NHK・クローズアップ現代「東電女性社員殺害事件 再審の衝撃」書き起こし・ほぼ完全版 #nhk
- toshihiro36
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<ナレーション> 事件から15年が経った今日、裁判のやり直しを認める決定が出されました。再審の決定書です。決め手となったのは、捜査段階で行われなかったDNA鑑定の結果でした。これは検察が保存していた証拠品。被害者の体内から、体液を採取した脱脂綿です。
2012-06-07 22:52:07<ナレーション> この体液を初めて鑑定したところ、マイナリ元被告ではない男のDNAが見つかったのです。証拠番号376の男、この男のDNAは現場に落ちていた体毛からも検出。さらに被害者のコートからも検出され、この男が女性を殴った際についた可能性があるとされました。
2012-06-07 22:55:42スタジオに戻ります
国谷:今夜はこの事件の捜査そして裁判の取材を続けてきました、社会部・司法キャップの堀部記者に来てもらいました。当初から現場にあった証拠の重要性を見過ごしていた捜査なんですけれども。なぜ、その時点で徹底的に証拠のDNA鑑定が行われなかったんでしょうか?
2012-06-08 05:22:49堀部:警察は捜査のかなり早い段階からマイナリ元被告に捜査の対象を絞っていまして、マイナリ元被告につながらないとみた証拠は重要視していませんでした。当時から被害者の体に残っていた体液の血液型については調べていまして、これがO型だということは確認していました。
2012-06-08 05:27:07堀部:ところが、マイナリ元被告はB型でした。警察はこのO型の体液は被害者が直前に会っていた、知り合いの男性のものと思い込んでそれ以上調べなかったんです。実は今回真犯人の可能性が浮上した「証拠番号376の男」、この男の血液型はO型でした。
2012-06-08 05:32:34国谷:当初から警察は早い段階で、マイナリ元被告が犯人ではないかと絞り込んでいったと言われたんですけれども。なぜ第三者の可能性を、早くから排除してしまったんですか?
2012-06-08 05:36:05堀部:警察はマイナリ元被告が現場の部屋の鍵を預かっていたことで、かなり早い段階から疑いの目を向けていました。事件から4日後に不法滞在の疑いで逮捕しまして捜査を続けた結果、マイナリ元被告の犯行をうかがわせる状況証拠が次々に集まってきました。
2012-06-08 05:40:28堀部:こうした中で、他の可能性というものを考えられなくなったとみられます。「さらに当時警察はマイナリ元被告は不法滞在の疑いで強制退去される前に逮捕しなければならないと焦っていた」と話す捜査関係者もいます。時間の制約がある中で、警察にとって都合のいい証拠にばかり目が向いた面もある。
2012-06-08 05:45:37国谷:再審決定を受けて検察は異議申し立て。そして当時の捜査幹部は、有罪に対する自信をいまも持っているという発言をしているんですけれども。なぜ、この新証拠の重要性というものは認められないんですか?
2012-06-08 05:48:52堀部:警察や検察は、当初から状況証拠の積み重ねによる犯行の立証に自信を持っていました。再審で無罪になった過去の冤罪事件では、例えば強引な取り調べで自白させるような…捜査に明らかな問題があったケースもあるんですけれども。
2012-06-08 05:54:06堀部:今回は強引な調べなどはせずに地道な捜査で証拠を得た、適正なケースだと考えていたんです。だからこそ今回再審の開始だけではなくて、刑の執行も停止されてマイナリ元被告が釈放されることになったことに大きな衝撃を受けています。
2012-06-08 05:57:32堀部:警察や検察が間違いないと信じきった捜査の中で、重要な点が見過ごされたということに危うさを感じます。何が足りなかったのか、徹底した検証が求められると思います。
2012-06-08 05:58:51国谷:社会部・司法キャップの堀部記者でした。捜査の実態に続きまして、司法の場です。裁判ではなぜ第三者の犯行の可能性が探られなかったのでしょうか。
2012-06-08 06:01:38VTRが流れます
<ナレーション> 逮捕から15年、マイナリ元被告は一貫して無罪を主張してきました。手紙をやりとりしているのは、マイナリ元被告の支援を続けてきた客野美喜子さあんです。
2012-06-08 06:05:13<ナレーション> 12年前の1審判決で、東京地裁はマイナリ元被告に無罪を言い渡しました。マイナリ元被告の逮捕に結びついた状況証拠を、有罪にするには不十分と判断したのです。現場に捨てられていた避妊具の体液、これは事件以前のものだった可能性のあると判断しました。
2012-06-08 06:10:45<ナレーション> 部屋で見つかったマイナリ元被告の体毛。しかし、本人以外のものもあったため、有罪の決め手にはならないと判断。さらに重く見たのは、被害者が使っていた定期入れでした。定期入れは事件のあと、東京・巣鴨の民家の敷地内で発見されました。
2012-06-08 06:16:16<ナレーション> マイナリ元被告が住んでいたのは渋谷、勤め先の飲食店は千葉県の幕張でした。判決では「マイナリ元被告は巣鴨には土地カンがなく、真犯人が捨てた可能性がある」とされたのです。無罪判決を受けたマイナリ元被告、しかし検察は異例の手続きをとりました。
2012-06-08 06:23:05<ナレーション> 本来なら釈放されるはずのマイナリ元被告を、拘留するよう求めたのです。検察から拘留の申し立てを受けた、元裁判官の木谷明さんです。
2012-06-08 06:25:57