2010/09/10 ツイッター小説 お気に入りセレクト

あＱ （CTT) @aquall

#twnovel 子供たちの互いの手には沢山のカード。今も昔も変わらぬ光景。私も子供の頃はお菓子のおまけシールやカードを集め、足りない物は交換したり、そうやって交友の輪を広げたものだ。……いや、大人になっても変わらない。私は集めた交友の証が収められた名刺ホルダーをくるくる回した。

メルシー @mercy1201

『俺のパスがもう少し早ければ、もっとイージーに打てたんだよ。俺のせいで負けたんだ。』『パスじゃないさ。ゴール前で冷静さを欠いた俺がいけないんだ。』 #twnovel 『あの二人、今噂のあれらしいわよ。』なるほど。だからお互いを慰めあっているのか。あれが今噂の相互フォローす――

はたなか茶 @cha_hatanaka

車がぶつかりあわずに行き来できるのが謎だった。こどもの頃。世界は魔法に満ちていた。んじゃ今はどうかってーとやっぱり魔法っぽいいろいろと。魔法を手に入れ、真っ赤でちっちゃくて可愛い車で、あたしは君に会いにゆく。 #twnovel

瀬口 @an2a_09

#twnovel わたしね、くらげになりたい。数あるいきものの中で、彼女がくらげを選んだのは何となく分かった気がした。しんと静まり返った館内。水槽の中をふわふわと漂う姿は幻想的で夢の世界の様にも思えた。ペットボトル越しに見たらくらげみたいだよ。僕がそういうと彼女はくすくす笑った。

@kazabanaAIL

「ねぇ……キスしよう？　ここなら誰も来ないし……ね？　あなたに私の印を付けるの……誰にも渡さないために。だから……んー……。……身長が違いすぎて届かないんだけど……」「上目遣いとか、大人っぽく言っても、別に俺は小学生とキスしねぇからな？」「……ぶー」 #twnovel

土岐 @t_ineka

#twnovel 秋になった途端に、どうも目から鱗が落ちる。奇妙に思って鏡を覗くと、いつの間にか私の目の中には一匹の魚が泳いでいる。「コリドラスだね。入れておくと楽だよ、ガラスに付く藻を食べてくれる」熱帯魚好きの知人がそう言うので、しばらく放っておくことにした。

@TAKEZAEMON

#twnovel 市役所の“なんでもやる課”に勤務して一年。僕は市民の無茶苦茶な依頼に我慢できなくて、とうとう上司に配置転換を申し入れた。上司は「君は、今の仕事に疲れたんだね。わかった。私に任せなさい」と言ってくれた。一週間後、辞令が出た。異動先は“なんにもしない課”だった。

@hal0069

「怪奇小説は買えるが奇なる人生は買えるものではない、愉しみ給え」声がして辺りを見回したが誰もいなかった。生きている者は誰も。死体を埋めた。札束と毒物も埋めた。折檻監禁近親相姦遺産相続争いと殺人。もう十分だ。十分愉しんだ。今日からは魔法少女になろうと思っている。 #twnovel

煙人計画 @vaporoid

皿を洗う彼の背後、娘とその母親は「初音ミクのステッカーはどうかしら。ゲバラもあるよ！」と彼の自転車を痛車にする計画を練った。「フレームの左側にゲバラ、右側に毛沢東を貼るのはどう……」と告げた彼に「どっちも左に貼りなさい」と応えたのが誰だったかまでは判らなかった。 #twnovel

kamihikoki @kamihikoki

あなたは計算尺というパソコンがない時代の計算器具を知っていますか。アナログの結果表示で目測誤差を含むため、誤差計算もしていました。永遠に終わらないかのような手計算ですが、きちんと答えが出ると現代以上の嬉しさがありました。私はもちろん恋愛の話をしているのですよ。 #twnovel

@K_Ichida

#twnovel 庭の隅のカエデ。秋になると、幹から赤い手が出る。祖母、祖父、みんなが彼岸から手を伸ばしてくる。手を握ると私の掌に指で字を書く。苦しい、帰りたい…我が家に生まれた者の運命は決まっている。私もいつかあそこに行くのだ。遠い昔、なにかがあった。しかし誰も教えてくれない

リリングミスト @RelyingMist

「馬鹿犬と馬鹿人間です」「馬鹿は嫌いなので馬鹿犬をくれ」ガブー「ぎゃあ」「馬鹿犬は噛みます」「違うのを」「馬鹿猿と馬鹿人間です」「馬鹿猿をくれ」ザシャ「馬鹿猿は切り裂きます」「うう」「馬鹿虎と馬鹿人間です」「馬鹿人間をくれ」ガブー「ぎゃあ」「馬鹿人間も噛みます」 #twnovel

泥辺五郎 @dorobe56u

#twnovel 隣家の玄関先で飼われている馬は人語を話す。「今日雨降るよ、雨！」「奥さんに謝っとくといいよ、長引くと辛いよー」「人参いらない、人参いらない、やっぱ人参ちょうだい！」雨は降らないし私に妻はいないし人参もあげない。話すことが出来る動物がみんな賢いわけでもないらしい。

@kigurom

#twnovel 「子供は一姫二太郎がいいね」夫が言った。うん、と私はお腹をなでる。産まれたのは女の子だった。私達は早速「一姫（いつき）」と名付けた。３年後、今度は男の子が産まれた。「ちょっと待って」と私。「名前は？」「……二太郎？」「変じゃない？」私達の計画性の無さが露呈した。

佐木ささめ @sakiandu

#twnovel 鈴虫の音色が響く深夜に子供の泣き声で目が覚めた。怖い夢を見たとボロボロ泣いている。大丈夫よ、と抱っこして背中を撫でて慰める。やがて落ち着いた子供は再び夢の中へ。しかし一時間も経たないうちに再び啜り泣く。仕方が無い、今夜は君の為に一晩中悪夢を食べる獏を努めよう。

みずしま @aya_mizushima

宝石箱を泳ぐ魚になった気分。エレベーターの中から深夜の街を見下ろし、ふとそんなフレーズを思い出す。何かの本で読んだような、と考えている内に肩を抱かれた。「きれいだね」歯が浮きそうな甘ったるい声。そうだ、こいつのセリフだと思い出して、思わず「うぜえ」と払いのけた。 #twnovel

よしのちほ @chiho_yoshino

来年も見ようね。花火大会の帰り、あなたは答えに詰まった。先のことはわからないから約束できないって思ってるんでしょ。誠実も度が過ぎると不誠実だわ。笑いたくて泣きたくなる。いいよ忘れて。この約束も、私のことも。ただ、来年の夏、ふと切なくなってくれればそれだけで。 #twnovel

Pingu　novel @ckpingu_nvl

僕は柴犬。少し前から僕にオシッコかけようと追いかけっこしてた油蝉が、今日は庭に転がっている。「どうしたの、遊ぼうよ」爪先でつつくとジジッとバタつく。「もう無理だな。次の相手がまたいるさ」そっと咥えると草陰に下ろす。ここの方が涼しいよね。頭上でカナカナと声がした。 #twnovel

にゃおっく @_nyaok

#twnovel いつか少女の頃、父に肩車されると世界が変わって見えた。何度も太陽に手を伸ばしたものだ。大人になればまた出会う景色だと信じていたけれど、母親似の私はチビのまま。ふと肩車を、新聞に目を落とす白髪交じりの父に乞う。父は笑う。「無茶言うな。今のお前じゃ太陽に届いちまう」

いつ @en_eo

#twnovel ある雨の日、悪魔が段ボールに捨てられていた。黄色の傘を差した小学生が牛乳をあげている。やめなよ、と言ったら、立ち上がって傘を投げ捨てるように置いて走って行った。勢いのついた黄色の傘が段ボールを通り過ぎる。悪魔がきぃと鳴く。仕方がないので直しておいた。

ねこま @nekoma_tan

でっぷりと膨れた腹の中年オヤジを街中で見るたびに思い出す事がある。幼少時、叔母はスイカを一玉くれて「スイカの種は食べたらお腹の中で育つんよ、だからちゃんと出し」と私に言ったこと。そしてその隣での夏痩せした叔父の意味深な苦笑い。 #twnovel

すわぞ @suwazo

#twnovel お婆さんが川で洗濯をしていると、上流からオフィーリアが流れてきた。(もうそんな季節かね)お婆さんは呟く。続いて何体も何体も流れてきては下流へ消えていった。どれも変わらず悲嘆に沈む青白い顔である。(綺麗だけれど。毎年この時期は切なくなるねぇ)とお婆さんは思う。

まりる＊まりら @Na_shin

#twnovel 気分転換に飲み物を買おうと思って出かけた。暗い坂道を下ると角に小さな呑み屋があって、左に曲がるとコンビニ。だが、坂が終わらなかった。螺旋を描いて、下へ下へ。なぜか眼下に街の灯りがある。灯りは近づいてこない。下りていく。どこまでも。どうやら飲み物は買えそうにない。

@FOXOF

「枕が替わると眠れない」と言っていた、その男が合宿に来たとき なぜか彼女を連れてきた。どういう事だと問い詰めたら 「いや、彼女の膝枕が……」爆ぜろ。 #twnovel

layback @laybacks

「あなたちょっと鉄道模型にお金かけすぎよ。電車に乗るのは大して好きじゃないくせに。意味分かんない」「あのな。鉄ヲタにも『乗り鉄』とか『撮り鉄』とか色々あるの。俺はただ『模型鉄』なだけさ」「ほんと死ななきゃ治らないわね」「残念。死んだら『地下鉄』になるんだよ」 #twnovel