ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/07/11

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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layback @laybacks

フライドポテトは呼び出される。肉の高騰でパティが足らない。今日からお前がパティ役をやれ。芋なのに? いやならクビでもいいんだぞ。フライドポテトはバンズに抱かれる。萎れた姿がなんとも情けない。それを見て監督も嘆息する。お前にゃ無理だ。フライドポテトは店を飛び出す。 #twnovel

2012-07-11 01:58:39
浅葉積木 @tsumiki_a

#twnovel 狸が河童を肩車してバク転の練習をしていた。失敗するたびに身を捻って逃れるのにも飽きた河童が、狸に尋ねた。「なあ、何がしたいんだ?」「実は、かっぱを乗せて宙返りに成功すれば変身できるはずなんだっ」 河童は深くため息をつくと、無言で狸の頭に葉っぱを乗せてやった。

2012-07-11 07:02:59
アツコ @atsuko0077

#twnovel 綿雲は遠い記憶を呼び覚ます。おばあが得意な布団の打ち直し。「見とけよ」あたかも妖怪退治のように、片膝立てて踏ん張れば、私の視線は真白い綿の上、そのままくるまれ、気付いた時には終わっている。あれだけの綿が嘘のように布にくるまれて…「覚えたか?」首を振る幼い頃の私。

2012-07-11 14:49:05
かなりひこくま @kanarihikokuma

王さまにはファンが多かった。王さまファンは自らの理想を王さまに押しつけ、それがうまくいかないと知ると。猛烈に幻滅してアンチになり、王さまの生首Tシャツを着るようになった。王さまは責任を感じていた。すべての幻想を取り払うことも立場上できなかったからだ。 #twnovel

2012-07-11 15:03:21
すわぞ @suwazo

#twnovel 道端で死んでいたホームレスの女の指から、不似合いな指輪を掠めとった。赤い石。古具屋に売りにゆくと、店の主は机の下から箱を取り出した。「みんな盗むんだ」中にはたくさんの同じ指輪。赤い石。「あの女、盗まない奴が現れるまで成仏できないのさ」手が熱い。掌の中に、赤い石。

2012-07-11 20:10:18
Rico * @Sofia_Tom21

「スクーターなんてバイクじゃないよ。」言ってくれるじゃないか青少年。こちらは20年来のライダーなんだよ。免許取ってからいっちょ前の口をきくんだよ。「峠は走るんじゃなくて攻めるなんて、40過ぎのオバサンは、普通は言わないんだよ。おかあさん。」#twnovel

2012-07-11 20:13:15
竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 野良ルンバの増加が社会問題化している。購入したものの部屋が狭くて、運動不足あるいは欲求不満になった彼らが家出し、野生化しているのだ。今は神社の境内で鳩と餌を奪い合っている。

2012-07-11 20:46:03
しぃとろん @seatoron

時計が逆さに回り始めた。花は種に戻り、にわとりはひよこになった。便秘で苦しんでいたヨウコは、さわやかな顔になる。時間はどんどん戻る。ヒトはみな赤ん坊になり、至る所で泣き声をあげた。私だけ何も変化がないのはどういうことだろうか。宇宙からやってきた記憶すらないのに… #twnovel

2012-07-11 21:02:35
サハラ @tobiironi

何故緑色のカラーメガネをしているのかと言えば、残像消去のためだ。常日頃から赤い血を見ている所為か四六時中補色の緑がちらついてな。鬱陶しくて敵わんと溜息を吐いたらこれを渡されて以来手放せなくなった。なるほど、「恐怖のメガネ」の二つ名はそこから始まったんですね魔王様。#twnovel

2012-07-11 21:10:04
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel ピーカン娘って呼んで! 彼女の売り文句。「雨男、大歓迎よ」二度目のデート、大雨でびしょ濡れ。僕が勝っちゃったね。謝ると彼女は笑った。「晴れ女って意味じゃないの」よく食べ、よく話し、太陽みたいな笑顔。なるほど、と一緒に笑う。雨降り気分を吹っ飛ばし、ピーカンな二人。

2012-07-11 22:09:20
花鳥@きのこの山派 @ameame_y

赤いレースのカーテンから覗いた空の色は灰色がかっていた。「今日はお日さまお休みなの?」幼い少女の呟きは突如、降り始めた雨音によってかき消された。「外で遊びたかったのに」少女は手に持っていた銀色のナイフを机に置くと床に散らばっている人形達と遊ぶことにした。 #twnovel

2012-07-11 22:42:12
23時の夢物語 @23novel

#twnovel 月が欲しいと泣いていたら、不思議なお兄さんがやってきて「どうしても欲しいか」と僕に尋ねた。「うん」と答えると、お兄さんが秘密の技を教えてくれた。「自分だけの名前をつけるんだ。そうすればそれは君のものになる」そう言って、お兄さんは僕のことを新しい名前で呼んだんだ。

2012-07-11 23:31:41
水木ナオ @nayotaf

正体不明な行列に並ぶことを、嗜みとしている。前の人に「これ何の列ですか?」と聞くような真似はもっての外。先頭に辿り着くまでの、胸躍る時間。それが醍醐味だ。 #twnovel だがこれはなんだ。なぜ皆迷わず、底も見えない穴に飛び込む。「はい次の方!」あ、と思う間に背中を押されて。

2012-07-11 23:49:07
橘 颯 @so__w

歌姫は男を待ち、店に立ち続ける。店主は彼女の為に酒場を開き続けた。しかし。もう良いんじゃないか。灯りを落とした店内で男は呟く。婦は艶を失いつつある聲で、そうねと返す。共に髪へと霜が降りる迄待った。カウンター越しに触れ合う唇。四十の年を経て、初めての口付けだった。 #twnovel

2012-07-11 23:56:07
歌種 @PM23564

#twnovel 世界の中心を見てみたくて穴を掘った。深く深く、暑さにも息苦しさにも負けずに掘り進めると「世界のヘソ」の看板が見えた。傍らには枯れかけたヘソと水瓶と柄杓。僕は瓶に残っていた水を全部ヘソにかけた。地上まで伸びたヘソはやがて新しい世界を実らせる。枯れた世界と僕の上で。

2012-07-11 23:56:17