八 シリアルキラー

恐怖体験語り場【@horror_taiken】にリプライで頂いた体験を纏めています。 蝋燭八本目
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ヘルゴスチン(寝具) @xing_pix

@horror_taiken オカルトじゃなくてもいい、ということなので怖い犬の話をする。前もって断っておくと、私の体験じゃなくて母の体験談になるんだけど、これが母から聞いた中では一番怖い話だ、と思う。

2012-08-04 15:28:49
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@horror_taiken 昔、母がまだ学生だったころの話。母の実家は東京郊外の農村の中心部から離れた丘の中腹にポツンと立っていた。一番近い隣家は坂の下にある養鶏場だったが、それも夜間になれば人気がなくなる程度だったから、当時はろくに街灯もなかった。

2012-08-04 15:41:13
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@horror_taiken ある晩、その養鶏場から鶏たちの異様な声が聞こえてきた。聞いたことのない、あまりに妙な声だったので不振に思い翌朝、家人が養鶏場の管理人に尋ねると、実はその晩、鶏がなにかの動物に襲われて鶏が死んだという話だった。

2012-08-04 15:44:26
ヘルゴスチン(寝具) @xing_pix

@horror_taiken 母の家も養鶏場の周囲も鬱蒼とした木立に覆われているので、狸やテンが鶏を襲うことがまれにあった。基本、野生動物は鶏を食べる為に鶏を襲う。それが今回は数十匹の鶏が籠の中で頭だけをちぎり取られて死んでいた。頭は食べられることもなく床の上に落ちていた。

2012-08-04 15:49:42
ヘルゴスチン(寝具) @xing_pix

@horror_taiken 胴体と首の断面を確認するかぎりでは、刃物ではなく、何かの動物が頭だけ噛み切ったようだった。

2012-08-04 15:53:19
ヘルゴスチン(寝具) @xing_pix

@horror_taiken 翌日は何事も無く、なにやら妙なこともあるという話になったが、翌週、その翌週にも同じような事件が発生した。間の悪いことに管理人は雇われ人で、養鶏場のオーナーの意向がなければ、どうしても夜引き上げざるを得ないということだった。

2012-08-04 15:58:42
ヘルゴスチン(寝具) @xing_pix

@horror_taiken しかも、日をおうごとに鶏の被害数は増えていくようだった。最初は手探りだったのが段々慣れ始めたという印象だ。このままでは最悪、1晩で百匹単位で鶏が死んでしまう。村の青年団も警戒しはじめたが、現場にかけつける前に犯人は姿を消してしまう。

2012-08-04 16:02:20
ヘルゴスチン(寝具) @xing_pix

@horror_taiken そんな状況の中、養鶏場に一番近い家である母の家は、犯行の時間になると必ず鶏の断末魔が聞こえるという好立地にあった。職業・新聞記者である祖父は元々イベントに飢えており、この事件にエキサイトしていた。この手で犯人を捕まえるのだ!

2012-08-04 16:06:39
ヘルゴスチン(寝具) @xing_pix

@horror_taiken 祖父の指令で、何故か母も捕り物に強制参加することになったが、確かに毎週鶏の断末魔を聞かされてはたまらない。

2012-08-04 16:08:47
ヘルゴスチン(寝具) @xing_pix

@horror_taiken そうして待つこと数日後の晩、養鶏場からの断末魔が聞こえ始めた。鶏シリアルキラーの犯行は十分から三〇分に満たない。明かりに気づくと逃げられるので、声がしたら無灯・忍び足で接近する。月明かり以外ない暗い道がデフォルトの地元民なので移動には困らない。

2012-08-04 16:10:24
ヘルゴスチン(寝具) @xing_pix

@horror_taiken 薪を手に無人の養鶏場に足を踏み入れ、祖父と母は二手に分かれてラックの間を探し回った。周囲の鶏は全て絞め殺されるような異様な声を発している。養鶏場内部にはところどころに裸電球がついているが基本うすぼんやりと暗かった。

2012-08-04 16:16:25
ヘルゴスチン(寝具) @xing_pix

@horror_taiken 「そっちにいったぞ!」という祖父の声がして、母が後ろを振り向くと目の前に真っ黒い何かの動物がいた。ハッハッハという呼吸音が近かった。あまりに薄暗かったので、はっきりと視認できなかったが、この辺りにいる野生動物にしてはあまりに大きすぎた。

2012-08-04 16:21:53
ヘルゴスチン(寝具) @xing_pix

@horror_taiken 母が反射的に手にした薪でその動物の頭をなぐりつけると、動物は驚いたようですぐに養鶏場を飛び出し木立に紛れ込んでしまった。その後しばらくして青年団がかけつけたが、謎の動物の行方は結局判らずじまいだった。

2012-08-04 16:23:12
ヘルゴスチン(寝具) @xing_pix

@horror_taiken 幸いなことに、それから養鶏場襲撃はぱったりと途絶えた。養鶏場は大損害だったが、被害はこれ以上でることはなくなった。鶏シリアルキラーの正体は謎のままだったが、どうやら「洋犬であろう」ということに落ち着いた。

2012-08-04 16:26:46
ヘルゴスチン(寝具) @xing_pix

@horror_taiken これからは話題に飢えた祖父の推論になる。鶏シリアルキラーは鶏を殺しはしたが一切食べなかった。普通の動物や野犬だったら食べる為に襲うはずだが、鶏シリアルキラーは明らかに殺すのを楽しんでいた。

2012-08-04 16:29:16
ヘルゴスチン(寝具) @xing_pix

@horror_taiken さらには夜帰ってしまう管理人も手をこまねいていたわけではない。マニュアルどおり、トラバサミをしかけていた(当時は合法)。対狸戦法として効果のある対策だったが、鶏シリアルキラーはトラバサミのエサもスルーしている。犯行時には空腹ではなく満腹だったのだ。

2012-08-04 16:31:16
ヘルゴスチン(寝具) @xing_pix

@horror_taiken 母の実家のある東京郊外の土地はひなびた農村だったが、明治の頃の芸術家の運動や都心からの微妙な距離感から、いわゆる金持ちの家が点在していた。中には銃による狩猟、猟犬を飼っている人間も多い…

2012-08-04 16:36:12
ヘルゴスチン(寝具) @xing_pix

@horror_taiken 鶏シリアルキラーはそんな家の犬ではなかったか。日中は庭に繋いでおくが夜間放すこともあったのではないか。それも一週間のうちの決まった曜日に放していたのではないか。今となっては母の記憶も判然としないが、一週間に一度、養鶏場が襲われたのは確かだった。

2012-08-04 16:38:03
ヘルゴスチン(寝具) @xing_pix

@horror_taiken さすがにこの無責任な飼い主も、犬がボコボコの血塗れになって帰れば異常に気がついたのではなかろうか。かくして、農村を震撼とさせた鶏シリアルキラーが二度と現れることはなかった。めでたしめでたし。

2012-08-04 16:41:53