ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/07/01

橘　颯 @so__w

理科準備室には甘い匂いが染み付いている。其処では初老の先生が内緒ですよと云い乍らカルメ焼きを振舞って呉れるのだ。甘い此れにはね、苦い重曹が欠かせないんです。幸せを大きくしようと思ったら憂鬱を恐れては不可ないよ。そう笑って、先生は今日も泣き虫の女の子達を甘やかす。 #twnovel

煌 @Hwannn2

あの子はお城から出たことないんだって。いつも太陽の光が射し込む窓辺で外を見てるの。羨ましそうに…どこか楽しげに。きっと、外の世界を想像しているんだわ。だからね、いつか教えてあげるの。あの子が外に出れたとき、芝生の暖かさや雨の冷たさ、海の広さ、雪の神秘さを。 #twnovel

アツコ @atsuko0077

#twnovel 山の麓の鬼婆は、白髪、シミだらけ。恐ろしい顔で、人を食ってしまう。じゃが若い娘の声で騙すけぇ、夜道で難儀しとる者は連れていかれ、宿を借りて、お陀仏じゃ。もし声を掛けて来る者がおったら「夜目で見えん。手を貸してくれ」と言うたらええ。手を見れば分かるでのう。 #百

たぶんすみか @alphald_

昔から貴方は分かりやすかった。今緊張しているのもそう、指と指が触れそうで、どうさりげなく過ごそうか考えてる。だってそんな関係はもう六年目。並んで座る貴方の方へ私は少し指を動かした。同じだけ、逃げる指。「もうそろそろよくないですか」私、ぎゅっと貴方の手を捕まえた。 #twnovel

いでゆのまち @ideimachi

#twnovel ナビを彼女の声に改造した。『50m先を右に』『次、左だよ』聞くたびに胸が疼く。声を残し、事故で逝った彼女。「ずっと一緒って言ったよね」え!? 操縦がきかない。 勝手に走る車は崖にむかう。「でも、もう忘れて」寸前で停まり、声は途絶えた。愛を誓った岬で、僕は泣いた。

碧 @mimimdr

橋守りの一族は千年の間、峡谷にかかる橋を守ってきた。15年前、谷の向こうから竜が攻めて来るまでは。戦の末、橋は壊れ竜も死んだ。15になる橋守りの娘は谷に向かう。橋も竜もないのに何をする、と哂う村人達から逃れ、娘は袖をまくる。父を知らぬ娘の腕には鱗が見え始めている。#twnovel

K @kei1008

最新の宇宙服には、頭頂部に長いアンテナが2つ。通称ウサ耳。幼い頃の僕は、兎の長い耳は宇宙と連絡を取る為だと思っていた。でも今、そんな1人の少年の夢が現実になる。「人類は新たな生命との交信に成功しました」月に降りた宇宙飛行士のウサ耳がピコピコ動く映像が流れた。#twnovel

七歩 @naholograph

恐いくらい真剣な顔で花火を見上げる君。「たまや～」屋号を叫ぶとか渋い。「かずや～」それは屋号では。「なおや～」震える声。君の頬に光る涙。「花火は弔いの意味もあるのよね？」頷く。「昔の恋を成仏させたい」そうだね僕も願ってる。次の僕との恋のため。花火がまた、あがる。#twnovel

はたなか茶 @cha_hatanaka

雨脚が強くなった。きみの右と、僕の左の肩がぬれる。別々の傘をさした。今度はきみの左と、僕の右の手がぬれる。手を解いたら、会話も解けてしまった。傘を閉じた。会話は戻らず。また手を繋ぐ。ふたり別々の雨に、けれど同時にぬれている。夏だね。きみの両の目が、僕を見ている。 #twnovel

ショウ @SHO_Y

今日はうるう秒があるから、普段よりも一日が長く感じるはずだ。帰り道、偶然幼馴染の後姿を見つけたので声をかける。「今日、一秒だけ長いって知ってた？」「なにそれ？」久しぶりに交わした会話。そのきっかけはたったの一秒。いつもより長い一日が、いつもより短く感じた。 #twnovel

竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 電柱の下の方に貼紙。しゃがんで見ると「迷い犬を捜して」といある。何でこんな見にくいところに？気がつくと周りに近所の犬達。繁々と貼り紙を見つめていた。そうか。犬に見せるためだったのか。間もなく迷い犬は発見された。情報提供犬はドッグフード１年分をＧＥＴしたという。

しーな@GO2完走 @xsheeenax

「誰にも内緒だよ」顔を離してあなたは囁く。私はこくりと頷くことしか出来ない。夜毎窓から現れる、秘密の恋人。朝になる前に消えてしまう、夢のような逢瀬。目が覚めればいつもひとり。私の中に燻る熱だけがあなたの残したしるし。 #twnovel あなたの正体なんて、知らないままでいいのよ？