ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/06/20

@klei0

帰り道で図書館を拾った。 帰宅して濡れそぼった身体をタオルで拭いてやり、古新聞を与えると、もそもそとつまらなさそうに食べた。好きではないのかと思って取り上げようとすると、嫌がって離さない。図書館はどういう食べ物を好むのだろう？次の休みにでも図書館で調べてこよう。 #twnovel

葦沢かもめ @AshizawaKamome

遂にヒトも、蛹化ホルモンを注射することで蛹になれるようになった。やがて蛹を経たヒトの方が優秀だと噂されるようになったが、その真相は極めて単純だ。昆虫と同じように、蛹になると体中のほとんどの細胞が作り変えられる。つまりは汚れていない状態に戻るだけなのである。 #twnovel

茶屋 @chayakyu

台風は結局来なかった。一説には事象の地平を超えてしまったのだとか、家忘れ物を取りに帰ったとか言われている。一部の気象学者はそもそも台風など存在しなかったと言い、精神学者は集団ヒステリーだと便乗する。ブラジルの蝶が羽ばたかなかったようだというのが桶屋の見解である。　#twnovel

すわぞ @suwazo

#twnovel 熊は穴の中で冬眠している。世界が滅びたことを熊は知らない。熊は穴の中で眠る。世界が滅び熊の穴だけが残ったことを熊は知らない。熊は穴の中で春の夢を見る。ほんのわずか生き延びた世界の魔法が熊の穴に逃げ込む。熊の夢に縋る。虚無の底にちっぽけな春が蘇る。熊がめざめる。

min @37a_

#twnovel モンキーは他の奴らとちょっと違う。バナナには目もくれず群れから離れて独り、空を見上げる。雲だけがモンキーの心を躍らせる。イマジネーション。それさえあれば大丈夫。バナナの皮でスベって転べば奴らが笑う。それでもモンキーは頭を搔いて、空を見上げる。今日も雲が流れてく。

tamaki🌻ⒾSF11 C-39 @tamaki_okia

自転車が喋らなくなってからどれほど経つだろう。長い旅に疲弊してきた私は感傷的な手つきでハンドルを撫でる。もう君に言葉はないのだろう。君の魂はもうどこかに行ってしまった。けれども今でも、君は私の胸にある。そう、ここにある。だから私は、この自転車に乗って旅を続ける。 #twnovel

日向日影🍊📖@文化系物書きVtuber（HUB） @hyuugahikage

#twnovel 神童と呼ばれ、一流大学に入り、古文書解読の第一人者になった。今はその全てが憎い。何年もかけ解読した予言。書かれていたのは世界の破滅。その日付は明日。よりによって僕だけが世界最後の朝だと知る、いつもと変わらぬ夜明け。今日をどう生きるべきか予言には書かれていない。

くさがみ•R•シン @kusagamirin

#twnovel ワインより美味しいものがあるか魔女に聞いた。あるよ。魔女は答えた。これがそうさ。試してごらん。これは美味い。香りといい舌触りといい確かにワインとは比較にならない。それは人の溜息を魔法で蒸留したものさ。他人の不幸は蜜の味って言うだろう？ 魔女はニンマリ笑った。

しーな@GO2完走 @xsheeenax

大人になれば何でも手に入ると思っていた。でも、何故か君だけはこの手に掴めないということを知った。何度逢瀬を重ねても、つないだ手は朝にはほどけてしまう。「好きなだけじゃだめなの？」と何度も君は問う。答えられずにキスをひとつ。大人になればなる程、恋をするのは難しい。 #twnovel

あまたす @amatasu

部屋でテレビを見ていると、突然砂嵐が映った。次の瞬間、砂嵐は画面を飛び出した。本棚を、冷蔵庫を、机を。砂嵐は部屋のありとあらゆるものをその体内に巻き込んでいく。そして最後にテレビを巻き込むと、消えた。そこで目が覚めた。私は家具もテレビもない部屋で、床に寝ていた。 #twnovel

七歩 @naholograph

台風は通り過ぎ、うってかわって今朝は清々しい青空。「先ほどは家内が失礼致しました」青空は微笑む。浮かんだ雲たちはぴょんぴょん跳ねて「ママがごめんねーママがごめんねー」可愛く愛想を振りまいた。つまりだ。これが俗に言う、台風いっか。僕はぽかんと口を開ける。ま、いっか。#twnovel

銭喰 @zeniqui

#twnovel 魔女のおばあさんが最初に教えてくれた魔法は「おやすみなさい」。目を閉じ唱えたら、闇の世界が全て夢になる。今は朝には解けちゃうけれど、いつかはきっと解けなくなる。何故ならおばあさんが最後に唱えた魔法も「おやすみなさい」。いつかこの魔法で、おばあさんに会いに行くの。

猫春雨＠ものがたる屋 @nekoharusame

見知らぬ男が私の病室を訪れてスツールに座る。「何かご用でしょうか？」予測が出来ない事態の対処に困っていると、どこからともなくタバコを取り出して吸い始めたではないか。そして私目がけて煙の輪っかを吐き出す。すると輪っかは私の頭上に浮かんで、男は白鳥のような翼を広げた。#twnovel

ておまさお @teomasao

夫がレーシック手術を終えた。「見える！ 今までぼんやりとしか見えなかったものが、はっきりと見える」「よかったわね」「ありがとう。看護師さん」「どうしたのよ。アタシよ。アナタの妻よ」「ふざけないで下さい。ボクの妻がこんなにブサイクなわけないじゃないですか」 #twnovel

竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 嵐の夜。骨折し、打ち捨てられた傘たちの恨み言。舞い降りた天使。「さあ、最後の仕事だよ」地に縛られた亡霊たちに恩赦の時が来た。夜空を見上げた者になら見えたかもしれない。傘を手に天に昇っていく老若男女の姿が。

芹沢文書 @DocSeri

「肉体部位を失ったことを認識できずにいるのが幻肢痛である。となれば肉体を全て失った時、人は幻の肉体とその痛みを認識するであろう。それが即ち幽霊だ」「では意識を失った肉体はどうなりますか」「幻の意識を得る。即ちズンビーだ」 #twnovel

みお @miobott

#twnovel ある日、神様は退屈しのぎにビー玉を水の上に浮かべてみた。ふうと息を吹きかけるとそれは風となり、小さなクシャミは海となる。手慰みに作った泥人形は命を持ちビー玉の上で愛をはぐくむ。やがてその青いビー玉は神様の手を離れ、惑星となった。後に神様はそれを奇跡と呼んだ。

@sakutukixxx

僕は雨の中、あの子のおかっぱ頭を探した。今日は紫陽花の柄の浴衣に藤色の帯という姿で、神社の鳥居の上で足をぶらぶらさせていた。「紗綾。大福食わないか？」声をかけると嬉しそうに笑んで飛び降りる。ぱくりと頬張る姿はとてもあやかしには見えなかった。 #twnovel #あやかし草紙

すなお @Svnao

#twnovel 野の花の中から男の子が私を選んでくれた時、嬉しかった。「好き、嫌い、好き、」小さな手にちぎられて、花弁が１枚１枚落ちていく。私の花びらは奇数枚だから、『好き』で終わるよ、大丈夫。恋の役に立って散れるのなら幸せだけど、本当は、きみがその相手へ贈る花になりたかった。

N.T.Works/凪司工房＠介護生活中 @nagi_tter

#twnovel 今日子さんはアフタヌーンティーをする。いつもより少し良いカップにお茶を注ぎ、お皿にケーキを沢山用意して。優雅な午後の空気を吸い込む彼女。「ねえ今日子さん。これってケーキじゃなくて鈴カステラだよね。それにこのお茶も普通の麦茶で」「二人で飲めば気分は英国風でしょ」

竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnvcon 漂着した無人島で男は図書館を発見した。蔵書は数十冊。男は貪るように読んだ。いずれも愛と冒険と孤独の物語。無人島で終わる物語。全てを読み終えた男は、自分で本を書き始めた。男が永久の眠りに就く時、新しい１冊が図書館に増える。#twnovel

いこ（伊古野わらび） @ico_0712

仏壇にある古びたボタン。祖父の位牌の隣に置かれたそれは、祖父が大切にしていた物だという。「戦場で手足を負傷した俺を担いで運んでくれた戦友の形見だ。あいつは結局戦場で死んで、途中退場した自分がおめおめ生き延びてしまった」祖父は悔し涙を滲ませながら生前語ったという。 #twnovel

碧 @mimimdr

交換留学で冥王星に来て半年。ホストマザーはホームシックになった私を百年前に太陽系の人が作ったという図書館に連れて来た。故郷を思い出すかい？と言われ、火星と地球は別ものなんだよなあと思いつつもその気持ちが嬉しくて、私は人生初の紙の本を手に取った。#twnovel #twnvcon

すわぞ @suwazo

#twnovel この国には至るところに階段がある。この国には階段しかない。東西南北上下左右、階段が迷宮のように入り組んで捻れ繋がり、時には回転や道別れや変形をしながら、どこまでも永久に続く。階段の世界の中に国がある。国の中に人々が暮らす。人々は人々の中にも階段をつくる。序列を。

雪月 @setugetufuka

突然車が話し始めた。お腹が空いたと言えばガソリン。入浴したいと言えば洗車。私たちはいろんな事を話した。ある日。一台の外車とすれ違った後。車が胸が痛いと言い出した。胸？ 胸ってどこ。慌てているとエンストした。私、恋をしたかも。車はそう言ってワイパーを一度動かした。 #twnovel