ウィルコム「HONEY BEE」開発のコンセプト

sattakさんによる、ウィルコム向けPHS「HONEY BEE」シリーズ開発のコンセプトについてのつぶやきをまとめました。
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@sattak

かつて、ウィルコム内シェアが大きく下がった時に考えた「HONEY BEE」のコンセプトを考えた時も、これと同じ理由でした。 RT FTの紙はなぜピンク色?-ネットメディアがブランド化するために必要なもの by 田端信太郎 @tabbata http://t.co/TSSAXgoH

2012-06-19 10:39:47
@sattak

当時、ウィルコムではnico.や9といったCandy Barタイプの端末がシェアを伸ばしていました。そんな中、京セラはDDIポケットからの二つ折りの端末を投入していました。アンテナ感度や電波サーチなどを売りにしてシェアを獲得していた頃と比較すると、大きく数字を落としていました。

2012-06-19 10:42:48
リンク www.willcom-inc.com WILLCOM|nico.
リンク www.willcom-inc.com WILLCOM|9(nine) WS009KE 高い処理能力、快適な操作感、ミニマムコンパクトなデザインを採用したフルブラウザ搭載SIM STYLE
@sattak

京セラに転職して、あるプロジェクトを担当していた僕に「ウィルコム向けの戦略を検討せよ」と命令が下ったときは、すでに大きくシェアを落としていました。そこで、まずは実態を把握するため渋谷や原宿に出かけて、当時の主要顧客だった学生たちを観察しに行ったり、量販店に話しを聞きに行きました。

2012-06-19 10:44:54
@sattak

さらにインターネットでの声を拾ったり、nico.や9のユーザーを見つけたときはお声がけして話しを聞かせてもらったりして、ある特徴的な使い方があることがわかりました。それは「普段はケータイを手にして、コムは使うときだけ鞄の中から出す」というものでした。

2012-06-19 10:47:38
@sattak

その理由を聞いて僕は驚きました。「人前で使うのが恥ずかしい」。電波の利得を良くするために、当時の京セラのPHSはアンテナが付いていました。ケータイはすでにアンテナが内蔵になっていた頃で、それが〝ひと昔前のモノ〟感を醸しだし、使うのが恥ずかしいという意識を出していたのです。

2012-06-19 10:49:48
リンク www.kyocera.co.jp 京セラ | WX320K
@sattak

実際はケータイと同じようなポジションにというのが当時のウィルコムの戦略でしたから、そういうタイプの商品があるのは普通でしたし、電波感度やバッテリーの大きさという面でも、その方が有利であるのが当然だった認識だったようです。ところが時代は移り変わり、既に2台持ちが増えていました。

2012-06-19 10:52:46
@sattak

「2台持つ人にとって、同じような形をした、しかもひと昔前(と認識される)デザイン」がシェア低下の理由ではないかと仮説を立て、もう一度ウィルコムのユーザー属性を調べたところ、やはり若年層が急激に増えて、ケータイと一緒に持つ通話専用端末になっていることがわかりました。

2012-06-19 10:55:02
@sattak

まだW-ZERO3が話題の頃で、京セラとしてもこの急激なユーザー属性の変化を把握しきれていなかったのです。そして当時は「京ぽん」と親しまれていたウェブブラウザ搭載のPHSが京セラの看板商品で、一定の支持を得ていたので、ある種の成功体験が実態把握を遅らせていたかも知れません。

2012-06-19 10:57:12
リンク www.sharp.co.jp W-ZERO3シリーズ:シャープ
@sattak

市場把握を終え、今度は競合分析に入りました。なぜnico.や9は人気なのか。当時の常識でいえばCandy Barはケータイの元祖の形で、NECを中心に二つ折りが全盛だった世界では、それこそ古くさいデザインのはずでした。そこで調査やインタビューを繰り返して、一つの理由を発見します。

2012-06-19 10:59:43
@sattak

それは「持ちやすい」「軽い」ということ。今でこそ当然のように知られていますが、コムの使い方は〝話し放題〟がメイン。繋ぎっぱなしにしてお互いに何かをしつつ話す、というそれまで考えたこともない使われ方をしていて、だからこそより小さく、軽く、手に収まりやすいものが求められていたのです。

2012-06-19 11:02:00
@sattak

そうとわかれば、京セラとしてもこのカテゴリーに参入しないとシェアがさらに下がってしまうので、この競合に対するSWOT分析をしました。強みと弱みを把握し、あるべき姿を導き出します。そこで一番気を遣ったのが「大きさ」と「色」でした。機能やどのデバイスを使うかということよりも、です。

2012-06-19 11:08:36
@sattak

僕が技術側に提示した条件はこれだけです。nico.より大きく9より小さく、そして角は耳が痛くならないようにRを付けて。イラストレーターで具体的な大きさ、厚さを定義した図を作り、あとは「メールがあればいい」「カメラはいらない」。この3つだけを会議の場で示しました。

2012-06-19 11:11:53
@sattak

まだ京ぽんの次号機が望まれていた時代です。「そんなものが本当に売れるのか」「ブラウザがなくて本当にいいのか」と、疑問の声が次々に上がりました。それにマーケットの現状、ユーザーの実態を説明して理解をしてもらえて、統括部長の「まずは検討してみよう」の声で話しはまとまりました。

2012-06-19 11:15:15
@sattak

技術部門をまとめるPM(Product Manager)は大変怖い人で、あまり気分も良くなさそうでした。「まいったなぁ、怒ってるなぁ…検討してくれるかなぁ」と戦々恐々としていましたが、しばらくして「これならどうだ?」と、機構設計の検討図を持ってきてくれたのです。びっくりしました。

2012-06-19 11:17:11
@sattak

「大きさはあなたの言うとおりに収まりそうだ。でもブラウザは落とせない」。コストを安く抑える必要があったので、京ぽんモデルのソフトを流用したため、ブラウザは搭載されることになりました(ブラウザを落とした方が安く作れると思ったが、逆に落とすことに工数がかかりコストになるため)。

2012-06-19 11:19:37
@sattak

そして最後にデザインです。ここはコンセプトはもう決めていました。シェアを獲得していた先行の9は白と黒のシンプルさが売りでした。そしてnico.は丸いパステルカラーのボタンがポイントでした。そこで提案したのが「ビビッドカラー」。9が無印良品なら、こっちはフランフランだ…と。

2012-06-19 11:23:21
@sattak

そこにはこういう目的がありました。「使うときだけ鞄から出す端末ではなく、いつも手にしてもらえる端末にしよう」「話す友達を増やすために、誰がコムを持っているかわかるように、一発でわかるカラーにしよう」。僕はコンビニでGATBYのワックスを買って、デザイナーのところに行きました。

2012-06-19 11:26:23
@sattak

ようやくFTの色がなぜピンクか、という話しとリンクしますが(すみません)、こんなことを話すとデザイナーも「僕もこれみないなものがいいって思ってて」と、シリコンの質感のLEXONのラジオの写真を見せられました。くしくも思いは一致。大きく実現に向けて動き出した瞬間でした。

2012-06-19 11:30:43
@sattak

別の女性デザイナーが考えた「HONEY BEE」というネーミングも同時期に決まり、技術側に提示。また大きな〝反響〟がありましたが、また良い意味で期待を裏切って「アンテナがかっこ悪いっていうから内蔵にしたけど、感度は9やnico.に負けないぞ」と、技術の意地を見せてくれたのです。

2012-06-19 11:32:35