エロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐のモザイクを除かなければならぬと決意した。エロスには難しいことがわからぬ。エロスは、重度のネット中毒者である。ホラを吹き、ゲームで遊んで暮して来た。けれども何処とは言えぬが、人一倍に敏感であった。
2012-06-25 22:10:43きょう未明エロスは村を出発し、電車を乗り継ぎ、大分はなれた此の秋葉原の市にやって来た。エロスには父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な脳内の妹と二人暮しだ。この妹は、お兄ちゃんを大好きな設定で、これからも、ずっと一緒に暮らしていく事になっていた。ある意味 末期なのである。
2012-06-25 22:18:24エロスはそれゆえ、脳内妹を保管する資料を買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから歩行者天国をぶらぶら歩いた。エロスには竹馬の友があった。セクスンティウス(PN)である。今は此の秋葉原の市で、同人を売ってる。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。
2012-06-25 22:30:58久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちにエロスは、街の様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、街の暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、秋葉全体が、やけに寂しい。
2012-06-25 22:33:16のんきなエロスも、だんだん不安になって来た。路で逢った客引きのメイドをつかまえて、何かあったのか、二年まえに秋葉の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、場合によっては踊りも踊ってた筈(はず)だが、と質問した。
2012-06-25 22:35:32メイドは、首を振って答えなかった。しばらく歩いてコスプレの老爺(ろうや)に逢い、こんどは意図的に語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。エロスは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。 「万世橋の警官は、すぐに補導します。」
2012-06-25 22:37:59なんだと……おい。つか、完結まで書くの明らかに大変じゃないか! RT @honda_mosamosa やめた!!ひどい!楽しみにしてたのに!
2012-06-26 00:00:21「なぜ補導するのだ。」「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」「たくさん補導したのか。」
2012-06-26 00:20:06「はい、はじめは謎のCD-Rを売る商人を。それから、ホコ天で演奏する者を。それから、それに合わせて踊る者を。それから、コスプレイヤーを。それから、リュックを背負ったハチマキの男を。」 「最初はともかく、おどろいた。官憲は乱心か。」
2012-06-26 00:24:57「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、街の自治をも、お疑いになり、少しでも派手な格好をしている者には、カバンの中身を確認させろと命じて居ります。御命令を拒めば万世橋に連行され、社会的に殺されます。きょうは、六人殺されました。」
2012-06-26 00:25:55聞いて、エロスは激怒した。「呆れた組織だ。生かしておけぬ!」エロスは、単純な男であった。買い物を、背負ったまま(リュック)で、ボソボソ呟きながらホコ天を歩いていった。たちまち彼は、巡邏の警官に補導された。
2012-06-26 00:31:39[12] エロスは、万世橋警察署に連行された。 「この短刀(カッターナイフ)で何をするつもりであったか。言え!」 官憲オマポリスは静かに、けれども威厳をもって問いつめた。その官憲の顔は日に焼け、眉間の皺は、刻み込まれたように深かった。
2012-06-26 02:08:17[13]「――、秋葉原を官憲の手から救うのだ。」とエロスは目を逸らしつつ答えた。 「正気か?」官憲は、憫笑した。「仕方の無いやつだ。おまえには、我らの焦燥がわからぬ。」 「わからん!」とエロスは、恥ずかし気もなく反駁した。
2012-06-26 02:09:50