ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/07/21

すわぞ @suwazo

#twnovel 世界が存在しはじめる前から神として有ったものと、ちっぽけな虫けらから長い長い長い時間を越えて神の座まで到達したものとが、邂逅する。双子のように同じ顔をして。同じ戸惑いの表情を浮かべて。そうして、互いに互いを何者であるかを問う。互いに己れは何者であるかを問う。

あまたす @amatasu

私は気づくと眠っていた。必死に髪を直していると、その隣で彼が目を覚ました。私は慌てて頭から布団をかぶる。彼はその隙間から手を差し入れて、ずっと隠してきた私のウサギ耳に触る。知ってるよ。なんで？　ニオイ、だよ。彼は長い犬歯をむき出しにすると、私をそっと組み敷いた。 #twnovel

tokoya @tokoya

#twnovel お盆の茄子の牛、去年まではお母さんだったけど、今年は私が作ることになった。五年前亡くなったお祖母ちゃんに、運動会の話を聞かせたいな、と思いながら丁寧に作った。出来上がった牛を窓際に置いて待つと、ベルが鳴った。私は牛を取り上げて言った。「もしもし、お祖母ちゃん？」

@kissmint_xxx

小学校のプールで、クジラを飼うことになった。空を泳いでいたのが落ちて来たからだ。怪我はなかったが元気もない。聞くと、空にクジラなんていないと言われたらしい。子供達は毎日、きらきらした笑顔で話しかける。自信を取り戻したクジラは次の週、空へと帰って行った。 #twnovel

yosizaki @0Y0y0y00480

人類は進化した。「遺伝記憶」記憶は何世代にもずっと受け継がれていく。勉強はするものじゃなく、先代の記憶を思い出す事が勉強なのだ。さらに体に触れなくともテレパシーで性交も可能に。食べなくても生きていける。ここは思考の世界。今日も脳みそがふわふわと浮いている。 #twnovel

さとうはな @s_hana111

ドアを開けると捕らぬ狸が立っていた。「これを計算してください」と数枚に及ぶ計算式を渡される。計算は得意だ。全問解き、狸に返す。「ところで何の計算なの」「長期金融市場における獣皮の変動金利と補正予算に関する資料です」捕らぬ狸はそう言うと夕日を背にして去っていった。 #twnovel

おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 彼は自分が商品だと気づいた。彼は養豚場の豚だった。餌を取り合う仲間たちに、おれたちの敵は人間なんだ、と教えた。自我に目覚めていない豚たちには理解できなかった。彼一匹が商品であることに抗い、餌を食べるのをやめた。餓死した。彼の最期を語り継ぐ豚は、まだ現れていない。

竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 突然の雨。途方に暮れる僕の目に入った女物の傘。道端に手招きするように置かれていた。その傘を差して帰ると、彼女が浮気を疑って出ていった。呆然とする僕にあの傘を差しかける見知らぬ女。「２度と捨てないでね」以来、僕の周りだけ、やまない雨。

プランニングにゃろ @planningNYARO

カニ料理で家族団欒。「またカニなん？」妹がボヤく。無理もない。極寒高気圧のこの星には甲殻類しか生息できないのだ。父「宇宙にはカニが高級料理って星があるかもしれんぞ？」「そんな星あるかー！」思わずツッコミがハモってしまい、みんな触角をカシャカシャ回して笑い転げた。 #twnovel

すわぞ @suwazo

#twnovel その楽器が演奏されている間だけ存在しうる、バイオリン犬、トランペット猫、フルート鳥、チェロ虎、オーボエ狐、ホルン牛、クラリネット兎、ヴィオラ熊……諸々が生まれ生まれ、コンサート会場の扉を蹴り飛ばし弾丸のように外へ飛び出してゆく。指揮者は満面の笑顔でタクトを振る。

いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 壇上で脚光を浴びる彼。文学賞なんて冗談みたい。中学の頃ラブレターも書けず、泣きついたヤツが。教えた私は今、平凡な主婦。「じゃ、はい」できた手紙を渡されて、驚いたのが昨日のよう。その証拠は大事にとってある。近づく彼を、とびきりの笑顔で迎えた。「おめでとう、あなた」

layback @laybacks

ぐっすりと眠っていたはずなのになぜだか視線を感じて瞼を開いた。「起こしちゃった。ごめんなさい」月明かりがその女の子の顔を照らしていた。知らない子だった。「寝顔がきれいだったから、つい」「どうやって入ったの？」「ここに住んでるのよ。あなたが越してくる前からずっと」 #twnovel

塩中 吉里 @shionaka_kiri

#twnovel 色とりどりのメニューにこの国の料理が並んでいる。隣の多国籍飯店では他国の料理が、誰かの家では誰かの料理が湯気を立てている。電子映像は並行して走る。鋏はあらゆる髪型を切り抜く。幾億もの服が袖を通されるときを待っている。わたしは一人しかいないし、すぐにいなくなる。

ハラヨシ @harayosy

たんじょうび #twnovel ぼくがうまれたのは ７がつ２２にち。３さいです。みんながぼくのなまえをいっしょけんめにかんがえてくれたんだって。みんながぼくのなまえをつかって、いろんなおはなしをきかせてくれるんだよ。たくさんたくさん、いっぱいいっぱい。ねえ、これからもきかせてね？

良崎 @kanfrog

「蝶蜻蛉？」「ひらひら飛んで、虹色に光るんだ」「蝶みたいに綺麗ってこと？」「トンボも綺麗だと思うけど」蜻蛉好きの彼は口を尖らせた。確かに一理ある。「うん、素敵なものはカテゴリーに関係なく素敵だよね」「だから君は俺を選んでくれたんだろ」彼は自分で言って頭を掻いた。 #twnovel

かずらちゃん @udonisoishii

#twnovel　コーヒーに入れる砂糖は三さじ。私が５センチ以上のヒールを履くと、背を追い越してしまう。読書の邪魔をされるのはすごく嫌い。私があなたについて知っていること。もっと教えてよ。時間はたくさんある。その間に、いくらでもあなたに好きになってもらうチャンスはあるんだから。

roardel @roardel

核戦争で地球が滅びても人類は生き残るようにと始まったノアプロジェクト。私は200人の男女の1人に選ばれ、宇宙に打ち上げられた。遠ざかる青い宝石を眺めながら、最近とみに思う。これだけの宇宙船を建造する科学力があるのなら、なぜ人類は戦争を止められないのだろう、と。 #twnovel

ゑぬ@基本ROM垢 @Liver_519

帽子屋は今日も帽子を作る。次々と注文書が舞い込み僅か3分で本日分の受付終了。注文書を眺め帽子屋は溜め息を吐く。｢不幸の帽子作るの飽きちゃったわ。｣#twnovel この帽子屋は被った人に不幸を招く不幸の帽子を作れる店として、毎日の様に他人に恨みを持つ人々からの依頼書で溢れていた。

歌種 @PM23564

#twnovel 机係より何より溜息係は人気がない。校庭や教室の隅で拾った溜息の落とし主を探すのは、確かに少し気が滅入る。でも僕は皆ほど嫌いでもない。迷惑がられても半分だけ返すのが僕流で、半分この冷たさを吸い込んで深呼吸したら、そっと視線を合わせる。それだけでもう温かくなるから。