ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/06/30

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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咲良 潤 #言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

私は毎朝ミルでコーヒー豆を挽く。この時間も楽しむようにゆっくりとゆっくりと。細挽きにした豆にお湯を注ぎ少し蒸らす。その後二回に分けてお湯を注ぐ。香ばしい匂いが漂ってくる。でも私はコーヒーが飲めない。ただこの匂いを楽しむだけ。きっとあの人も同じ匂いを楽しんでるはず。#twnovel

2012-06-30 01:01:47
権田 @pg030712

認めてもらいたかったの。他の誰でもないあなたに声をかけてもらいたかったの。すきなの。あなたが誰のものでも構わなかったの。気まぐれにでも私に笑いかけてくれればそれでよかったのにどんどん強欲になる。私の存在をもっと強く意識して欲しくなったの。お願い。名前を呼んで。 #twnovel

2012-06-30 01:06:22
二月大笑 @unpeu_G

助けた天女を慰めるため極楽の花や鳥を描いてはよく似ていると誉められた。一番映えるよう配し極楽ノ図を描き上げる。懐かしがるかと思いきや何故か微妙な表情をする。「この実はこうは付かないしこの花は一緒には咲かない。なのに何だか不思議で素敵…」そして彼女は初めて泣いた。 #twnovel

2012-06-30 02:05:40
あまたす @amatasu

冬山で命を救ってくれた雪女と東京で同棲はまずかった。クーラーをつけても、彼女はどんどん溶けていく。そのうちに俺が体を壊した。高熱に苦しむ俺を彼女は抱きしめると、一瞬で水になり、部屋の畳に染みこんだ。以来、彼女は畳の中だ。俺は今日も畳にキスをして、会社へ出かける。 #twnovel

2012-06-30 04:00:31
木菟みるく @golddaybreak

天国旅館へようこそ!さあさ、長旅の疲れを、ゆっくり癒して下さいませ。まずはお風呂へ。その後はお食事です。お布団も最高級のものをご用意させて頂いております。お帰りは地上ではなく来世へ。もっとも明日目覚める頃には、今世のことなどお忘れになっているでしょうけど。 #twnovel

2012-06-30 07:57:20
しぃとろん @seatoron

花瓶に生けた芙蓉が、ぽんぽんと5つの花をつけた。翌日、花びらがぱっと散り、中から小さな鈴がころんと出てきた。その鈴を白い糸でつなぎ、玄関にぶら下げておくと、風も無いのに、涼しげな音をたてている。花瓶の中の芙蓉はまた花をつけた。今年の夏はきっと涼しく過ごせそうだ。 #twnovel

2012-06-30 08:55:53
とおる7th @windcreator

散歩を生業にしている。自分の足で一歩ずつ歩いていく。普段は見過ごしているものを、もう一度見つけていく。いつもなら通り過ぎるお店で、ほんの少しだけ贅沢なおやつを買ってみる。見慣れた風景を見直して、見違えるほど素敵に見える場所を探してみる。隣の君と、語り合いながら。 #twnovel

2012-06-30 09:47:50
ナコ@文学フリマ東京Q-01 @nakotic

足も太くなりました。体も大きくなりました。喧嘩では負けないし、ご飯も横取りされません。猫は川辺に帰ってきました。この橋の下で、段ボール箱の中でみいみい鳴いていたのです。夏草の匂いが立ち込め、流れる水がきらきらしています。もう子猫ではないのです。 #twnovel

2012-06-30 10:04:51
すわぞ @suwazo

#twnovel 病院で知り合った老人と賭け将棋をする。元殺し屋だという老人に、僕は勝ちをためては人を殺して貰った。僕をズタボロにして病室に縫い付けた奴らを一人ずつ。あとは僕自身を殺して貰っておしまい、のつもりなのに、今日はなぜか全く勝てない。老人が笑う。「俺ァ仕事は選ぶのさ」

2012-06-30 11:43:31
杉山 大祐 @doku_sho

最近髪が伸びたね。素敵だよ。シャンプー変えたみたいだけど、僕は前のほうが良かったな。そうそう、シャンプーが少なくなったので替えておいたよ、君が出かけてる間に。窓から入るのも大変なんだよ?いつか君が振り向いてくれればいいな。こんなに君を愛して、世話好きな僕を。 #twnovel

2012-06-30 13:11:47
layback @laybacks

最終ロケットに乗りそびれた男は絶望する。もう地球に帰るすべはない。男は駅のホームに崩れ落ちる。トンと肩を叩かれる。振り返ると赤い目が深く水を湛えている。タキシードを着込んだ白ウサギは男に同情しているようだ。今夜は家に泊まりなさい。赤い目が男にそう語りかけていた。 #twnovel

2012-06-30 14:38:51
@px170

隣の客はよく柿食う客だ。前の客も、後ろの客も。そして僕も――みんな、柿を食べていた。あるとき僕の頭にひとつの疑念が浮かんだ。「なあ、俺たちはどうして」 間髪入れずに隣の客が呟く。「考えるな。疑った瞬間、俺たちは終わりだ」 70億人の柿の咀嚼音が、惑星に木霊した。 #twnovel

2012-06-30 15:18:05
帆月 @hozuki_1173s

今夜は眠れない。彼が残業で、帰宅の時間が未定だからだ。私はクッキーを焼こうと思い立ち、寝間着のままキッチンに立った。寂しさがバニラの香りにとけていく。焼き上がりを待っていると、彼が帰ってきた。驚く彼に理由を話すと、彼は私の前髪を上げておでこに小さなキスをくれた。 #twnovel

2012-06-30 18:43:20
茶屋 @chayakyu

奇妙な夢を見た。そんなことはさておき、奇妙な人を見た。煤けたのっぺらぼうだ。ラーメンを食っていた。そんなことはさておき、サイレンの音が聞こえる。焦げ臭いにおいがする。関係ない話だが、今夜誰かが死ぬような気がする。それにしても豆腐はうまい。 #twnovel

2012-06-30 20:08:48
@ichijina

幼い少女が住む森に、巨人の女の子が迷いこんできた。少女は友達になることを条件に、出口までの案内を引き受けた。2人はすぐに仲良くなってその道程を楽しく過ごし、別れ際には再会を約束した。十年後、巨人は少女の元へやってきた。変わらず優しく微笑む顔には皺が刻まれていた。 #twnovel

2012-06-30 21:07:52
竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel「ドライブしない?」老婆にナンパされた。「車、ないです」「私が乗せてあげるんだよ」そう言って箒に跨る老婆。面白いので僕も跨った。「腰にしっかり掴まるんだよ。じゃないと転落死だ」皺だらけの顔に少女の笑みが浮かんだ。「1度やってみたかったのさ。2人乗りってやつ」

2012-06-30 22:37:07
みお @miobott

#twnovel 馴れ初めはかび臭い古本屋だった。そこで彼と私は出会った。無口な彼は私のことなど気付きもしない。悔し紛れに私は彼の気を引く。突いてめくって撫でて香って。それでも彼は小説の中でヒロインを救う事にご執心。私を見る事さえしないのだ。そして私は紙の表紙に涙を落とす。

2012-06-30 22:56:33
ゆい @yu_i_ta

おや、「おや」と書かれ始めた。見る間に「「おや」と書かれ始めた」まで書かれる。なんなんだ?僕は僕だというのに、一体誰が俺の思考をこんな文字にしてやがるんだ、と思ったそばから文字にされる。どうやら私は誰かに操られているらしい。証拠に、一人称まで変わってやがる。 #twnovel

2012-06-30 23:55:03
にゃおっく @_nyaok

#twnovel 月のない夜に月の唄を歌う。前世紀に月面で行われた科学実験の失敗によって月は破壊され、巨大な欠片が地球に引かれては次々と降り注いだ。海は潮汐を止め、一万メートルを超す新たな山が幾つも生まれた。そして世界地図は今のものに描き替えられたという。僕は月を見たことがない。

2012-06-30 23:58:33
夜川 @yorukawa_

急に願いを三つと言われても、はて、何を願うべきなのだろうか。ランプから現れた魔神を前に、私は腕を組んだ。お金には困っていない。健康にも恵まれている。しかし、だからと言って人に譲るには、勿体無い権利だ。考えた末に、こう言った。 「私が望むべきことを教えてくれ」 #twnovel

2012-06-30 23:59:06