ついのべ集 - 性的嗜好シリーズ
- ichigenkin
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少女の目の前には、全く同じ顔の少女。話しかける少女に、もう一人の少女も応えて忙しなく手を動かす。大好きよ、少女はもう一人の少女に囁き、二人は触れるだけの口接けをした。少女が呼ばれ、慌てて踵を返し部屋を去る。部屋には鏡だけが残っていた。 #twnovel
2010-02-01 00:44:57彼は自分の穴だらけのテーブルに代わり、彼女を宝石の輝くテーブルに、黄金の眩しい椅子に掛けさせた。自分のぼろ切れに代わり、彼女には星空のように輝く服を着せた。ある日はエメラルド、ある日はルビーのようだった。彼は彼女を愛していた。二度と息をすることのない彼女だけを。 #twnovel
2009-11-07 23:50:56鋭い瞳の女性にそぐわない、可愛らしい飴が揺れる。彼女は仕方ないわとほほ笑みながら、ひっくり返って泣く子供の口に飴を入れた。子供はあっさり泣き止み、向日葵のように笑って女性の手をぎゅっと握る。女性は子供の手を優しく引いていく。子供の家とは反対の方向へ。 #twnovel
2009-11-08 00:10:52ぼくは教会が嫌いだった。ぼくは知っているんだ、お母さんがいつも3時に着くように僕を教会に連れて行って、おやつで釣ろうとしていることを。そうじゃないんだ。ぼくが教会を嫌いなのは、十字架が、聖書が、キリスト様が、どうしようもなくぼくを興奮させてしてしまうからなんだ。 #twnovel
2009-11-08 00:24:05友達が自殺未遂をした。僕は慌てて車を飛ばし電車に乗り、彼が収容された病院のベッドへ向かった。幸い彼の生死に別条はなく、僕は再び電車に乗った。それが13回繰り返されたある日、彼は僕にだけ打ち明けた。自らビニール袋をかぶり、首を絞める快感から抜け出せないのだと。 #twnovel
2010-05-10 16:10:00「やってくれよ!」「嫌だってば……!」「なんで嫌なんだよ!」「だってこんな細いの……痛いよ……」「大丈夫だ!思いっきり力を入れてやればいいから!」「うぅ……どうしてこんな……ハイヒールで背中を踏めなんて……!」「頼むからやってくれよ!俺のためだと思って!」 #twnovel
2010-05-26 23:04:02あなたが私を愛してくれないから、私はあなたの腕を取りました。それでも愛してくれないから、今度は足を取りました。まだ愛してくれないから、最後に目を取りました。やっと愛してくれたけど、今度は私があなたを棄ててしまいました。あなたから取れるもの、もう何もなかったから。 #twnovel
2010-05-28 23:42:39明日、断頭台に立つ王女がいた。愚かな親を持っただけの、罪もない、純潔を絵に描いたような娘だった。死ぬのは怖いと、彼女は家臣に漏らし、泣いた。……何故か判らない、あの恐ろしい音とともに、自らの血がほとばしる光景を想像するのが、ただただ楽しくて、楽しくて仕方なくて。 #twnovel
2010-05-29 00:28:11@ichigenkin オートアサシノフィリア:自分が殺されることに性的興奮を覚える性的嗜好(自殺願望や自傷行為とは別物) #twnovel
2010-05-29 00:29:25ああ、また泣いている。仕事疲れの体をのろのろと起こして、おしめを替えに行く。疲れて抱くことができないからそっと揺さぶって寝かせる。もううんざりだ。一夜の戯れがこんなことになるなんて。髭だらけの彼を見据えて、今日は髭を剃らなければ、と夢見心地のように地獄を思った。 #twnovel
2010-05-31 19:29:24「おなかすいたな」「おなかすいたね」「あっ、人が来たよ!」「ほんとほんと!?」「こんにちは!」「こんにちは!」「あんまりおいしくなかったね」「けどこいつお金持ってるよ」「よかったぁ!」「おなかすいたな」「おなかすいたね」「あっ、人が来たよ!」「ほんとほんと!?」 #twnovel
2010-05-31 20:54:37金いろの髪に白いリボン。彼女は歌唄いのアンドロイドだと名乗った。確かに彼女の声は、カナリヤのように美しかった。絶え間なくキーボードに指を走らせる私の傍、蜜柑を頬張りながら彼女は言う、「ねえマスター、もっと音を聞かせて」……アンドロイドは、有機物など摂取しない。 #twnovel
2010-07-02 20:00:51「動かないで」「動かないで」「動かないで」「動かないで」「動かないで」「お願い」「動かないで」……何度も何度も何度も言われなくたって、そんなことわかってる。……ただ不可解なのは、この人が私の電源を切らないこと。切ってしまえば、動かない私を死体のように愛せるのに。 #twnovel
2010-07-02 20:02:07それはささいなことだった。けれど性格のきつい、いつもいらいらしている彼女は僕のどんな小さな失敗もあげつらってくどくど言う。僕はそのたびに正座させられて、その間ずっと下を向いている。反省しているんじゃない。彼女にそう言われている時間が、僕の一番幸せな時なんだ。 #twnovel
2010-07-05 14:43:13