人は、「目に見えないもの」を自分の都合のいいように解釈するものです。幽霊とか、超常現象とか――服の下の身体のラインとか
はぁ……。と漬け物石くらいの重量はあるであろう溜息をつくめたんの顔は、まるで劇画調マンガ全盛期のような深い彫りと影に覆われていました。悲壮感漂う痛々しいその姿。ずん子が咄嗟にフォローに入りかけますが、めたんは反射的に、それを制しました。
2012-08-01 17:52:15別に、構わないの。わたくしの「還る場所――実家――」が没落してからもう三年だし、こうやって「生死の境界に息を潜めて暮らす――サバイバル――」のにも慣れたものよ。とりあえず、植物にキスしてエネルギー吹き込んでおけば縄張りの目印代わりにはなってくれるし。
2012-08-01 17:52:30摘み取られた花の根っこ、茎、花弁がウネウネ動いて、まるで動物のように暴れ始めます。よく見ると、先ほどからずん子たちが追いかけてきた謎の発光体も、めたんが作った縄張り感知器のようでした。
2012-08-01 17:53:41まるで意思を持った生命体のようにウネウネ動く謎の花は、発光しながら「縄張り」の偵察へと向かいました。確かに、めたんの能力を実用化するために、生命を与えられたエアコンが拗ねたり、ガスコンロが笑顔で語りかけてきたりしても――なんというか不気味です。一般受けはしません。
2012-08-01 17:55:50幽霊は科学的には存在しないそれは多くの場合において受け手の人間の錯視であり幻聴であり思い込みの産物であるのだそうだからあたしの目の前にあるこの白い発光体は幽霊ではなくあたし自身の錯視であるがゆえにあたしは勇気を振り絞ってその正体を確認しなければならないイタコとして姉としてなにより
2012-08-01 17:56:21――世界には二つの事象が存在する「科学的な」ものと「非科学的な」ものなのだそして非科学的なものはいずれ科学的なものに駆逐される運命なのださあきりたん、お前はその一歩を踏み出せ非科学的な現象を科学的に説明するのださすれば世界はより一層の秩序と清廉さでもって君を迎え入れてくれるだろう
2012-08-01 17:56:40白目を剥いて泡を吹きながらブツブツブツブツブツと呟き続けているイタコ姉さまときりたんは、傍から見ると彼女たち自身が妖怪です。さすがに放ってはおけません。
2012-08-01 17:56:59戸惑っていた二人の姉妹の視線が重なります。お互いの額の汗、乱れた和服、そして何よりいつもより青白いお互いの顔色には、いまだ恐怖の痕が生々しく残っています。お互いの姿を確認することで、二人は、全てを思い出しました。
2012-08-01 17:59:04――……ほう。タコさんの目には、そういう風に映ったということですか。やはり人間とは起きた現象を都合良く解釈するものですね。自分が怖がって気絶した罪を、わたしになすりつけるなんて……。
2012-08-01 17:59:46