどの処遇だった。 「お黙りブス!」 信長の声が鞭のように光秀を打った。

2011-06-02 19:40:29
ラー油ちゃん @rahyuchan

光秀は唇を噛みしめながら信長の怒鳴り声を聞いた。 「ああ、それともう一つ。坂本は没収よ」 「…えっ」 蘭丸の声が頭の奥に蘇る。 「近江坂本八万石…ありがとうネッ」

2011-06-02 19:55:30
ラー油ちゃん @rahyuchan

「そんな…!それじゃあアタシは」 「そのかわりに中国は好きなだけア・ゲ・ル」 信長は光秀をさえぎって言った。光秀はたまらず信長に言った。 「中国は毛利の領地じゃ」 「戦って勝てばいいじゃないの!」 ぴしゃりと言い切られ、光秀はそれ以上何も言えなかった。

2011-06-02 20:02:27
ラー油ちゃん @rahyuchan

馬上にて、光秀は今一度自らに課せられた使命を反芻した。 川を越え、毛利と戦う羽柴の援軍として西へ向かう。 羽柴の下で戦って、中国を、切り取って… 「トシ美、止まって」

2011-06-02 20:06:54
ラー油ちゃん @rahyuchan

「あらミツママ、どうされて?」 「トシ美、聞いてちょうだい…進軍はここで止めるわ」 「えっ?」 「京に戻るの」 光秀は利三に微笑むと、馬首をひるがえして兵に向き直り、声を張った。

2011-06-02 20:07:40
ラー油ちゃん @rahyuchan

「みんな、よく聞いて!これから京に戻るわよ!」 ざわめきが広がった。 「鴨川を戻って、町に入って、向かうところはただ一つよ。あのブスのところ」 光秀が話し始めると、兵たちは一瞬にして静まり返った。 「そう、あのお寺へ向かうの。あのブスを討ちとって、踏んづけてやるのよ!」

2011-06-02 20:11:00
ラー油ちゃん @rahyuchan

「敵(ブス)は、本能寺にあり!」

2011-06-02 20:13:04
ラー油ちゃん @rahyuchan

光秀は元来た道を戻るように馬を駆けながら利三に言った。 「トシ美、ごめんね…もう、アタシ」 「謝らないで、ママ」 利三は馬を並べながら言った。 「アタシもあのブスにはうんざりしてたのよ。このままじゃミツママが壊れちゃうわ」

2011-06-02 21:15:31