ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/05/15

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とは140文字以内で書かれた短いお話です。
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☯️青山藍明&トトちゃんとラブちゃんとリズさん @rangming

咳き込んでいた友人の口から、小さいおじさんがピョンと飛び出してきた。「すいません」とおじさんは頭を掻いて、ふっと消えてしまった。「あ、噎せてたのが治ったみたい」嗄れた低い声は、おじさんが出させていたようだ。友人はいつもと同じ、女らしい、高い声に戻っていた。 #twnovel

2012-05-15 00:05:49
紺屋 @ysga1002

子どもの頃、二段ベッドの上は大海原を行く船だった。果てしなく広がる青い海を、旅する想像に胸をときめかせていた。世界は沈んだ、いざ冒険の旅へ!「おいこら俺を勝手に沈没させるんじゃねえ」懐かしい思い出を語っていたら、二段ベッドの下の住人だった兄に思い切りどつかれた。 #twnovel

2012-05-15 00:25:19
だりむくれ @darimukuretyu

毎夜2:22になると、うちの猫は鳴き出す。何もない中空に向かって鳴いている。何を見ているの、と尋ねても、彼女は応えてくれない。なぁなぁと鳴き続けるだけだ。眼を見ていると、どことなく懐かしそうな眼差しをしている。きっと今夜も鳴くのだろう。相手が応えてくれるまで。 #twnovel

2012-05-15 02:25:16
七歩 @naholograph

おにぎりが転がって海に落ちた。おにぎりが言う。「帰してくれて有り難う」鰹節、海苔、塩が感謝する。「私は海なんか」どうやらご飯は不満らしい。「お前それでも嫁か?」「だって」「ぺしっ」「ひどい。実家に帰らせていただきます」あ、ご飯帰ってきた。「秋田へお願い」秋田小町?#twnovel

2012-05-15 06:32:22
浅葉積木 @tsumiki_a

#twnovel その本屋では本の量り売りをしている。重たい本は値段が高く、軽い本は安い。それらに混じって価格がマイナスの本。…これ、こちらが代金をもらえるの? 「その本は軽いんですよ。読むと魂まで軽くなって身体から抜けるくらい。お持ちになりますか?」 ええと、遠慮しておこう。

2012-05-15 07:03:57
大野木寛 @dadasiko

私は機械仕掛けの人魚。ゼンマイを巻かれて水槽を泳ぐの。毎日見てくれる人がいたわ。若い男の人だった。でも、私は機械仕掛けだから、なにも感じなかった。ある日のこと、ふと水槽の向こうを見ると、その人の隣には女の人がいた。……私は機械仕掛けの人魚。私は機械仕掛けの…。#twnovel

2012-05-15 09:51:08
Hiroyuki inoue @hiro_kinako

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、今日は傘を持って家を出ろという。ありがとう、でも今日は荷物が多いんだ。雨が降ったらビニール傘でも買うよ。そう答えると彼は言った。「財布を忘れて出るから、傘は買えないぞ」

2012-05-15 10:49:52
@K_Ichida

#twnovel 雪の中には雪棲生物の文明がある。彼らは雪とともに生まれ溶ければ消える。一定の温度になると生命形態になり、意識を発生させる、特定温域生命体なのだ。雪棲生物は純粋な文明を雪とともに醸成してきた。雪を見て心が洗われるのは、彼らの文明の香りに触れるからだ。

2012-05-15 10:58:48
@K_Ichida

#twnovel 傘をさしていない時、彼女の存在はない。最初に誰かが傘を開いて彼女を召喚した。紳士は降り始めた雨を見上げ、婦人ものの瀟洒な黒い傘を開く。すると、その傘の下に彼女は現れる。「いやな雨ですわね」と彼女は言い、紳士は苦笑する、傘がなければ現れないくせに、と。

2012-05-15 11:06:25
くさがみ•R•シン @kusagamirin

#twnovel 審査員が目玉焼きの表面を一通り見てナイフを入れるとトロッとした黄身が出てきた。半熟。これは自信作。続いてステーキ肉。表面の焼き加減をチェックしてナイフを入れる。なかなか切れない。焼きすぎた肉。これも自信がある。どうだ?「文句なし。食品サンプル技能検定に合格です」

2012-05-15 13:01:15
ミドリハだったもの @midoriha

「雨がふり始めたときの匂いって好き。」 「俺も好き。」 高架沿いの道を歩きながら話した。「俺も好き」って言われるのは二回目だな、って思ったけど言わなかった。「好き」って言葉はなんて美しくて軽いんだろう。春の雨が降り出すたびに「好き」って動く薄い唇を思い出すよ。 #twnovel

2012-05-15 16:05:10
おはなし手帖 @ohanasitecho

【疑う人】 「いいえだめです。まだ穴がある。そんなもの信じることはできない」 彼は疑う、小さな世界の隅の隅まで。一点の翳りも許せない。 彼は楽園を夢見る。すべてがそろう、矛盾のない、明るい、誠実な楽園を。 彼は疑う、涙をためて。 「だめです、まだこのままでは」 #twnovel

2012-05-15 16:19:54
N.T.Works/凪司工房@介護生活中 @nagi_tter

#twnovel 今日子さんは刮目する。彼女が出かけている間に受けた電話の伝言メモを何度も見て「ない」と言う。「何を探しているの?」「大切なもの」彼女の知人からの伝言は一言一句間違えていない筈だ。「やっぱり無い」「何が?」「愛……このラブレターにあなたの私への愛が書かれてないの」

2012-05-15 16:28:31
すなお @Svnao

#twnovel 「満員電車は嫌だね」すし詰め状態の車内で男性のダミ声に囁きかけられた。眉を顰めて視線を巡らせたが、周囲にそれらしき姿は見えない。「女性の間に挟まれる分には歓迎だがね。ぐふふ」ハッと見ると、女子高生のリュックにくっついたくまのストラップのつぶらな瞳と目が合った。

2012-05-15 16:41:31
Hiroyuki inoue @hiro_kinako

#twnovel 降りしきる雨が僕の心を代弁していた。「本日はお2人らしい日和となりました」司会者が向く高砂席には学生時代の友人と、その彼女。「雨の放課後、傘を無くし困っていた新婦に声を掛けた新郎。相合い傘が結んだ縁とは…」照れ笑いで見つめ合う2人。彼女の傘は今も僕の手元にある。

2012-05-15 17:34:35
すなお @Svnao

#twnovel 明日遠足の息子と一緒にてるてる坊主を作ってベランダに吊った。「あ、あそこの家もてるてる坊主吊るしてる」お、その家の子も遠足か。「うちのより大きいし髪が長い」「…髪?」疑問を覚え目を向けると、向かいのマンションの一室で、白いワンピースの人影が揺れているのが見えた。

2012-05-15 17:54:55
夢見るドラム缶 @mikado_hss

ジョーイはとても変わり者。それは、彼が子供の頃。石につまづき転んだジョーイ。近くを通ったお姉さんがジョーイに手を差し伸べる。その手を拒否するジョーイは言った。「ひとりで大丈夫だよ。でも、優しくされると大丈夫じゃなくなるよ。泣いちゃうだろ。」 #twnovel

2012-05-15 18:02:49
銭喰 @zeniqui

#twnovel 『ボタンつけます』クリーニング屋の貼り紙を指差すと、店主のお婆さんが熟練の手つきでつけてくれた。胸に輝く赤いボタンを押せば、ネクタイだベルトだのと煩わしい服が一瞬で着脱できる。素晴らしい。……私は何故、満員電車で通勤していることを忘れてたんでしょうね、刑事さん。

2012-05-15 19:02:10
Tsu mado @xxassydow

#twnovel ドリームジャンボ宝くじ、今日から発売です。夢の入口をノック。一回三百円。生きた心地のしない呼び声。意識不明に近い泥沼。失恋に似ている。あんなに高額のブランド品をあげた。あんなに高額のディナーに連れて行った。何度ノックしても欲なら同じだ。翌日になっても頭痛は酷い。

2012-05-15 19:23:10
高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕(宝島社文庫)」より発売中 @Takuya11

#twnovel 死期を悟った推理作家がトリックを仕掛けた。呼び出された恋人が血塗れの作家を発見。死体傍のメモを拾う。『犯人はここにいる』警察を呼ぶ。警察が恋人に言う。「死亡時刻は貴方が発見後。浮気していた貴方が殺したんですね」「嘘よ! 私が来た時にすでに死んでいたわ」結末は次回

2012-05-15 21:30:08
茶屋 @chayakyu

赤い月から血が流れだして、世界を覆い尽くす。赤い津波が人を、都市を飲み込んでいく。川は血管になり、血管は破裂し、網目のように枝を伸ばす。むせるような、鉄の臭い。血に染まった人々は血の涙を流す。死体で出来た小島の上は直ぐに手狭になって、新しい死体が必要となる。 #twnovel

2012-05-15 22:25:59
咲良 潤 #言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

故郷を離れて3年。それはつまり彼と離れて3年経ったという事。片想いで終わった恋。でも意外と平気だった。特に引きずる事なく毎日を過ごしてる。私って意外と強い。と思っていたのは同窓会の知らせが届くまで。それだけで心が揺れるなんて。私の片思いはまだ終わっていなかった。#twnovel

2012-05-15 22:55:08
竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 「嫌な奴のことを考えている時間ほど人生で無駄な時間はありません」俺は“嫌な人間の記憶削除薬”のセールスマン。俺のおかげで何人が前向きな人生を歩みだせただろう。今日も達成感と共に我家に帰る。愛する家族が待つ我家。なのに妻子は訝しげな目で俺を見た。「あんた、誰?」

2012-05-15 23:05:20
すわぞ @suwazo

#twnovel 眠っていた。手を伸ばそうとしたとき手がうまれた。目覚めなければと思ったとき眼球と瞼がうまれた。音があると感じたとき耳がうまれた。呼吸をしたくなって口と鼻と肺がうまれた。寒さを知り体温がうまれた。誕生することを決めたとき誕生すべき世界がかたちづくられた。

2012-05-15 23:07:28
塩中 吉里 @shionaka_kiri

#twnovel 創造されたときの贈り物として、皮膚の一枚内側に、内向きの牙を隙間なく生やしてもらったので、いざというときは、自分を食いつぶして虚空に消えることができる。

2012-05-15 23:20:47