クローズアップ現代「“世紀の発見”ヒッグス粒子」書き起こし・ほぼ完全版 #nhk 

7月19日に放送されたものを文字起こししています。 進行:国谷裕子アナ ゲスト:村山斉(東京大学数物連携宇宙研究機構長)
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とし @toshihiro36

<ナレーション> 1周27キロメートル、山手線とほぼ同じ規模です。加速器の中では陽子と呼ばれる粒子が飛んでいます。大都市一つ分の消費量に相当する強い電力を使ってこの陽子を光とほぼ同じ速さまで加速、逆方向から加速させた陽子と正面衝突させます。

2012-07-19 21:27:45
とし @toshihiro36

<ナレーション> この瞬間、ビッグバン直後のような巨大なエネルギーが発生、これでヒッグス粒子をはじきだそうというのです。当初この加速器はヨーロッパの国々によって建設される予定でした。しかしエバンスさんは大きな壁にぶつかりました。

2012-07-19 21:31:06
とし @toshihiro36

エバンス:ヨーロッパだけで加速器を作ることは、技術的に不可能でした。世界中の頭脳を結集することが必要だったのです。

2012-07-19 21:32:48
とし @toshihiro36

<ナレーション> 特に高い技術を必要としたのが、加速器の中で陽子をコントロールする方法でした。光に近い速さで飛ぶ陽子、円形のカーブをうまく曲がれるように強い磁力をかけます。その強い磁力を生み出すには、パイプの周りに電磁石のコイルを巻きつけなければなりません。

2012-07-19 21:36:23
とし @toshihiro36

<ナレーション> しかしそのコイルを作るには、これまでにない繊細な技術が必要でした。 そこでCERNが注目したのが日本の金属素材メーカーでした。長年にわたって世界でも最高レベルのコイルの銅線を作ってきました。銅線を作るチームの責任者・高木亮さんです。

2012-07-19 21:40:53
とし @toshihiro36

<ナレーション> 高木さんたちはCERNから、これまでにない高い要求を突きつけられました。強力で安定した磁力を作るのに必要なのは、直径わずか0.8ミリの中に6000本以上の金属を詰め込んだ導線。これを大量に作ってほしいというのです。

2012-07-19 21:45:20
とし @toshihiro36

<ナレーション> そのためには金属の棒をぎっしりとと詰め込んだ長さ1メートルあまりの銅の筒を、40キロメートルにまで引き伸ばす必要がありました。しかし途中で導線が切れてしまうトラブルが相次いだのです。

2012-07-19 21:49:26
とし @toshihiro36

<ナレーション> 調べると通常では問題にならない、極めて小さなゴミが原因だとわかりました。なんとしてもCERNの高い要求に応えたい。試行錯誤の末、食器洗い機まで導入して洗浄の仕方を工夫しました。その結果ほとんど切れることなく、導線を延ばすことができるようになったのです。

2012-07-19 21:54:40
とし @toshihiro36

<ナレーション> 巨大加速器はこうした世界各国の技術の結集によって、ようやく実現しました。

2012-07-19 21:56:23
とし @toshihiro36

エバンス:日本の企業はヨーロッパにはない高い技術をもたらし、本当に助かりました。加速器の建設を実現するためには、日本の貢献は欠かせないものでした。

2012-07-19 21:58:10
とし @toshihiro36

<ナレーション> 2008年に運転を開始した巨大加速器。次の焦点は膨大なデータの中からヒッグス粒子の姿を見つけ出すことに移りました。世界の科学者による解析が始まりました。日本から参加した研究チームを率いる東京大学の浅井祥仁准教授です。

2012-07-19 22:02:47
とし @toshihiro36

<ナレーション> 20年にわたり日本とスイスを往復しながらヒッグス粒子を追い求めてきました。

2012-07-19 22:04:32
とし @toshihiro36

浅井:これまで20年、だいたい20通くらいの論文を書いたんですけれども。どれも発見することができなくて、「いかなる兆候も発見できませんでした」という結論をどの論文にも、恥かしくなるくらい繰り返し書いてきた。

2012-07-19 22:07:25
とし @toshihiro36

浅井:ようやく発見できるかもしれない、そういうチャンスに巡り合わせて…非常にいま興奮しております。

2012-07-19 22:09:03
とし @toshihiro36

<ナレーション> しかし解析は容易ではありませんでした。巨大加速器で行われる陽子の衝突は、1秒間に数億回。1年間では500兆回を超えます。そのうちヒッグス粒子が生み出されるのは、たった500回程度に過ぎないのです。

2012-07-19 22:11:43
とし @toshihiro36

浅井:陽子と陽子をだいたい500兆回ぶつけているわけです。その中からたぶんヒッグス粒子ができたのではないかと、そういう事象をふるいにかけて選び出してくるわけです。本当に干し草の山の中から針を探すような、そんな作業をするのが解析といわれている経緯です。

2012-07-19 22:19:06
とし @toshihiro36

<ナレーション> 世紀の発見の2週間前、解析は大詰めを迎えていました。各国の研究チームが成果を上げているなかで、日本のチームは作業が思うように進んでいませんでした。浅井さんたちは解析の方法に改良を重ね、CERNの研究室に泊りこんで作業を続けました。

2012-07-19 22:23:38
とし @toshihiro36

<ナレーション> 浅井さんが納得する結果が集まり始めました。グラフの赤い線は、これまでに知られている素粒子の痕跡です。それとは明らかに違う、新たな粒子の痕跡が捉えられたのです。さらに別のチームからも新たな粒子の存在を示すデータが報告され、浅井さんは確信しました。

2012-07-19 22:29:28
とし @toshihiro36

浅井:もう20年以上こういうことをやっていますけれども、やっぱり…言葉にならないというのが一番正しい表現だと思います。

2012-07-19 22:31:57
とし @toshihiro36

<ナレーション> そして今月4日、CERNは世界に向けて宣言しました。

2012-07-19 22:38:43
とし @toshihiro36

CERN所長:我々はついに発見しました。新しい粒子を見つけたのです。ヒッグス粒子とみて、ほぼ間違いないでしょう。

2012-07-19 22:40:41
とし @toshihiro36

<ナレーション> 半世紀前、一人の科学者によって予言された神の粒子。今月10日に発表された論文には、世紀の発見に関わった世界中の科学者たちが名を連ねていました。

2012-07-19 22:43:12
とし @toshihiro36

エバンス:素晴らしい成果をもたらしたのは、各国の技術の粋を集めて作られた実験装置であり、何より世界中から集まった人々の力です。こうした国際協力があってこそ、科学は次の新たな段階に進むことができるのです。

2012-07-19 22:45:49