W. イースタリーを介して経済発展を考える

W. イースタリーの「傲慢な援助」(Whiteman's Burden)をきっかけに @hideomitanaka 先生と @hiyori13 さんのやりとり。
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田中秀臣 @hidetomitanaka

だいぶ前に本を頂戴しながらもブログでまともにとりあげていない(でもとても有意義な本)が三冊ある。要するに読む時間がないのでここまでずるずる来ている。ひとつは、イースタリーの『傲慢な援助』。日本ではジェフリー・サックスの方が開発援助では人気が高いが、イースタリーはサックスを批判。

2010-07-11 16:31:49
田中秀臣 @hidetomitanaka

ジェフリー・サックスの手法を貧困の罠をビックプッシュ(500億ドルの海外援助)で脱出する方法とし、その根幹的な思想をユートピア的社会工学と、イースタリーは評する。対して、彼は市場設計的な発想(経済主体のインセンティヴ重視)で、思想的には段階的民主改革と表現している。

2010-07-11 16:36:04
田中秀臣 @hidetomitanaka

この段階的民主改革という表現は、例えば林穀夫が『中国の経済発展』やスティグリッツがIMF批判の文脈でよく使用した「漸進的改革」と同じもの。例えば中国のように市場経済化を既得権との調整を試行錯誤的に行いながらすすめていくというもの。

2010-07-11 16:41:01
田中秀臣 @hidetomitanaka

イースタリーの批判するビックプッシュ的発想は、別に発展途上国だけの問題ではない。例えばイースタリーは、サックス的な経済思想は、もともと、トルーマン大統領が東西冷戦を背景にして行った援助計画に起源があること、その有力な経済学者としてロストウをあげている。

2010-07-11 16:43:03
田中秀臣 @hidetomitanaka

ロストウの経済発展段階論は、形をかえて、その後の先進国での経済政策、特に産業政策といわれる一連の経済政策としていまも命脈を保っている。ロストウから例えば、意識的に村上泰亮、チャーマーズ・ジョンストンなどのリビジョナリストにも流れている。一番の受益者は通産省ー経済産業省だが。

2010-07-11 16:46:11
田中秀臣 @hidetomitanaka

だから「官民あげてのなんとか戦略」や産学提携のなんとか政策とかは、ある意味でロストウの亡霊ー先進国(日本)版のビックプッシュの残響なのである。

2010-07-11 16:47:25
田中秀臣 @hidetomitanaka

僕も過去のものとか10年前までは思ってましたが、ロストウの思想は、イースタリーによれば開発援助のホットイシューであり、また日本でも同様みたいですRT @yumemirukakashi 学生のころ角山栄先生が「take-off」の概念だけが残った、と評しておられたのを思い出します

2010-07-11 16:57:35
@hiyori13

@hidetomitanaka でも日本や東アジアや東欧が、あるとき突然大幅に発展したのは事実なので、テイクオフやビッグプッシュを否定するのもむずかしい。それにイースタリー流のちまちま手取り足取りインセンティブ補修をいつまでも続けろって説も、開発援助はガキのおもりじゃないんだし…

2010-07-11 17:30:55
田中秀臣 @hidetomitanaka

テイクオフがゼロ近傍成長からの持続的な成長だとすると、それを達成したのは日本だけ、とイースタリーはいってますよね。これはそうでは?RT @hiyori13 でも日本や東アジアや東欧が、あるとき突然大幅に発展したのは事実なので、テイクオフやビッグプッシュを否定するのもむずかしい

2010-07-11 18:09:58
田中秀臣 @hidetomitanaka

あとビックプッシュは海外援助の巨額な支援が高い経済発展をもたらす(=追加的な支援はより大きな成長率を生み出す)ということなので、これも日本も東アジアも東欧も異なるのではないでしょうか? 日本だと50年代後半からの高成長とビックプッシュの高成長は違うものでしょう@hiyori13

2010-07-11 18:12:02
@hiyori13

@hidetomitanaka うーん、定義論になっちゃうんですが、開発援助でビッグプッシュすべてを実現しよう/できると思っている論者はさすがにいないと思います。

2010-07-11 19:29:26
田中秀臣 @hidetomitanaka

あえてイースタリー寄りでいきますと、彼もすべてこまごましたインセンティブ付けともいえないみたいですよ。緊急なものにはどかんといくのもありかもしれません。ただ彼が漸進的市場改革と段階的民主改革とを等価で考えているところは僕はちょっと疑問です。@hiyori13

2010-07-11 21:34:31