ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/06/01

にゃおっく @_nyaok

#twnovel 運命の女神が気まぐれに時間を進めながら編み物をしている。この女はその男と出逢って別れ、また隣の男と出逢う。先ほど別れた男は…運命の糸は編み込まれる。絶望も奇跡も全ての運命は繋がっている。そしてその美しさを愛でるのは女神ただ一人。さて余った糸で、次は何を編もうか。

鈴々@物語る鳥 @re_rhythm

春は花見酒、秋は月見酒、冬は雪見酒、ならば夏は、と問う。さぁな、と男が答える。縁側に胡坐をかきつつ互いに好きに手酌する。目に映るは雨にけぶるいつもの庭だ。紫陽花ばかりが奇妙に冴えて見える。雨見酒があっても悪くはあるまい。ああ、悪くない。酒を呑む理由など何だって。 #twnovel

おぼろちゃん @oboroose

#twnovel ベビーカー職人は賢明だったので、在庫の山を見て、赤ん坊も一緒に売ればいいと思いついた。ベビーカーと同じ素材で造った、永遠に朽ちない人造嬰児。よく売れた。数十年で母親たちの寿命はつきた。考えるまでもない、同じ素材で造った。人造養母を。朽ちない赤ん坊たちに、売れた。

@nomakooo

「言葉なんて思いが伝わらなければただの音でしかないよね」と、帰り道、彼女は道端の小石を蹴りながら言う。僕はその言葉に同意した。たとえば、好きだよと僕が彼女に囁いたところでその言葉は彼女に伝わらない。ただの音だ。前を歩く彼女の薬指がキラリと光るのがみえた。#twnovel

とおる7th @windcreator

吸わないの？ 隣に座った彼が口に咥えた煙草をくいっと上げてみせる。私は「お酒を味わいたい気分かな」と微笑む。魔法のような手際で彼の煙草に火が灯り、数秒。喫まれた煙が、ゆっくりと口から零れ昇る。その煙をそっと吸う。彼自身を吞んでいるかの様な、快感。もっと。もっと。 #twnovel

雨音 @candypeal

乗客は皆眠っていた。寝台車みたいだね。隣で女が笑う。僕は黙って携帯を弄る。ねえ知ってる？この人達、皆死んでるのよ。ほら。女が指差した先には人骨の様な物があったけど、僕は無視する。やがて女から腐敗臭がしはじめ、液晶画面を触る自分の指も腐り始めていることに気付く。 #twnovel

ぼろいねこ讃 @nekoboro

彼は鬼をやりたくなかったけど、仕方なかった。走るのが遅くて、どうしても捕まってしまって、鬼ばっかりやっていた。彼が鬼になったら最後だった。誰のことも捕まえられないから、まったく面白くない。彼は外れるしかなくなった。そして遊びの外に出た彼は、遊びではなく鬼になった。#twnovel

“さ(*´く｀)ら”たん @sacra_d15

#twnovel 「今日はなにがあったの？なにしてたの？」たいして興味もないくせに、嬉々として話始める私をわかってるんでしょう。なのにそれを聞いてくれてるんでしょう。話半分以下で。わかっているのに口が止まらないのは、あなたと交わす言葉が増えていくのが嬉しいから。ただそれだけ。

layback @laybacks

「朝は大寝坊だったし、学校では先生に当てられまくるし、バイトではミスばっかりだし、ほんと散々な一日だったよ。君に伝えたいこととか、聞いてもらいたいことが多すぎて、話すことに夢中になってしまって、気がついたらもう111文字。わたしは今日もまた鍵かっこを閉じられない #twnovel

あまたす @amatasu

同僚が無断欠勤した。そういや、消えたいとよく漏らしていたな。トイレに立つと、無人の空間に社員証が浮いていた。同僚のものだ。俺だ。社員証から同僚の声がする。俺、消えちまったんだ、体が。待て。ということはお前、いま全裸か。俺は後ずさった。同僚の表情は無論、見えない。 #twnovel

ナコ@文学フリマ東京Q-01 @nakotic

「雨やにゃあ」というコネコに、シイナさんは合羽を買いました。商店街のバザーで、可愛い長靴も。雨の日、コネコは合羽と長靴を着て、傘を差して、嬉しそうに出掛けていきました。それなのにどうして、帰ってきたらずぶ濡れなのでしょう。コネコもシイナさんも、釈然としません。　#twnovel

140字物語 @shortshortshot

とある事情で顔を変えることにした。数千もの実績があり、凄腕で格安の整形医師の元で手術を受ける。術後、鏡を見るとすばらしい出来栄え！医師に礼を言いつつ質問した。「これほどの腕なのになぜお安いんですか」「欠点が一つありまして」「欠点？」「同じ顔しか作れないんです」 #twnovel

@lanatus

あの人は私のことをどれだけ知っていたのだろうか。好きな食べ物、色、動物、言葉。しっかりと答える姿を想像できない。別れた今となってはもうどうでもいいこと。悲しくなんかない。彼が愛したのは都合の良い私。私が愛したのも都合の良い彼。頬を伝う雫には気づかない振りをした。#twnovel

@tofuhamburg

節電の夏に備え扇風機を買ってきた。組立て終わると早速妻が寄ってくる。『ア゛～ワレワレハ』やると思った。『夫婦ニナッテモウ十年ダ』ん？『ソノ記念ガ扇風機トカナラ一生許サナイ』しまった、もう六月、すぐに十回目の結婚記念日だ。「ア゛～全面降伏スル。直チニ要求ヲ述ベヨ」 #twnovel

くさがみ•R•シン @kusagamirin

#twnovel 「話をまとめよう。彼女が余命一ヶ月だと知った君は時間を止めようと考え手始めに町中のあらゆる時計を破壊して回った」「はい」「でも時間は止められなかった。そこで人間動物昆虫に致るまで生物全てを殺し回った。なぜだ？」「生き物がいなくなれば時間が止まると思ったんです」

七歩 @naholograph

私の人生に照明さんが配属された。彼の仕事は私を明るく照らすこと。「照明さんが必要って実は結構年？」「あの顔で女優気取り？」ヒソヒソ。しょんぼりする私に照明さんは言う。「羨ましがってるだけだ顔あげろ」うん。照明さんは私を照らす。生きる道に光を当て、人生を美しく彩る。#twnovel

miecha @miechorz

#twnovel 聖母マリアが再来したのだ、と彼女を紹介された。腕に抱く『子』は、へその緒ではなくコードで繋がったままの歪なロボット。己の部品を体内で分け与え、人間らしく産み落としたと言う。「これも処女受胎と言うのかしら？」意地悪く微笑むガイノイドに、学者も記者も頭を捻る。

リオ @urufffayn

センチメンタルラ族は雨が好き。おふろ上がりに、雨が降っているのも変化があって素敵だ。雨降りのラはみずみずしい。濡れていく世界。植物が喜んでいる。センチメンタルラ族は手を伸ばす。指、手の甲、腕、鎖骨へ流れる水。唇からこぼれるラの歌は、雨粒にのっかり海へ向かった。 #twnovel

イニ木タマコ @28niya32

誰も彼もが部屋を出て行く。私だけが残される。けれども今宵、部屋の床は美術展。傘を伝う雨水が描いた模様、そこに残る空の意識を、私はゆっくり解読する。 #twnovel

ろばたにスエノ🦀 @robatani

病める山羊足の神が黒いあし笛を一吹きしたので、我ら獣は大いなる牧神に続くことにした。鳥は歌い、牛はうなる。先見えぬたそがれの中、笛の音頼りに我らは暗がりを進む。気付いた農夫らは行き先も知らず獣の群れを追う。かくして村から町へ、冥府へのパレードはどんどん膨れていく。#twnovel

リオ @urufffayn

ラブ売り場があった。シンプルなラブ、花柄ラブ、縞ラブ、ひらひらのラブ、すけすけラブと様々なラブが売っている。今は夏用ラブがよく売れているとか。爽やかな色合いに思わず手に取ると、試着を勧められた。ん、注意書きのタグが…「ラブが合わなくても夏は返品できません。」 #twnovel

赤夜真斬子●金曜ミ47a @matako_milk

あまりにも人々が愛を唄い、愛を語り、愛を尊ぶものだから、地球上では愛が溢れて処理に困ってしまった。今では愛を語るのは許可制で、無許可でラブソングなんて歌おうものなら即お縄だ。何千トンと溢れた愛が今日も処理場へ運ばれる。それを見て人々は嘆くのさ、アーメン。 #twnovel