ついったSS

クロノ @c_hrono

高校に入って間もない彼はバレー一筋で、他のことにあまり関心が無い。少しだけ、こっちも見てくれてもいいのに。そんな下心で思わず彼に触ってしまった。拒否されなかったのをいいことにそのまま髪を撫でてみる。不思議そうな目の君は、私の熱情など、きっとまだ知らない。 @yuko_shina

クロノ @c_hrono

夢の中で肩を叩かれた。「降りなくていいの？」その声で覚醒する。顔を上げると、バスが減速していた。危ない降り過ごす、と慌てて立ち上がって飛び降りる。起こしてくれた名も知らぬ彼女へ窓越しに頭を下げる。いつも同じバスにいる、恐らく年上の彼女。明日名前を聞いてみよう。「午前六時」

クロノ @c_hrono

王様がいた。誰より優れた才能を持ち、コートを支配する王様。理想を突き詰め、人を動かし、思い通り動かぬ者は突き放す。独裁は人の顔を曇らせた。王様は独りになる。彼の権力が消えていく。もう少し後に温かい光を浴びることをまだ、知らないままで。「世界が終わる五秒前」 @yuko_shina

クロノ @c_hrono

その名の通り、明るくまっすぐ突き進む日向。その光を浴びて活きる影山。俺は…今の俺には、目が眩んでしまう。だって俺は、待っている。捨てきれないでいる。あり得ないなんて言わせない。西から昇る朝日を。あのうるさい笑い声も、大きな背骨が唸る姿も。「眩しくて見えない」 @lostazure

クロノ @c_hrono

友人は「彼女よりアメフト優先の男って」と呆れてたけど、私だけが知っている事がある。どこにいても必ず試合前に私を見つけて、小さく拳を掲げてくれること。彼に触れたのは2週間前。それでいい。ロデオの様に勇ましく駆ける、君が好き。「触れ合うことすらできやしない」 @Hibiki0510

クロノ @c_hrono

夕方の帰宅ラッシュ。人という人が波のようにうねり、私も泡として飲み込んでいく。10年も前の恋なんてもう青春という綺麗な思い出としても語れないのに。制服のままの君が、赤い10番を着てボールを蹴ってた君が、あの波の中に、いた気がしたの。「君の声が聴こえた気がした」 @yauzzz

クロノ @c_hrono

問いかけられて、改めて考えていた。大事なものが、俺にはたくさんある。ああ、大切だよ。家族も、友達も、チームメイトも。そして、ここも。 全部背負ってやる。俺はいつでもフィールドの一番後ろで、ひとつも残さず見ててやる。…ここは通さない。だから安心して、走れ。／守るべきもの #渋誕

クロノ @c_hrono

彼が振り返って目が合うと、喉の奥がぎゅっとした。顔を隠す様に下を向く。大きな、大きな背中。彼の背負ってる重さはきっと彼にしかわからないのに。触れたかった。面白いほど当たり前に好きになった。止まれない、わけではない。けれど確実に、あのひとの元へ進んでいく。／ゆるやかな坂道 #渋誕

クロノ @c_hrono

俺の肩に頭を乗せたまま、君は携帯をいじってる。「メール？」「うん、三上がノート貸せって」瞬殺で携帯を取り上げる。「あ！…もー」呆れた様な目で俺を見てから、観念して目を閉じた。「まり」「真ん中だけは、開けといて」広い広い君の世界。あったかい君の世界。／世界の中心は俺

クロノ @c_hrono

せんぱい、と声をかけようとしたけど、黒川に止められた。わかってる。わかってるよ、でも。…あの人が目指したもの。黒川や畑達が描いてたもの。俺も一緒に追いかけたくて、背中の10に見合う力が欲しくて、でも。…砂と汗を拭ったはずの指先から、とても綺麗な、滴が落ちた。／冷たい指先

クロノ @c_hrono

「明日は天変地異でも起こるかしら？あんたが女の子を断るなんて」「いやあ、生憎俺にも好みってのがあってね」嘘おっしゃい、と一喝。「大事だから、触れないんでしょ」「いい加減腹くくりなさいよ」…だってさ、あいつただの人間のくせに、魔界の王子の俺になんて言ったと思う？／傷つけてもいいから

クロノ @c_hrono

少し前に流行った歌。テレビの前で口ずさむと、彼はいつもの無表情のままこちらを向いた。歌の歌詞を理論で説き明かそうとするのは、1年前にやめてくれた。「百年先まで愛せるかはわからないけど、今、百年分愛することはできるよ」彼は少し笑って、冷めた珈琲を手に取った。／百年の恋って言うけれど

クロノ @c_hrono

横顔が好きだって言ったら「お前Mだったの」って言われた。とりあえず一馬だけ殴っといた。そうじゃなくて、隣の席だから一番見てるのは横顔なんだよ。…ちょっとは、俺の方見ないかな。「…あのね、恥ずかしいから、見ないで」ああもう、そんな顔されたら、ますます、／こんなに好きにさせておいて

クロノ @c_hrono

暴れていたんだ、思いっきり。胸の奥底から、怒りの様な、喜びの様な、ドロドロした熱いものが込み上げ、『敵』が頭を垂れる様を見て笑っていた。急に頭に激痛が走った。振り払うと、がくんと全身が揺れた。見慣れた天井。鮮明になる痛み。ああそうだ、俺は、負けたんだ。／朝になった、夢じゃなかった