「ラスト・ガール・スタンディング」#2 (再放送バージョン)

布教用に♯1だけまとめて2以降は配信で見てねって言おうとしたけどなんか♯2もまとめました。
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NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「それじゃとっとと行くぜ、スーサイド=サン。初ミッションだ。お前は俺様の邪魔にならねぇようにして、せいぜい貢献しろよ?」ソニックブームがシャープかつ威圧的なメンポを装着した。一方スーサイドはニンジャ装束を着ない。上半身が裸、下はバッファロー革のズボンにエンジニアブーツだ。45

2012-07-15 21:25:11
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

これは彼のニンジャソウルが何故かニンジャ装束を受け付けない為である。ニンジャ装束を着せると、ショーゴーの体はそれをボロボロに崩壊させ、エネルギー光に還元させて吸収してしまう。46

2012-07-15 21:28:14
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

(スーサイドを診た研究者は「こんな事は万に一つの確率」と首を捻ったものだ。「憑依ソウルの性質によるのかもしれません。リー先生が戻られ次第、もっと念入りに検査を行います」。)ソニックブームは嘲笑ったが、スーサイドは気にしなかった。47

2012-07-15 21:30:20
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

ソニックブームはスーサイドの肩をどやし、懐からポラロイド写真を取り出して見せた。被写体を目にしたスーサイドの背筋をアドレナリンが駆けた。ソニックブームは冷酷に、「ターゲットはこのニンジャだ。お前もよくよくご存知じゃねえのか?エエッ?」「ニンジャだと?こいつが?」48

2012-07-15 21:33:33
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「お前のあの情けない自殺騒ぎをシンジケートは調べた。ニンジャソウル憑依の状況は必ずリサーチするんだよ。わざわざキョート独立国の資料まで引っ張り出してよ」ソニックブームは続けた。「巻き添えになったこのガキも生き延びている。ご丁寧にこいつもニンジャになって、転校だ」49

2012-07-15 21:36:40
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「ニンジャだと?こいつが?」スーサイドは繰り返す。ソニックブームは笑った。「なんの因果か、二人して同時にニンジャにとりつかれた挙句、国境を越えて、ネオサイタマの同じハイスクールに転校とはなぁ?」 50

2012-07-15 21:38:43
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「こいつもお前同様、やらかしたんだよ。お前よりは上手く切り抜けちゃいるが、それでアシがついた。しかもお前同様、こいつの人生もカラッポだ。傑作だぜ!」スーサイドはソニックブームを睨んだ。だが、拳は振り上げなかった。「……知った事じゃねえ」彼は言い捨てた。 51

2012-07-15 21:41:51
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「ハハハッ!よォし、行くぜ!ついて来い!」ソニックブームは哄笑し、廊下を足早に突き進む。スーサイドは無表情に後を続く。彼は自身の心中から、被写体を……ヤモト・コキに対する感情を、締め出した。 52

2012-07-15 21:44:54
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「タラバー歌カニ」という相撲フォントのネオン看板、そこから生えた稼働する生々しいカニの脚の巨大模型を、ヤモトを加えたオリガミ部の五人は立ち止まって見上げた。にこやかに笑顔を交わす。ヤモトにとって、カラオケ・ステーションへ行くのは生まれて初めての経験である。 54

2012-07-15 21:46:59
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「今度は大丈夫だったね」アサリが笑った。そう、かつて繁華街の路地裏へ連れ込まれて大変なことになったのは、やや危険な地域を通ってカラオケ・ステーションへ行こうとした為であった。今回はその仕切り直しの意味合いもある。より安心なルート、安心なカラオケ・ステーションが選ばれた。 55

2012-07-15 21:49:06
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「でも、今回こうして参加人数も増えたし、かえってよかったよね、ヤモト=サン」アサリは冗談めかして言った。「サイオー・ホースな!」ブナコが口を挟むと「コトワザ!カワイイ!」オカヨが息のあった合いの手を入れた。「カワイイ!」他の皆が陽気に繰り返す。 56

2012-07-15 21:52:18
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

カラオケ・ステーション「タラバー歌カニ」へ向かうギリシアめいた広い屋外階段の左右には様々な露店が建ち並ぶ。飴やタイヤキ、ライトゴス・ファッション・ブランド「憤怒」の路面店、バイオ金魚……パステルカラーのネオンが夜をはかない色彩でライトアップし、メカホタルの光の粒が飛び交う。 57

2012-07-15 21:55:22
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

行き交うのはヤモト達と同様、制服姿を思い思いにカワイイアレンジした近隣の女子高生たち。ファッション、甘味、社交。このストリートはティーン少女の欲求に、歪なまでに完璧に応える。祭りめいた階段の頂きでライトアップされるタラバー歌カニの姿はさながらシャボン玉めいた幻想の御殿である。58

2012-07-15 21:58:25
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「ヤモト=サンはどんな歌を歌うの?」露店で買ってきた人数分の生姜チュロスを奥ゆかしく配りながら、マチがたずねる。ヤモトが答えあぐねていると、すぐにアサリがフォローを入れる。「行けば楽しいよ、カニもあるし!」「カニ!カワイイ!」 59

2012-07-15 22:00:43
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「歌って!食べて!」と書かれたタラバー歌カニのノレンをくぐった五人は、受付を済ませると、瀟洒なエントランス・ロビーでしばし待つ。ロビーには数台の相撲スロットマシンと、小型のマジックハンド・カワイイキャッチがある。60

2012-07-15 22:03:16
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

すぐに店側の準備が整い、五人はエレベーターに案内され、個室505号室に通された。薄暗い室内にはチャブテーブルとイケバナ、液晶モニターが設置されている。さらに部屋の奥にはノレンで覆われた、謎めいた配膳用の小窓がある。 61

2012-07-15 22:06:35
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

小窓の脇にある「蟹」ボタンを押すと、中央の配膳室からコンベアーベルトによって即座に、加減良く茹でられたタラバーカニの脚が送り込まれる。しかもこのカニは食べ放題、ボタンは押し放題だ。クローン・タラバーカニの危険性は厳重な管理で最小限に抑えられている。なんたる画期的なシステム! 63

2012-07-15 22:09:49
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

この小窓こそ、「タラバー歌カニ」をカラオケチェーン店のシェアトップに立たせしめた画期的なシステムの秘密である。各カラオケ室は階の中心から放射状に設置されており、すべて、この小窓が各階中央のカニ配膳室に接続されている。 62

2012-07-15 22:09:49
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「ヤモト=サン、それ押しすぎ!」アサリが笑った。キャバァーン!キャバァーン!キャバァーン!時間差で蟹ボタン受領効果音が鳴り響く。「いっぱい来ちゃうよ!」ヤモトは慌てて「音が鳴らなかったから、つい」「じゃあ私も!」オカヨが笑い転げてボタンを連打する。キャバァーン!キャバァーン!64

2012-07-15 22:12:11
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「やめなよ!」五人は笑い転げた。やがて「イヨォー」という音声とともに小窓のコンベアーから大量のカニが流れてくると、五人はさらに笑い転げた。こうした騒ぎは何が理由でも楽しく、笑いを誘うものなのである……。 65

2012-07-15 22:14:16
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

ブンブブンブブンブブブンブブーン。カラオケ用の電子的なビートとシンセ加工されたギター的サウンドに載せ、ブナコは振り付けを交えて歌う。「アー、良い天気メンテナンス、電気でまた会いますー」イヨォー、とカブキ・ヒットの合いの手、「ラブ、ラブメンテナンス重点、ラブメンテナンス重点」 67

2012-07-15 22:16:28
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

ハイティーンの間で人気が高まっている新人エレクトロポップ・バンド「デンチモナ」のシングル「ラブメンテナンス重点」は昨日カラオケにIRC配信されたばかりの新曲だ。ブナコは満足げにオジギを決めた。「カワイイ!」カニをつまみながら、皆で喝采する。 68

2012-07-15 22:19:34
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「次、私だ!」マチが陽気に言って立ち上がった。モニターに映るのは満開の桜だ。続いて曲名とアーティスト名「ラブ王侯(タケヨ)」。ブンブンシュシューン、ブンブンシュシューン。イントロが流れ出す。「歌いたい曲がなかなか見つからないよね」曲ブックをめくりながら、アサリが囁く。 69

2012-07-15 22:22:43