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homesick

*腐注意* *近親相姦注意* 連載していたついのべをまとめたものです。 弟×弟だけ忘れた兄。
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長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 挑発してきたくせに、抱きつかれた体は固まっている。…ごめんなさい。胸腔に呟きを落とした。忘れられて悲しいけど、思い出してほしくない。記憶をなくした兄貴は穏やかに微笑むが、俺の所業はなかったことになんかならない。兄貴に何がしたいといったら、俺は許されたかった。

2012-05-29 13:26:45
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel ごめんも何も、覚えてないのに。強張った背中のまま髪を撫でられた。優しくされる覚えがなくて、不安にかられてきつくしがみつく。…お前が俺を知ってるなら、隠さないで教えてくれ。密着した下肢に息を乱し、宣告は揺れていた。そうでもしなきゃ、俺は二度と先に進めないんだ。

2012-05-30 14:21:48
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 戻らない過去を、もう一度忘れる為の行為。それは病巣を切除するとか、がらくたを片付ける等と同じ意味だ。それでも期待に涎を垂らす、浅ましい我が身を持て余す。…そんなことしたって無駄だよ、あんたは元の兄貴と違う。今にもどうかなりそうな体を、時間をかけて引き離した。

2012-06-01 14:00:12
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 記憶を失う以前と現在を比較したり懐かしんだりすると、そのつもりがなくても当人にとっては負担となる。避けるべきだと医者から注意されたが、俺はそこに逃げた。未練がましく胸に額をつけたまま項垂れ、目を見られない。…なら、これを始末しろよ。不意に、下腹に衝撃が来た。

2012-06-01 20:40:54
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 一瞬頭の中が真っ白になった。これで外に出る方がよっぽどだよ。膝頭で押されて腰が引ける。ぬめった下着が擦れ、思わず呻いた。なあ、我慢してこんなになるって何なんだ? 大事にしたいのに、後悔するのは御免なのに、体の反応を止められない。手首を掴み、階段を駆け上がる。

2012-06-01 22:52:25
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 俺の抜け出た跡のある寝床にそのまま引き倒し伸しかかる。パジャマを剥ぎ、朝の光に青褪めた肌を暴きながら、膝を割って脚の間に陣取る。下着ごと短パンを下ろすと弾み出たそれに、兄貴が息を飲む。…わかる? 誇示するように押し付け、ほんの先端を食ませただけで腰が震えた。

2012-06-02 23:02:51
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 濡らされ拓かれて荒らされる、従順に享受する肉体と、惑乱する兄貴の中身とがかけ離れていくのがわかる。未知であり既知である感覚に、重なる腹の間でゆるく勃ち上がり芯を持つ欲望に首筋がそそけ立つ。週末でも早めに設定している携帯の目覚ましが鳴り、繋がった体が戦慄いた。

2012-06-04 00:14:22
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 電話、出ろよと顔を背け喉笛を晒す様が扇情的でそれどころじゃない。アラームだよと放置すれば、厭々とむずがり絞めつける内部に意識ごと持っていかれそうになる。両手で頭を掻き抱き、耳を塞いでキスをする。どんなに充たしてやっても、怯えに冷えた指は一向に温まらなかった。

2012-06-05 23:26:48
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 以前のまま、黙って身を起こした兄貴の肘を掴んで引き止める。どう、何か思い出した? 唇を噛み、首を振る。だから無駄だって言っただろ。…でも、俺はもうお前を知ってる、知らなきゃ忘れられない。悦びを示したことを認め、その上で訣別を突きつける。残酷さに息が詰まった。

2012-06-06 23:04:03
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel …忘れるなんてあんまりだ。分際を弁えない恨み言が零れる。安らかな日々は消えた記憶が戻るまでと覚悟していたのに、俺は思い出されもしない。胸の奥から重い塊がせり上がってきて、鼻や喉を塞ぎ目から溢れる。兄ちゃんのバカ、堪らずしゃくりあげた時、再び携帯が鳴り出した。

2012-06-07 23:07:46
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 先刻とは違うメロディ。…親父かな、何してたか話そうか。自嘲気味に呟くと兄貴は顔色を変え、枕元の携帯をひったくった。両親に知られたらという泣き所は未だ健在で、まるで二十歳の夜をなぞるかのようだ。冗談だよ、言う訳ない。俺達はまた同じ轍を踏む。携帯は鳴りやまない。

2012-06-08 19:42:04
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 秘密にして欲しかったらと俺は兄貴を脅した。露見して困るのはネタを失う俺の方なのに、何より家族が大事の兄貴は唯々諾々だった。それは、左右を違えた靴に笑い合うような日常を放棄するという意味だ。長い呼び出し音が途切れる。…出ていけよ。もう、何処にも戻れないのなら。

2012-06-08 21:49:45
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel できるもんなら忘れてみろよ、だいたい、そんないやらしい体で結婚とかできるつもりだった? 醜悪な台詞が口をつく。痰だか鼻水だかが喉につかえて咳き込み、新たな涙が滲む。腫れ物に触るような毎日は終わった。嫌われていい。最低の弟で構わない。俺があんたを好きなだけだ。

2012-06-09 01:22:20
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 田舎の親父は急に思い出したように電話を寄越す。こんなおっさんでもこっちじゃまだ若い衆だと笑う親父は、集落じゅうの田畑を管理していてなかなかに忙しい。それで、隆行は最近どうだ。まだ帰ってない、直に電話してよ。様子を訊かれて白を切る。本当は何日も顔を見ていない。

2012-06-09 22:11:09
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel その気になれば泊まる場所は幾らだってある。俺の留守中に着替えを持ち出した形跡はあったが、兄貴は本当に出ていった。あのひと、ええかっこしいだからさあ、痩せ我慢ばっかりであてにならんのよ。だから頼むぞととぼけた口調で託されても返事ができない。ごめんと内心で呟く。

2012-06-10 00:29:09
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 元々家族で住んだ家を、ひとりでは持て余す。物音がやけに響き、空気がすかすかした伽藍堂。兄貴の世話で家事ばかりしていたが、もう必要ないので夕方からのバイトを始めた。くたくたになって帰り、ただ寝る為に二階へ上がるのも面倒でソファに丸くなる。何も考えたくなかった。

2012-06-11 22:01:43
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 自堕落な生活のツケは体調に来た。熱が出て頭が痛い。バイト先に連絡を入れ携帯を放り出す。夢うつつに廊下のきしむ音がして、これは願望だと思った。気が弱っているから、叶わない幻を見てしまうのだ。兄貴の手が額に触れ、名前を呼んでくれる。独りよがりでも俺は嬉しかった。

2012-06-12 13:05:27
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 日の落ちた暗がりで目を開ける。少しは回復したらしく空腹を感じた。ちらつく台所の電灯に一瞬目が眩み、テーブルに載ったラップのかかった皿が浮かび上がる。中には歪な形に切られた林檎。一口齧ると、変色を防ぐにはこうするのだと俺が教えたのだったか、随分塩が効いていた。

2012-06-12 23:22:31
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 定時より少し遅く、玄関ドアが開いた。がさごそとコンビニ袋をテーブルに置く音。兄貴、狸寝入りの毛布の下から呼びかけると、ぎくりと背中を固くした。…ありがとう。欲望の根まで貪り尽くしながら、優しくし合える距離を測る。いつか見つけたなら、それは奇跡のようなことだ。

2012-06-15 15:30:22
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel どういたしまして、もう大丈夫なのか? お陰様で。顔は此方に向けずに、柔らかな口元がちらりと覗く。通勤鞄の他に肩に掛けた大きなバッグはそのまま、長居はしないという意思表示だろう。何処に寝泊まりしているのかと問い詰めたくなる。追い出しておいて、どうしようもない。

2012-06-16 00:57:36
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel …ちゃんと食ってんの。こっちの言うことだよ、冷蔵庫もダメなもんばっかだし。探ったつもりが逆に突っ込まれた。近頃スーパーにも行かないから、あの林檎は家にあったものではない。部屋も散らかってるしそんなとこで寝てるし、俺がいた時の方がちゃんとしてたんじゃないのか?

2012-06-18 22:06:39
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 兄貴は冗談めかすが、俺は本当にひとりではだめだ。でも、兄貴のそばにいればもっとだめになる。優しさに自惚れ、嫉妬に身をやつす。…心配はいいから帰れば、また襲われたくなかったら。横顔が苦く笑った。俺が帰る所はここだよ、でも、今のままじゃ俺は岬を利用してるだけだ。

2012-06-20 20:50:55
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 薄情な兄貴によくしてくれたのに、俺はお前に何も返せない。思いもよらない台詞に驚く。見返りなら十分だ。一時でも安穏とした日々。それ以上を望むのは強欲だ。いらないよ、あんたとやれたし、俺は今度こそ忘れられるんだし。…お前以外の奴と、あんなことができると思えない。

2012-06-21 00:46:32
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 岬の言った通りだ、俺には結婚も子供もない。振り返った兄貴はやや頬が痩け、握った拳が震えていた。ただならぬ様子に身を起こすと同時に、兄貴の目から光の粒がまっすぐに落ちる。これでお前を巻き込んだら、親父達に孫の顔も見せてやれなくなる、じいちゃんだって元気なのに。

2012-06-21 13:23:27
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 俺だって、あんたの代わりに子供作るなんて無理。熱に消耗した頭は身動きだけで目眩がした。ぶれる視界を堪え、立ち尽くす兄貴に手を伸ばす。来てよと呼ぶとゆるく首を振る動きではらはらと滴が散った。ねえ、自分さえ我慢してりゃいいと思ってんだろ、辛いなら俺にも分けてよ。

2012-06-22 18:11:19