今まで書いたものまとめ

夜さり @yosari__lambent

【日向先生】見つめたらこの恋は終わりだと知っていた。「おら、目閉じろ。熱測ってやっから」素直に差し出される体に罪悪感がごとりと積もる。「へへ、せんせいの手、冷たい」唇のグロスがひどく艶っぽく、その不釣り合いさに眩暈がした。お前にずっと愛されていたいから、狡い俺はお前を見つめない。

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【黄瀬】ひとつ、ふたつ、星が砕けて、雨になった。その髪も指先も、もう俺のものにはならないけれど。好きだったよと口にすると、彼女は少し淋しそうに笑った。誰よりもタキシードを着こなせる自信はあるけど、彼女の隣にいるのは俺じゃない。あの人は世界で一番大好きで、世界で一番綺麗な、花嫁だ。

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【高尾】彼女と一緒に迎える誕生日が何度目なのか、もう数えないと分からない。財布は去年の誕生日、伊達眼鏡はクリスマス。お揃いのマグはいつだっけ。でも、それでいい。上書きされ続けるこの記憶が幸せで堪らないから。「おかえりパパ！」「おかえりなさい、和くん」ほらもうひとつ、追加。

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【森山】書類の数字をなぞるとき、苦いコーヒーを一口飲んだとき、ふと、自分の人生に意味なんてこれっぽっちもないんじゃないかと思うときがある。「アンニュイな美女には、素敵なお兄さんがご飯奢ってあげちゃおうかなー？」肩越しに見えたドヤ顔に笑って、悔しいけどまた彼のことが好きになる。

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【日向先生】「女子高生が一人でうろうろしてんじゃねぇよ」ブランコを揺らす私の目の前に立つ彼は不機嫌そのもの。「…なんか、帰りたくなかったんです。ほら、ちょうど満月だし」「じゃあせめて学校にいろ」伸ばされた手は大きくて、少し荒れてて。ねぇ先生、この手が私だけのものになる日は、来る？

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【高尾】高校生だった彼はトンカツが好きだった。いかにも運動部の男子高校生っぽくて笑ったら、彼も人懐っこい笑顔で返してくれた。衝動的にトンカツを作りたくなる日は、泣きたい日だ。でもいくら泣いても時間は戻らないし、「和成、」いくら名前を呼んでも、食卓に上がる夕飯はいつだって一人分だ。

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【緑間】「この馬鹿め」開口一番の言葉は大正解。公園の入り口にある外灯が、彼の姿を仄かに映し出していた。きれいな緑の目。瞬きひとつするたびに、その長い睫毛から星のかけらでも落ちてきそう。「帰るぞ」差し出されたのは、私には大きすぎる上着。「はい。…お兄ちゃん」私は彼に、恋をしている。

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【伊月先生】「君は何がしたいのかな？」あ、怒ってる怒ってる。笑顔だけど目が笑ってない。カーディガンのポケットに手を突っ込んで、彼から奪った煙草の箱を指でなぞった。「センセー、煙草止めたら」「一丁前に説教か？いい気になるなよ、ジョシコーセー」この馬鹿みたいな茶番が、私は大好き。

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【日向主任】朝陽に照らされた逞しい体。学生時代の名残だと聞いたのは最近だ。「主任、朝ですよ」寝ぼけ眼で体を揺すると、「…俺は部下と寝たつもりはねぇぞ」低い声音。「…随分ロマンチックなことを」「ロマンチックついでに、一緒に出社でもするか？」そして昨夜の名残の赤い痕に、キスをひとつ。

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【日向】「行っちゃうの？」玄関先での甘えた声に振り返ってはいけない。獲物を狩る肉食動物の目をしているに違いないのだから。「…帰ります。家で嫁さん待ってるんで」強調した単語にも怯みもしない、艶やかな声。「…またおいでね、順平」取れかけの口紅が、今日も脳裏に焼き付いて離れない

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【宮地】埃っぽい準備室は動くたびに体中がそこかしこに当たって、本当に侭ならない。「んっ、宮地、もっと触って、」上目遣いを可愛いと思ってやる女は嫌いだ。こいつも絶対にその類の女なのに、俺はこいつを一体何回抱いたんだろう。「人のモノは、美味しいでしょう？」この蟻地獄から抜け出せない。

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【緑間】真太郎の白い肩口。少し力を入れて噛んだつもりだけど、歯型なんて全然つかない。「…っ、痛い」「うそ、全然痕ついてないよ」「そういう問題じゃない」眉間に皺を寄せても、この手が振り払われることは絶対にない。可愛い可愛い、私の真太郎。「もう少し、強く噛んでもいい？」

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【日向】隣の温もりがなくなったことに気づいたときには、既に寝室に彼女の気配はなかった。画面の眩しさに苛立ちながら確認した時間は、まだ起きるには早すぎる。「あのアホが」手探りで眼鏡を探し当て、気の遣い方がおかしな彼女を迎えに行く。「…じゅんぺい、」「眠れねーなら、相手してやるよ」

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【伊月先生】君は早く大人になりたい、って言うけど。「せん、せ」「黙って泣くなんて、感心しないな」俺は君をどろどろに甘やかしてやりたい。胸焼けするくらい、もうお腹一杯っていうくらい。君がまだ子供なら、こうやって君を守ってあげられる。「…子供は大人しく、ここにいなさい」俺の腕の中に。

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【上司日向】あと少し、もう少し。画面を睨んだまま昼休みはどんどん過ぎていく。お昼もういいかなぁ、と小さくため息をついたと同時に、頭に優しい重み。「昼」気遣う言葉も何もないけれど、あの大きな手が彼の何よりの労いの気持ち。「…はいっ」そしたら彼は、いい返事だ、と笑ってくれるんだ。

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【黒子】ベッドの中で話をしていると、彼女はすぐに寝入ってしまう。「テツヤ君の声が優しすぎるからだよ。子どももすぐ寝ちゃうよ、きっと」なんて可愛いことを言うから。「…寝ちゃいましたか？」子どももいいけれど、僕はもう少し君と二人でいたい、って、今日も言えないまま #黒バスプラス

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「あ、そっか」「もー俺練習行くかんな」「…順さあ」「んー」「バスケ楽しい？」「……楽しいよ」「そっか、よかった」

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「…おかーさーん、シュークリーム順の分ナシで！」「ホンットやめてそういうの！」「強かった？相手」「…そこそこ」「次バイト入ってなかったら応援行ってあげる」「おーサンキュ」「可愛い彼女のフリしてあげよっか？順平くんがんばってー♡って」「いんねーし伊月いんだからバレるわフツーに」

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昼下がりの青空によく映える白いユニフォーム。「…あんたホントにキャプテンなんだね」「は？」「バスケって４番つける人がキャプテンなんでしょ？」「そーだけど」「モテんの？」「…モテねーよ」「だろうね」「…姉ちゃんこそ早く彼氏の一人ぐれー作れよ」

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美味しいケーキを食べながら森山さんのどうでもいい話に笑わされて、このままそういう雰囲気になるのかと思っているうちに自分のマンションへ。「…帰っちゃいますか？」「その言葉、無意識だったら重刑だよ」それでも服の裾は離せない。「狡い子は嫌いじゃないけどね。…来客用の駐車場はどこ？」

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失恋したことが会社の先輩である森山さんにバレた。なし崩しに車に乗せられて、対向車に照らされる横顔は何を考えているのか分からない。「弱っているところに付け込んで、うまいこと俺のことを好きになってくれないかなって思ってるよ」イケナイ男だろう、と笑う声は、いつもより低くて、静かで

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【水戸部】昼下がりのオフィスで、眠気を飛ばすために背伸びをする。隣からの合図に目線を遣ると、突然口の中にチョコレートの甘み。「水戸部君？」にっこり笑う彼。ああ、これ、お返しか。『うちにもう少しあるけど、来る？』震えた携帯の画面とココアパウダーを舐める彼の指先、どっちを見たらいい？

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【日向先生】誰もいない社会科準備室で渡されたのが、この人のせめてもの特別扱い、だったのかもしれない。「俺はお前の、…先生、だからな。気持ちは嬉しかったよ」私の先生だって言うなら、この涙は全部先生のものにして。泣きやむまでここにいて。そうしたら、先生の大切な生徒に戻ってあげるから。

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【伊月】ホワイトデーなんて気にする歳でもない。（男性社員一同からはもうもらったしな）目線の先にはクッキーの袋。「お疲れ様です」耳触りのいい声に心臓が跳ねて。「これ。バレンタインはありがとうございました」ふわりと香るコーヒーの香り。「いい豆ですよ。一緒に飲みませんか。…俺の家で」

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【森山】『お花見行こ』コーヒーを淹れてデスクに戻ると、パソコンの画面の右端に桜の形をした付箋。男にしてはやけにきれいな字。「こういうのは直接言わないと不合格でーす」「えー？秘密っぽくてよくない？」「いや公言してるし」渡した書類に貼った付箋に気づくのはいつ？『車出してくれるなら』