ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/06/14 ついのべの日!
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彼女は月の光を食べる。焼きたてのパンに蜂蜜をたっぷり塗って月の下に翳すと、彼女は舌を少しだけ出して薄い唇をぺろっと舐めた。「今夜はレモン色の月だから、蜂蜜レモン!」と嬉しそうに口元を三日月に曲げてから、零れ落ちそうになった甘い蜜を、その赤い舌で受け止めた。 #twnovel
2012-06-14 21:58:13![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
実は自分は貴方の前世の幽霊なのだ、と半透明の男は告げた。確かに顎の辺りが似ている気もする。だが私は前世のことなど知らぬし、興味もない。第一目の前の幽霊が前世だとしたら、今の私の魂は一体何なのだ。胸に手を当てる。心音がひどく不確かに感じた夜明け前。#twnovel #twnvday
2012-06-14 22:09:12![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
妖怪のまどわぁかぁが現れた。店員の間に緊張が走る。のまどわぁかぁは店内を見渡し、ぺろりと舌なめずりすると、電源のある窓際の席に腰を下ろした。もうMacBook Airを開いている。「ご注文は」「珈琲」最も安い商品である。のまどわぁかぁは割引クーポンを取り出した。 #twnovel
2012-06-14 22:15:39![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
驚いたことに涙も出ないのだった。あまりにもあっけないので、誓った言葉をひとつひとつ思い出してみる。けれどそれは空虚な端切れになって意識の奥へ消えた。「終わりにしましょう」ああ、確かに終わってしまった。部屋には彼女のものが残っているのに、心には何も残らない。 #twnovel
2012-06-14 22:16:56![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
うちの庭には変な門がある。今日からお前が門番だよと母が鍵をくれた。門番って…と庭を見ると、いつの間にか妖が立っている。驚く私に「お前が新しい門番か」と言った。そうだと答えると「ではあの人が私を見る事はもうないのだな」と母を見た。妖の目はなんとなく寂しそうだった。 #twnvday
2012-06-14 22:23:25![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
手のひらの中の機械はとてもちっぽけで、こんなものが私たちの交流を支えてるだなんて、百年前の人は想像もしていなかっただろう。「もしもし?」その言葉に救われる日もあれば、呪われる日もある。バイブレーションが机を振動させている。今日の運命は、どっちだ。 #twnovel
2012-06-14 22:25:02![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「文芸部部長、何を描いているんだい?」美術部部長が生徒会室に来ると珍しいことに文芸部部長が絵を描いていた。無言で彼が絵を見せる。「妖だ」呟く美術部部長の背後で生徒会長が絵を覗き込み、感想を率直に言う。「絵、下手なだけでしょう。これ花瓶ですよ」 #twnvday #twnovel
2012-06-14 22:26:16![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
#twnvday #twnovel 屋根裏に古い鏡台があった。引き出しを開けると、口紅が一本転がっていた。錆びた銀色の蓋を取り、残っていた紅を唇にのせた。顔を上げると鏡に赤い口が映る。突然、赤い口がにたっと笑って言う。「お前の口、もらったよ。」驚いて叫んでも、もう声が出ない。
2012-06-14 22:27:51![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
#twnvday 鏡を覗くといつもソイツはそこにいる。卑屈な目で俺を見つめている。そして、こんな醜い姿で生きる事を赦してくれと乞うのだ。俺は訳も無くソイツが嫌いで仕方がなくて、ある日とうとうソイツを手にかけてしまった。誰も映らなくなった鏡を見た時初めて、俺はその妖の正体を知った。
2012-06-14 22:31:03![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
#twnvday #twnovel そいつは皮膚のすぐ下を這いずり回る。腹の周りはまだましで腋の下に来ると最悪。背中は余りの痛みに悶絶する。内部から聞こえる笑い声に「他人の身体に住みつくな」両手で捕まえようとした。「いいぞお前の腹を破って出てやろう」腹の皮がメリっと音を立てた。
2012-06-14 22:32:42![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
その絵師が独自の朱で描く妖しい絵は現し世と夢の狭間。決まらぬ巫女姫を描くために幾人もの女を抱いたが、どの女も絵師を満足させない。現の女では満足出来ぬかと自嘲して、酔った背後に転がっていたのはどこから落ちたのか、巫女装束の女。 色を失った肌に唇だけが紅かった。#twnvday
2012-06-14 22:33:11![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
#twnovel こんにちは。私あやかしですが。済みません、あの、ここはどこですか。ネット?電子の海?電子って何ですか。雷様の親戚ですか。一番小さくばらばらにしたもの?怖いね。それで、ちょいと潜みたいのですが。実名制?あからさまな。も少しもやっとしたいのですが。 #twnvday
2012-06-14 22:36:56![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
#twnovel 携帯電話が着信音を鳴らすのを夢見心地で聞いていた。面倒だから居留守を使おう。そう思っていると妹が勝手に電話に出た。「もしもし。こんにちは。ああ、兄ですか。兄は私の隣で寝ていますが」僕は跳ね起きて妹から携帯電話を奪い取った。妹を睨みつけてから電話の相手を確認する。
2012-06-14 22:39:07![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
パリポリパリ。誰かに決められた好物なんてちっとも美味しくないぞ。おや?他にも何かあるようだ。どれどれ~ #twnovel 帰宅すると、冷蔵庫が開けられていた。なくなっていたのは、キュウリとビール・・・だけ。ふ~む。なんとなく床が濡れているのは気のせいだろう。 #twnvday
2012-06-14 22:46:34![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
#twnday 孤独な老女の家はゴミ屋敷。町内会の有志が強制的に掃除しても、1週間後には元に戻ってしまう。「きれいにしたら友達がいなくなっちゃう」彼女の言訳の意味を理解できる者はいなかった。「また住みやすくなったよ。アカナメちゃん、天井なめちゃん、出ておいで~」#twnovel
2012-06-14 22:49:18![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
#twnvday 空木の白い花がほろほろと降る。生暖かい風を纏った女が、紅い唇を横に引いて笑った。こちらへおいでと誘うような手つきに吸い寄せられ、一歩踏み出そうとしたその時に、足元の地面が消えた。駄目よ、気がついては。崖の端から、すうっと消える女
2012-06-14 22:54:08![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
絵師は巫女装束の女を転がした。むき出しになった鎖骨の妖しい色気に手が伸びる。刀も絵筆も操る猛々しいその手が女の首を辿り、頬を撫ぜ、その唇に触れると、絵師の親指に女の付けていたらしい紅の色が移る。絵師はその親指をぺろりと舐めた。絵師の口元が笑みの形に歪む。 #twnvday
2012-06-14 23:08:51![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
なめくじおばけはこの星に生命が生まれる前からずっといた。遠い昔に別の星からやってきて帰れなくなったのだ。なめくじの呪いでこの星には塩がない。それなのに僕は時々、しょっぱいものが食べたいなあと思う。しょっぱいものの事を考えると、おばけがやってくる。#twnovel #twnvday
2012-06-14 23:17:14![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
#twnvday 自慢じゃないけど男には不自由してない私。その私があろう事か好きになったのはそれまで見下してきた相手。水に流して貰おうと手作り弁当を手渡すと、彼は受け取ったまま固まった。そんな幽霊にでも出会ったような顔をしてないで、一口食べてみて頂戴。料理に想いを詰め込んだから。
2012-06-14 23:21:33![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
満月の下をはしゃいだ声が転がっていく。「大好き」「僕も。けど」携帯を握りしめる背中へ近づいた。「可愛い尻尾が見えてるよ」びくりと振り返る少女の足元に揺れる二股の尻尾。「だんだんだーれが」封魔の札を見つけたその瞳が凍る。「見っかった…さよなら」 #twnovel #twnvday
2012-06-14 23:22:39![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
種子島宇宙センターからH-IIBロケット打ち上げが成功した。宇宙ステーション補給機「こうのとり」は、着実にミッションを重ねていた。変わった事と言えば、衛星周回軌道で夜の側に入る直前。人知れず、衛星「あやかし」が離れる。何号なのかも誰も知らない。 #twnvday #twnovel
2012-06-14 23:26:31![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
自分でも気づかぬ間に狐を嫁にもらってしまったらしい。隣で幸せそうに寝息を立てる嫁にはふさふさな耳としっぽが生えている。気が緩んだのだろうか。俺は意を決して耳を食んでみた。「ひゃう!? ひどいです、責任とってください」一生離れないのが責任らしい。 #twnvday #twnovel
2012-06-14 23:30:08![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
ある日、朝起きるのがひどく億劫になり、日没後でないと起き上がれなくなった。漸く床を抜け出し町へ出ると、会う人はみな悲鳴を上げて逃げていく。日常に追われて感情が摩滅しストレスを溜めるうち、どうやら人ではないものになったらしい。そう理解したとき、涙が零れた。#twnvday
2012-06-14 23:31:48![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
すねこすりは困っていた。いつもならご飯をくれる時間なのに家主がまだ帰ってこない。最初の内こそ我慢の良い子で待っていたのだが、どうにもお腹が空きすぎた。冷蔵庫を開けようにも扉は重く、戸棚は高くて届かない。悔しいから今日は玄関まで出迎えてやらない。 #twnvday #twnovel
2012-06-14 23:37:55![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「あの猫耳は動くらしいぞ」ただのかぶり物では無いのか。物の怪とはまさしく彼の事だろう。前代未聞の忌まわしい出来事に、皆は危機感を覚えていた。「大変じゃぞ」鬼火がぐるぐると廻りながら飛び込んで来た。「今度はキツネ尾じゃと」なんと、それも動くのか。 #twnvday #twnovel
2012-06-14 23:40:06