東アフリカの牧畜民ダサネッチの戦争様式について

タイトルどうりです
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リンク jambo.africa.kyoto-u.ac.jp 京都大学アフリカ地域研究資料センター 京都大学 アフリカ地域研究資料センターのサイト。アフリカ研究の学術雑誌 African Study Monographs などを紹介。
@bukrd405

自分の銃を購入するのは整髪儀礼を済ませてからのことが多い。銃の所有率は約5割であるが、銃は互いに貸し借りをするので、ほぼすべての男性が銃を持って戦いに行くことが可能である。ふだん銃は家の中に置かれていることもあり、同じ家屋に暮らす未婚の兄弟は頻繁に貸し借りをする。

2012-06-29 08:22:11
@bukrd405

また年齢の近い世代組仲間が貸与し合うこともよくある。男性は銃を購入すると、まず数人の親しい世代組仲間を家に呼ぶ。そこで彼の母や妻がコーヒーを沸かすと、人々はそれを口に含んで家の中央に置いた銃に向けて「プスー」という音を立てながら噴き出し、「敵を殺せ」と唱える。

2012-06-29 08:28:30
@bukrd405

また小家畜を殺してその肉をともに食べながら、その脂肪を銃にこすりつけることもある。いずれの行為も、それがよく作動するよう祈願して銃への祝福を行っている。祝福を終えると、家の外に出て仲間が一発ずつ空に向けて実弾を放つ。この一連の過程を終えて初めて、その男性は銃を利用できるようになる

2012-06-29 08:30:56
@bukrd405

ダサネッチの戦場への行軍について。集落を出発した戦隊は、その途上で斥候を派遣して敵地の情報を収集する。斥候になるのは足が速くて敏速に行動する男性である。収集される情報は、攻撃対象となる集落の位置や出入口の場所、相手集団の成員数や家畜数、その防衛体制などである。

2012-06-29 08:36:20
@bukrd405

過去の戦争で水飲み場を防衛されて、のどの渇きのわまり戦果をあげられなかったことがあるため、水場の位置も重要な確認事項である。これらの情報に基づいて、戦いの経験が豊富な男性が中心となって、より具体的な戦略を決定する。

2012-06-29 08:52:19
@bukrd405

また夜中になると、人々はサークル状に座ってともに唄を歌い気分を高揚させる。攻撃対象となる集落やキャンプには、1~2日の行軍で到達できることがほとんどであるが、過去には片道5日ほど歩き続けてようやくたどり着いた例もある。

2012-06-29 08:53:50
@bukrd405

行軍中の食事について。ダサネッチでは兵站組織はまったくといっていいほど発達していない。戦いに行く前の集落では、人々は普段と同じようにミルクやモロコシを摂取するだけである。

2012-06-29 08:58:07
@bukrd405

行軍中に口にするためのゆでたモロコシをバター入れに入れて持っていくこともあるが、量は一食分程度のわずかなものである。またバター入れが行軍の邪魔になるので持っていかない人のほうが多い。野生動物が豊富な地域では、敵に銃声を聞かれる恐れがない場合、行軍中に狩猟をしてその肉を食べる。

2012-06-29 08:59:18
@bukrd405

ダサネッチによれば、成人男性が戦いへ行くことは「男子の月経(ir mayab)」である。つまり、女性が性的成熟を迎えれば必然的に月経を迎えて定期的に血を流すように、男性も性的に成熟すると、繰り返し戦場に出向いて血を流すことになる。

2012-06-29 11:17:12
@bukrd405

ダサネッチ社会では、戦いに関連する嫉妬(inaf)は二つある。一つは敵に対する嫉妬である。ダサネッチは、平和時にはしばしば近隣集団の成員と共住して家畜を放牧する。その際に相手が自分より多くの家畜群を所有していたり、

2012-06-29 11:41:50
@bukrd405

(承前)その家畜が自分たちのものより肥っていたりすることを目にすると「嫉妬が入りこむ」。もう一つの嫉妬はダサネッチ同士の嫉妬である。過去の戦いで多くの戦果をあげた男性は、戦場での自分の勇敢さについて誇らしげに語り、それを聞いた周囲の人々は感嘆の声を上げる。

2012-06-29 11:43:07
@bukrd405

そのような場面を目にすると、まだ戦いに行ったことがない若者や過去の戦いで語るべき戦果をあげられなかった男性には「嫉妬が入りこむ」。とくに同じ年齢組の仲間が敵を殺害した場合には、強い嫉妬を抱くといわれる。

2012-06-29 11:44:35
@bukrd405

「嫉妬が入りこむ」と男性は自ら戦果をあげることを望むようになる。このような嫉妬が生じる背景には、敵の家畜を略奪したり、その成員を殺害した男性を「勇敢な男(maa nyare)」として称賛する言説や文化装置が存在している。

2012-06-29 11:47:24
@bukrd405

殺人に関しては174人の成人男性中、18%が過去の戦いで敵を殺害した経験があった。ダサネッチには、敵を殺害した後になされる儀礼的手続きがある。まず殺害現場で、ともに戦場に出向いた一人の仲間に死者の胃のあたりを槍やナイフで一突きしてもらう。これによって相手の死を確認する。

2012-06-29 11:54:21
@bukrd405

次にこの仲間とともに死体を仰向けにして手を万歳状に広げ、頭が西側を向くように置く。ダサネッチにおいて西側は太陽が沈む死の方角だとされる。さらに死者が身に付けていた腰巻や靴、装身具、銃などを奪う。

2012-06-29 11:56:59
@bukrd405

これらの行為はいずれも、自分が「本当に敵を殺したこと」を示すための証拠作りをその主な目的としている。証人や証拠がなければ、その殺害は「正式な殺人」として他の人々から認められず、集落に帰った後になされる儀礼を行うこともできない。

2012-06-29 11:58:54
@bukrd405

激しい戦闘が展開しているときにはこの手続きをする余裕がないが、その場合も「正式な殺人」とは認められない。敵を殺害した男性は集落に帰還すると、女性たちから首にたくさんのビーズをかけられ、彼女たちが唄う「勇敢な男」を称える歌によって迎えられる。

2012-06-29 12:00:41
@bukrd405

集落に入ると殺害者はまず母親の家へ向かう。母親は家の前で彼を出迎え、冷水に浸したソンテで息子の体を洗う。これは「敵の血を洗う」と呼ばれる。また殺害者は、殺害した相手が有していた銃や装身具を近しい人々に分配する。

2012-06-29 12:03:51
@bukrd405

家畜は親族が主な分配相手だったのに対して、これらの道具は年齢組仲間や「敵の友(lil-match kiziet)」も主要な分配相手となる。「敵の友」とは、戦場で死体に対する処理を手伝い殺人の証人となってくれた男性のことである。

2012-06-29 12:05:07
@bukrd405

@jonathanohn タイトルですが、「ダネチッサ」ではなく、「ダサネッチ」です。ソースは、『暴力と歓待の民族誌 東アフリカ牧畜社会の戦争と平和』(佐川徹、昭和堂)http://t.co/vTiMKRsFです。

2012-07-03 20:31:41
リンク t.co 暴力と歓待の民族誌 - 株式会社昭和堂 暴力と歓待の民族誌詳細をご覧いただけます。