『シスター&シニック!』(第19集)

いつもお読みいただきありがとうございます。 『シスター&シニック!』の第19集です。 内容紹介 続きを読む
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しまだゆういち @chimada

#twnovel 「お兄ちゃん。私は妹になったことを間違いだなんて思わない。女の子として産まれたことも、お兄ちゃんを男性として好きになったことだって」「何が言いたい」「ちょっとした考え違いがあるんだよ。それを正せば私はお兄ちゃんとひとつになれる」「せいぜい知恵を振り絞って考えな」

2012-05-09 21:59:58
しまだゆういち @chimada

#twnovel 眠りから覚めると、妹が僕の上にまたがっているのに気づいた。僕は両手で強く妹を押し上げる。「きゃあ! お兄ちゃんに押し倒される!」「何をしていた」見ると、妹の手には口紅の容器が握られている。「お兄ちゃんって、口紅が似合うね」僕は急いで洗面所にある鏡の前に向かった。

2012-05-10 22:31:22
しまだゆういち @chimada

#twnovel 妹がいきなり後ろから抱きついてきた。とっさに振り払おうとしたが、もしかしたら何か事情があるのかもしれないと思い、話を聞くことにした。「何をしている」「うぅ、お兄ちゃん。〈誰かと接触しないと自分の存在を見失ってしまう症候群〉が……」「やかましい、さっさと離れろ」

2012-05-11 20:13:30
しまだゆういち @chimada

#twnovel ノックの音。妹だ。「お兄ちゃん。お兄ちゃんの中に入ってもいい?」「部屋の中までにしておけ」妹は部屋に入ってきた。途端、突然、僕に向けて突進した。僕は唇が奪われるのを回避し(とんでもない)、妹を睨む。「何をする」「唇で唇にノックしたかった」「僕の口の中には入るな」

2012-05-12 23:02:21
しまだゆういち @chimada

#twnovel 妹が部屋を訪ねてきた。「何の用だ」「お兄ちゃん。お兄ちゃんのそばにいることがひとつめの用事」「ふたつめは」「パンツ貸して」「ジーンズ?」「トランクス」「はけるのか?」「はくよ」「貸さない」「洗って返す」「生理的に無理」「一緒に生理を乗り越えよう」「勘弁してくれ」

2012-05-13 22:37:55
しまだゆういち @chimada

#twnovel 「お兄ちゃん。お兄ちゃんには選択肢がふたつある」「それで? 話を続けて」「ひとつ、『私といっしょにお風呂に入る』。ひとつ、『私といっしょにお布団に入る』。さぁ、選んで」「なら、『妹の話を聞き流す』」「お兄ちゃん」「『答えてなんかやらない』」「私は『話を続ける』」

2012-05-14 21:53:28
しまだゆういち @chimada

#twnovel 妹がリボンを身に着けていた。僕はそのリボンに見覚えがあるような気がした。「どうしたんだ、そのリボン」「お兄ちゃん。これ、昔のりボンなの」なるほど、そのリボンは妹が幼い頃に着けていた。「だめ。こんなものを着けたって、昔には戻れない」妹はリボンを外して僕に笑った。

2012-05-15 21:56:20
しまだゆういち @chimada

#twnovel 「お兄ちゃん。兄と妹って、アダムとイヴみたいだね。そこには男と女の関係はないんだ。それでね、お兄ちゃん。私、お兄ちゃんといっしょにリンゴを食べたい」僕は台所でリンゴを切り分けて皿に盛り、部屋で待っていた妹の前に差し出した。「お兄ちゃん。そういうことじゃなくてね」

2012-05-16 21:26:36
しまだゆういち @chimada

#twnovel 妹が部屋に入るなり深呼吸をはじめた。はじめは気にしなかったが、何度も繰り返されるころにはさすがに不審に思った。「何をしている」「お兄ちゃん。私はお兄ちゃんの吐いた息を取り込もうとしている」僕は窓を開けた。「ああ、お兄ちゃんの息が窓の外に逃げていく」「やかましい」

2012-05-17 21:32:48
しまだゆういち @chimada

#twnovel 「お兄ちゃん。心理試験ね。お兄ちゃんは女の子を押し倒すのと、女の子に押し倒されるの、どっちが好み? 私はねぇ、お兄ちゃんを押し倒したい。けれど、もちろん、押し倒されるのもいいなぁ」「押し倒されない強さがほしい」「苦労してるんだね。私が慰めてあげるよ」「近づくな」

2012-05-18 21:58:50
しまだゆういち @chimada

#twnovel 兄の部屋の前には木馬が置いてありました。しかし、兄はそれを部屋には入れませんでした。夜も更けて、木馬はひとりでに動き出し、兄の部屋に入りました。「おい、何してる」兄は木馬に話しかけましたが、誰も何も言いません。「ごみとして捨ててやる」「ごめんなさい、お兄ちゃん」

2012-05-19 20:38:26
しまだゆういち @chimada

#twnovel 服を脱いでから浴室の明かりをつける。そして、浴室のドアのノブに触れる。その時、身体は止まってドアを開けることを拒否した。僕は事態を察し、浴室に向けて声をかける。「なかにいるんだろう?」すると声が返ってきた。「よくわかったね、お兄ちゃん。私、嬉しい」「うるさい」

2012-05-21 00:05:09
しまだゆういち @chimada

#twnovel 「お兄ちゃん、ただいま――って、うわっ!」「部屋に入るなり突然どうした」「お兄ちゃんの顔に目が眩んだ! まぶしい!」「失礼だぞ」「そうかな。崇めてるんだけど」「傷つくんだが」「ごめん。気づかなかった。じゃあ、私、真正面からお兄ちゃんを見つめる」「余計なお世話だ」

2012-05-21 22:58:02
しまだゆういち @chimada

#twnovel 「お兄ちゃん。基本を確認しましょう」「確認ってどういうことだ」「私こと〈妹〉はお兄ちゃんが大好き。お兄ちゃんこと〈お兄ちゃん〉は、ついつい〈妹〉に冷たくあたっちゃう、ちょっとツンツンなお兄ちゃん。けれど、ほんとうは、あたたかいの」「勝手に僕を設定しないでくれ」

2012-05-22 21:56:41
しまだゆういち @chimada

#twnovel 「ねぇ、鏡さん。どうしたら、お兄ちゃんは私になびく?」『それは教えられないな。人の気持ちは摩訶不思議だからね』「そうか」「一人芝居か。遊びにしても、見ていて痛々しい」「それよりお兄ちゃん。どうしたら私になびく?」「おい、鏡。どうしたらこの妹は落ち着くんだろうな」

2012-05-23 22:42:18
しまだゆういち @chimada

#twnovel 妹が借りてきたホラー映画のDVDを再生してふたりで観ていた。静かな部屋に叫び声が響く。気づくと隣にいる妹がしきりに僕を見ていた。「どうした」「お兄ちゃん。私、〈吊り橋効果〉でお兄ちゃんを抱きたくなったんだけど、抱いていい?」「〈にゃんにゃん〉ってホラーだよな」

2012-05-24 21:30:33
しまだゆういち @chimada

#twnovel 「お兄ちゃん。これから私、お兄ちゃんの部屋で着替えをするけれど、けっしてドアを開けて中を覗いてはいけません」「おい。そもそもどうしてわざわざ僕の部屋で着替えるんだ。自分の部屋で着替えろ」「お兄ちゃんの部屋で着替えるのは、妹のせめてもの恩返しなのですよ」「いらん」

2012-05-25 21:05:18
しまだゆういち @chimada

#twnovel 「お兄ちゃん。浴衣を着てみたよ。ちょっと内側を見てくれないかな」「ごめん、ちょっと聞きたくなかった。もう、二度と言わなくてもいいから、自分の部屋に帰れ」「そんな。せっかく下には何も着けていないというのに」「だからこそだよ」「わかった。妥協する。私の浴衣姿を見て」

2012-05-26 22:26:31
しまだゆういち @chimada

#twnovel 「お兄様。そろそろ衣替えですね。そこでお兄様には〈妹を耽溺する兄〉を用意しました。試着してはいかがですか」「なぁ、〈兄に敬語で話す妹〉の着心地はどうだ」「少し窮屈です」「そうか。ところで、〈兄に迫る妹〉も古くなったな」「お兄ちゃん。私の裸が見たい?」「遠慮する」

2012-05-27 21:47:49
しまだゆういち @chimada

#twnovel 「どうしてこんなことになったんだろう。はじめはただ、さみしいからお兄ちゃんにかまってもらいたい、そう思っていただけなのに。いつだったろう、それが恋する気持ちだと気づいたのは。私は苦しいよ、お兄ちゃん。まぁ、それはともあれ、いっしょに寝ましょうか」「知ったことか」

2012-05-28 21:10:50
しまだゆういち @chimada

#twnovel 妹が部屋で奇妙な振る舞いをしていた。「お兄ちゃん、どこにいるの。隠れてないで出てきて」僕はここにいると言えばいいのだろうけれど、妹にだってそのことはわかっているはずだった。そうしているうちに、妹は僕のからだに手で触れた。「あ、お兄ちゃんがいた」「そりゃよかった」

2012-05-29 20:23:30
しまだゆういち @chimada

#twnovel 「〈兄に迫る妹〉はフィクションだ。実在する僕とは関係がない」「つまりここにいる私はお兄ちゃんの妄想ってこと?」「すまない、言い過ぎた」「いいの。続きを聞かせて」「続き」「妄想の続き。淫らな〈妹〉はお兄ちゃんの前でどんなことをするのかな」「妹に聞かせる話じゃない」

2012-05-30 21:31:55
しまだゆういち @chimada

#twnovel 兄の部屋のドアをノックしたが返事がない。ノックを繰り返しても返事はなかった。ドアノブに手をかけると鍵がかかっていなかった。私はドアを開けて兄の部屋に入る。すると目に入ったのは兄が部屋で横たわっている姿――「きゃああ! お兄ちゃん!」「死んでない。寝かせてくれ」

2012-05-31 21:43:25
しまだゆういち @chimada

#twnovel 「――お兄ちゃん。“次”は一緒になろう」妹の血のぬくもりを感じる。最期に妹を叱ってやろうと思った。妹の耳にはもう何も届かないだろうけれど。「幸せになってほしかった」〈END〉「お兄ちゃん。心中エンドはこんな感じだよ」妹を叱ってやろうと思った。今ならまだ間に合う。

2012-06-01 20:51:07
しまだゆういち @chimada

#twnovel 「お兄ちゃん。夏といえば水着や浴衣。お兄ちゃんは私にどんな衣装を着て欲しいかな」「最低限、服は着てくれ」「お兄ちゃんは裸では興奮しない人ですか」「あまり怒らせないでくれ」「……お兄ちゃん」「どうした」「思わずときめいちゃった」「今のどこにときめく要素があった」

2012-06-02 21:52:07