ついのべ集 - 性的嗜好シリーズ
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ichigenkin
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こと
@ichigenkin
彼女は嫌われていた。部下のどんな些細な失敗も、鵜の目鷹の目で見つけて叱りつける。そんな彼女がある日死んだ。部下は仇とばかりに彼女の机を漁った。彼女の業務手帳は、部下を深く想っていた。誰もが泣く中、彼女の上司が言った。あれは病気だったのだと。彼も泣いていた。 #twnovel
2010-07-05 14:55:47
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@ichigenkin
私たちはスピリチュアルなカップルだった。けど付き合い始めて五年間、ついに「一緒に寝よう」と彼が言ってきた。私は四年間取っておいたかわいい下着を着けて、約束の日に彼の家に行った。彼と私はぴったりとベッドで寄り添って眠った。とても情熱的な時間を過ごした。夢の中で。 #twnovel
2010-07-05 15:11:52
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@ichigenkin
彼女は何年もの間、ナンバーワンを維持していた。誘われた回数が手足の指の数の何倍を数えようとも巧みに避け、決して夜伽には付き合わない。清廉な彼女は巧みな会話で男を惑わせ、決してへまなどしなかった。彼女がもし本物の彼女だったなら、一夜二夜の過ちはしたかもしれないが。 #twnovel
2010-08-08 02:52:26
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@ichigenkin
嗚呼君は繊細に舞う桜のようだ。誇り高く咲く向日葵のようだ。圧倒的に染め抜かれる紅葉のようだ。高潔に落ちる椿のようだ。彼は妻に逃げられ、家族に縁を切られ、狂人と囁かれても、彼女を愛し囁き続けた。いつの日か神が、このビスク・ドールに魂を吹き込んでくれると信じて。 #twnovel
2010-08-08 03:09:26
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@ichigenkin
彼女は何故警察に捕まらないのか。誰もが不思議がった。ある女性は彼女を不気味だと言い、ある幼い子を持つ父親は彼女が近所に住んでいることを嘆いた。彼女は人間を嫌って家に閉じこもり、美しい死体だけを愛していた。精巧で、腐ることもない、目にガラス玉を嵌めた死体を。 #twnovel
2010-08-30 01:27:29
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@ichigenkin
あかいくつ。お母さんに初めて読んでもらったおはなしに、私はすっかりはまりこんでしまった。私はお母さんにせがんでダンスを教えてもらった。私の生きる道は、ダンスが全て導いてくれた。同じように私の死ぬ道も、ダンスに導かれてしまった。お葬式で踊ってしまったために。 #twnovel
2010-08-08 03:19:48
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@ichigenkin
お母さんのおなかの中。生まれた日。歩き始めた日。箸を持てるようになった日。初恋の日。ファーストキスの日。私たちは何もかも同じだった。私に女の印が表れた日、それから目を逸らすように、私たちは初めて体を重ねた。過ちに気付くのは十ヶ月の後。異形の赤子が生まれた日。 #twnovel
2010-08-08 06:40:54
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@ichigenkin
俺の彼女には困った癖がある。酒に弱い上、酔うと必ず脱ぐのだ。だからなるべく酒は飲ませないようにしていた。しかし飲みさえしなければ気立てのいい彼女と俺は婚約をした。双方の親も認めてくれ、互いの親を交えて宴会をした。その日に俺は初めて知った。彼女は蟒蛇だったのだ。 #twnovel
2010-08-30 01:36:29
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@ichigenkin
鬼さんこちら、手の鳴るほうへ。お姉ちゃんはこの遊びが好きだった。けど、目隠しするのはいつも僕の方。どうして僕ばっかり目隠しするの、って言ったらお姉ちゃんは怒って、じゃあ私がするって目隠しした。頼りないお姉ちゃんの手を握って、僕はどうしようもなく嬉しくなったんだ。 #twnovel
2010-08-30 01:47:05
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@ichigenkin
娘が婚約者を紹介すると言いだした。とても大きく、優しくて、娘の話をよく聞き、励ましてくれるのだという。娘の選んだ相手に悪い相手はいないだろうと、娘を先だって彼の元へ向かう。娘は誰もいない広場に立ち、一本の巨木を抱きしめ、「彼」を見上げた。ねえ、ママに挨拶して。 #twnovel
2010-08-30 21:48:26
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@ichigenkin
ある日突然、告白された。とてもカッコいい人。私は彼に好かれるために必死でお化粧して、お洋服も整えて、それから彼のことを知ろうと努めた。けど、一年の記念日に私は振られた。何か問題があったのと問う私に、彼は泣いた。僕は君のことを、知りすぎてしまったんだ。 #twnovel
2010-08-30 21:52:54
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@ichigenkin
俺にはこれからの一生を添い遂げると誓った女がいる。決して浮気をせず、決して俺以外の男と褥を共にしたりせず、ずっと可愛く、俺に愛してると言ってくれる。この間旅館へデートにも行った。最高の夜を過ごした。ただ唯一の問題は、ディスプレイから出てこないことだ。 #twnovel
2010-08-30 22:16:45
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@ichigenkin
会社でも長身美形で有名な彼は、しかしその珍妙さも知れ渡っていた。幼女しか愛さないのだ。ただ別段変なことはしないため、早くいい嫁さん捕まえて子供産めばいいのに、と囃されていた。けど、そうじゃない。私は彼に告白されて、それを悟った。社で一番背が低い、老け顔の私に。 #twnovel
2010-08-31 15:40:33