ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/06/18

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
0
くさがみ•R•シン @kusagamirin

#twnovel 上昇する軌道エレベーターの中で溜息をついた。本当は月面での土方工事なのに「金星に栄転だよ」などと嘘を付いてしまった。もう彼女に合わせる顔がない。「後で見て」と別れ際に貰った手作りのお守りを開く。『月ウサギさんへのお土産を忘れたら駄目だよ、見栄っ張り屋さん?』

2012-06-18 00:26:59
あQ (CTT) @aquall

#twnovel これはいわゆるミステリ小説で言う所の『嵐の孤島』『雪の山荘』である。外界から閉ざされたこの場所で、私達は最後の一人に、いや、誰もいなくなるその時までここに閉じ込められたのだ。食料も何時まで保つか。船を作る者達の成果も上がらない。私達は足掻く。地球という檻の中で。

2012-06-18 01:02:48
wacpre @wacpre

目覚ましの音が響く。寝過ごしたかと、慌てて時計を見るが、どうも早すぎる。機械仕掛けでズレることはないはずなのに。まぁいい、気にせずにもう一眠り... #twnovel 音に驚き慌てて止める。やれやれ、寝ぼけて再生ボタンを押してしまったようだ。目覚ましの中の小人も大変なのだ。

2012-06-18 01:11:16
Cal Que El Lulu-rain @senzaluna

村では憎悪怨嗟を忌み子に集め、延々虐げることで集めたものを子の中で純化させた。純化したものが子の体から溢れるかというところで都に献上。献上された忌み子は術を施された後、人柱として都の重要拠点に生きたまま埋められたという。「そう、今あんたが立ってる、そこ、とかな」 #twnovel

2012-06-18 01:28:48
N @N_write

「昨日火星にいってきたよ」「へえ火星に、どうだった」「君の望むような言葉は見当たらないかもしれないね」「火星に言語はなさそうだ」「ただ砂がとても細かくて素晴らしかった、すくった掌から躰の中に沁み入るようだった」「犬はいたかい」「冷めたパン・ケーキならあった」 #twnovel

2012-06-18 03:32:21
浅葉積木 @tsumiki_a

#twnovel これはその昔に祖父が家に憑いた妖と契約したのだという。 年に一度、まんじゅう五個を供えれば、家の中でしゃっくりが出た場合に限ってこっそり驚かせてしゃっくりを止めてくれるらしい。以来我が家ではしゃっくりが三回以上続いた者はいない。…まあ妥当な供え物なのだろう。

2012-06-18 07:06:03
すなお @Svnao

#twnovel シンデレラは12時に帰らない。筋書き通り動く事に飽きたのだ。魔法が解けようが王子を籠絡する自信はあった。しかしベッドの上で王子の碧眼を覗き込んだ瞬間、違和感を覚え飛び退る。「貴様魔女か…!」「ガラスの靴、落として行って貰おうか」姫は今日も筋書きから逃れられない。

2012-06-18 10:45:35
hypo- @hypohyphen

#twnovel 「先生花壇を掘ったら死体が出てきました!」「どれどれ。ああ、やっぱり…これは教頭先生の抜け殻だよ。なかなか土に帰らんものだね。ははは、びっくりしたかい」「ほっとしました。てっきり死体だと」「教頭先生は五回脱皮を繰り返して校長になる。覚えておきなさい」「はい!」

2012-06-18 14:00:37
七歩 @naholograph

「あかちゃんはどうして可愛いの?」コウノトリが尋ねた。「可愛くないと愛されないから」神様は答える。「あんなに泣かないようにすればもっと愛されるんじゃない?」そしたら虐められたり捨てられたりしないのに。「出来るものならそうしてるさ」神様は器しか作れない。#twnovel

2012-06-18 18:35:07
【自主凍結】あずま@アカウント引っ越しました @azuma_yuyu

一番最初は「あ」だった。昨日は「と」。明日は「や」だろうか? 日に日に失われて行く言葉。たった一文字足りないだけで想いを伝えることがこれほど困難だと知った。あと何回アナタに伝えられる? 今日発した言葉を明日伝えられなくなるのが怖くて、隣りに眠るアナタにキスをする #twnovel

2012-06-18 21:02:33
藍 真史 @shin1960

#twnovel このおんぼろアパートはトイレも共同だ。しかも端っこの俺の部屋からは一番奥の突き当りにある。ようやくたどり着いて軋むドアを開けるとそこにトイレは無かった。正確に言うと床に便器が無かった。仕方なく引き返すと俺の部屋のドアが開かない。中から野太い声がした。入ってるぞ。

2012-06-18 21:09:33
木菟みるく @golddaybreak

「笑みとは何だ」笑みを知らぬ王は首を傾げた。「口元が上がれば笑みか。はははと声をたてれば笑みか」従者は誰も答えられない。そこで家来達を集め、みんなで笑って見せた。初めはみんなで微笑み合い、誰かが冗談を言って、爆笑した。すると王も釣られて笑ってしまった。 #twnovel

2012-06-18 21:11:05
miecha @miechorz

#twnovel 死なない男が居た。砕いても溶かしても燃やしても死なない。ならば消化させようと、細切れにして狼の餌にした。男を食べた狼達は共食いをし、生き残った一頭が苦しそうに唸ると、その身を男の姿に変えた。「また……死ねなかったか」どうやら狼の存在を男の細胞が上書きしたようだ。

2012-06-18 21:28:33
銭喰 @zeniqui

#twnovel 村にもバスが通り、お地蔵様の前に「地蔵前」というバス停が出来た。しかしそれから、地蔵の向きがいつの間にか変わるようになった。悪戯とも思われたが、古老の指示でバス停を「地蔵横」に変えると動かなくなった。古老曰く「前は困ってる人のために空けときたかったんじゃろ」とか

2012-06-18 21:47:23
@westwaist

蛸は女達に飽きていた。判を押したように皆ぬらぬらクネクネしている。蛸は旅に出た。蛸壺を経由して陸に上がり、肌をピリピリと蝕む熱と風の中を這っていく。脱水症状で朦朧とする頭を上げると石榴の花が咲いていた。色鮮やかなスカートをまとった芯の強そうな姿。一目惚れだった。 #twnovel

2012-06-18 21:59:59
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 「木曜には帰るよ」手帳をみながら国際電話。ふと、妻が嬉しそうに付けていたカレンダーを思った。来なかった出産予定日。あれから彼女は予定を書かない。みんなダメになる気がするの。寂しい微笑に声がなかった。手帳に大きく印をつける。ほら帰ったよ、ぎゅっと抱いてそう言おう。

2012-06-18 22:04:28
すわぞ @suwazo

#twnovel 世界の果てに近い村に住んでいる。毎日、羊達と草原にゆく。草原は途中で崖になり、その向こうには何もない。虚無。世界の果てである。危なっかしいけれど羊は利口なので落っこちたりはしない。人はたまに落ちる。去年、上の姉が落ちていった。なぜ笑顔だったのだろうと時々考える。

2012-06-18 22:14:58
@tofuhamburg

助けたカメが竜宮城へ案内してくれるという。いそいそと背にまたがるとカメは海に――向わず急上昇を始めた。「大気圏突破まで揺れますからしっかり掴まってください」呆然とする俺にカメは「力場を展開しますから空気は大丈夫。ただ亜光速に達するため地球時間と少しズレが出ます」 #twnovel

2012-06-18 22:15:32
夢名 七志 @mumei7c

青空。遥か上空に、長細い平らな船底が見える。赤い棒。大きなタンカーだろう。波紋の雲を引きながら過ぎていく。軌跡に煌めくのは、泡立つ風に纏い付く魚の群れ。筋雲の先端を飾る微細の光沢。鯱が追う。震える風。積乱雲から霧笛が鳴っている。鯨の歌が答える。底は暖かく静かだ。 #twnovel

2012-06-18 22:18:48
@mimimdr

見習い魔女の私は動揺すると力が暴走してしまう。放課後の図書室、一緒に勉強してた彼のふとした笑顔に思わず教科書の文字を吸い込んでしまった。退屈な文からあ、な、た、が、す、き、が抜けて穴になる。どうしたの?という彼にな、ん、で、も、な、い、と返してこっそり穴を埋めた。#twnovel

2012-06-18 22:22:51
yosizaki @0Y0y0y00480

俺は悪魔と契約をした。願い事1つ叶えるのと引き換えに俺が死んだ後の魂をよこせっと悪魔は言う。俺は頭を働かせ「永遠の命が欲しい」と願った。死ぬことが無いなら魂は取られないからだ。だが思っていた永遠と違っていた。。今日も23614回目の今日を繰り返す #twnovel

2012-06-18 22:45:20
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 夜、自転車に乗っていた時のことです。目の前を黒猫が横切りました。黒猫が不吉だという人がいますがそんなのは迷信です。私は猫がスキです。猫かわいいよ猫。家と家の間の隙間を通っていく黒猫を視線で追っていくと…自転車が側溝に落ちて転んでしまいました。黒猫は不吉です。#百

2012-06-18 22:58:11
五郎 @makimura_goro

#twnovel 奇妙な夢を見た。厚みの無い男が風にそよいでいる。紙切れの男は泣いたり笑ったり気味が悪いくらいに賑やかだ。私は男を切って鶴を折った。一羽、二羽、三羽。千羽の鶴が折りあがった時、男は高い天に向かっていっせいに飛び立った。私はただ一人、男を見上げている。曰く不可解。

2012-06-18 23:33:12
水木ナオ @nayotaf

#百 駄菓子屋前で、男の子が人差し指と親指をてちてち、付けたり離したり。その指先からふい、と白い煙が。あ、お化け煙か。真似して指をてちてちと。ふい。煙が出た。あれ、指が消えた。てちてち、見えない指はそれでも止まらず、煙はふいふい立ち上り、体はするする消えていく。 #twnovel

2012-06-18 23:58:26