笠井潔さん:清涼院流水への評価の変遷について

ミステリ作家の笠井潔( @kiyoshikasai )さんが、清涼院流水氏に対する評価の変化の背景をツイートしてたのが興味深かったのでまとめました。 最後は東浩紀氏についても少し触れられています。
書籍 文学 探偵小説 笠井潔 評論 ミステリ
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笠井潔 @kiyoshikasai
つながりやエゴサーチで引っかかった中傷は無視することにしているが、清涼院評価を誤ったことを、笠井は自己批判していないとかほざくような無知蒙昧な輩には、『探偵小説と記号的人物』を読めといいたい。
笠井潔 @kiyoshikasai
マルクス評価を変えたとき『テロルの現象学』を書いた。同じように、清涼院評価を変えたとき『探偵小説と記号的人物』を書いた。知りもしないことを偉そうにほざく、下らない人間はどこにでもいるということだろうが。
笠井潔 @kiyoshikasai
このことは宇山秀雄氏の葬儀の際、清涼院自身にも伝えたが、そもそも清涼院が世に出るきっかけを作ったのは笠井である。兄弟の先輩たちは、清涼院が自作を一挙掲載した京大ミス研の部誌を、意図的か偶然かは知らないが、宇山氏に渡していなかった。
笠井潔 @kiyoshikasai
中身の評価はともかく、筆力のある新人ですよといって、宇山氏に渡したのは笠井だった。
笠井潔 @kiyoshikasai
新本格バッシングのときもそうだったが、反感を抱く連中は公に批判を書こうとしない。清涼院野場合も、業界での陰口が蔓延していた。こうした風土はジャンルを腐らせる。京大の先輩に、そこまでいうなら、ちゃんと批判を書けよといった。「いや、後輩の足はひっぱりたくないから」という返答だった。
笠井潔 @kiyoshikasai
わが家でスキーツアーをやったときのことで、先輩が清涼院を誹謗している場には、新本格関係の作家や評論家や編集者が20人もいた。まだ第一作が出る前のことだ。その話を聴いた編集者、その他は、だったら読まなくていいと思ったろう。
笠井潔 @kiyoshikasai
清涼院を褒めたりすれば、すでにプロ作家である諸先輩の逆鱗に触れかねないと思ったかも知れない。立派に足を引っぱっているわけで、こちらのほうが公的な批判を書かれるより、新人にとっては実効的な打撃になる。
笠井潔 @kiyoshikasai
ジャンルの腐敗を阻止するため、そのころ目に着いた本格としての「構築なき脱構築」派の一人として、だれもやらない清涼院批判を書いた。清涼院一人を標的にしていたわけではない。80年代ポストモダンの一週遅れの反復にすぎない「構築なき脱構築」派の一人と、清涼院を見誤ったのは間違っていた。
博多ねりけし @nnkeshi
笠井潔の、今ツイートで話題にしてる評論だけはちょうど去年読んだけど、本人がまさに今言ってる通り「自分は清涼院流水や以降出てきたメフィスト系の作家に対して懐疑的に見てきたけど、少なくとも無視できない存在だし一部に対しては考察を改める必要がある」と要約できる内容だったと思う
笠井潔 @kiyoshikasai
そう思ったのは2002年のことで、清涼院のフォロワーとして脱格系が袋叩きになっていたときのことだ。刊行されている時評集を読めば判るが、舞城も西尾もデビュー当時から注目し評価していた。これらの新人の存在を無視しては、本格の将来は論じられないと考え始めた。
笠井潔 @kiyoshikasai
キャラ性やゲーム性などなど、21世紀探偵小説にとって不可避である新たな問題を提起した新人が、清涼院から出発しているとすれば、清涼院評価を改めなければならない。そうして書いたのが『探偵小説と記号的人物』で、作中ではかつての清涼院評価の誤りを公に自己批判している。
笠井潔 @kiyoshikasai
こういう事情も知らない阿呆が、一面的な思いこみで他人を中傷する。勝手にしろと言うしかない。怒り心頭で連続アップしたので、ミスタッチや変換間違いも多いだろうが、支離滅裂ではないはず。文意はとれるだろう。不愉快なので、これからしばらくつながりは見ないことにする。
てっこ @PS_tekkoudan
笠井潔氏がツイートで述べていたように以前抱いていた清涼院に対する考え一部改めないといけないということが『探偵小説と記号的人物』には書かれている。ミネルヴァシリーズは3作目と5作目を読んだけど、1、2、4作目も読まなきゃ。
笠井潔 @kiyoshikasai
ちなみに清涼院は、笠井の自己批判を受けいれたうえで、阪神大震災が創作のきっかけだったことを正確に理解してもらいたいと注文していた。この点は『21世紀探偵小説』で飯田一史が検証している。
笠井潔 @kiyoshikasai
大塚=清涼院には、マンガのノベライズ( 『20世紀探偵神話』だったか)で、笠井は公安だとか、からかわれたことがある。この程度のことは笑って水に流す程度の度量は、生涯一ガキにもある。「報復」(笑)として、大塚をモデル人物にしてからかったし。
笠井潔 @kiyoshikasai
しかし、どうして清涼院の評価を誤ったのだろう。断続的に20年ほど続けてきた時評家として、有力新人を見抜いてきた自信がある。伊坂幸太郎や舞城王太郎から辻村深月にいたるまで、第一作か第二作の時点で、担当していた長文書評(約15枚で、評論としても読める)で取りあげている。
笠井潔 @kiyoshikasai
この点は、4冊ある時評集を読んでもらえれば、誰にも確認できることだ。しかし清涼院の場合は判断が間違っていた。若いころから鍛えてきた評価基準が通用しないほど、根本的に新しかったのだろう。この新しさを頑固オヤジ的に、自分の世代経験を特権化して、自己保身的に無視するという選択はある。
笠井潔 @kiyoshikasai
しかし、それは間違っていると思った。清涼院の新しさを理解できなかった自分のほうを、21世紀的に改造しなければならないと。そう思えたのは、なにも失うものがない生涯一ガキだったからだ。キャラ性やゲーム性に無自覚だった自分を改造するため、『探偵小説と記号的人物』を書いた。
笠井潔 @kiyoshikasai
これには、当時つきあいのあった東浩紀の影響も大きい。この点、いまでは遠くに離れてしまったが、東には感謝している。とはいえ、時代はさらに変貌しつつある。大塚英志や東浩紀、あるいは清涼院から西尾維新にいたる世代もまた、自分を変えようとしなければ時代に追い越されるだろう。
笠井潔 @kiyoshikasai
東の場合、オタクの代弁者から『一般意志2・0』への転換が、それに当たるのかも しれない。3・11以降の事態について、東より先に自前憲法運動をやっていた大塚は、長い沈黙を続けている。大塚の沈黙は、「おたく」左翼的な立ち位置が、失効したという自覚の結果なのだろう。
笠井潔 @kiyoshikasai
東の転換は時代的な嗅覚の産物だとしても、ラディカルとはいえない。この間のデモに対する否定的態度が、それを示している。理論的にいえばカール・シュミットだが、ようするに民主主義義国家はデモが作ったという事実を見ようとしない、その精神分析的な意味での頑強な「否認」の姿勢に先にはない。
笠井潔 @kiyoshikasai
オタクの代弁者から立場を転換したとしても、デモなんて嫌いだ、やっても効果はない、やるのはバカだけだというポストモダン世代の固定観念に、ずっぽりとはまりこんでいる。そういう自分が時代遅れなら、それでもいいと居直っているふしもある。そうした理念的自己保身は、思想的でない。
笠井潔 @kiyoshikasai
糸井重里の場合と同じで、そうした頑固さは嫌いでない。むしろ東が、坂本龍一や中沢新一のように反原発の旗振り役に転身していたら、より深い嫌悪感を感じたろう。しかし、それでも、国家の起源を見ようとしない、考えようとしない東思想の脆弱性は問題だ。
笠井潔 @kiyoshikasai
公共性論との絡みで、『一般意志2・0』や東憲法論の批判は、今月中にきちんと書くつもり。掲載誌が出るの10月になるだろうが。

コメント

アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
笠井潔が『笠井は自己批判していないとかほざくような無知蒙昧な輩』とか『知りもしないことを偉そうにほざく、下らない人間』とか、熱くなって「陰口」しているのは、私のことです。そうですね、笠井さん?
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
無視するんなら、完全に無視しきるくらいの堪え性はあると思ってたんですが、買いかぶりだったようですね。笠井潔自身の本(供述)でしか当時を知り得ない一般読者や、新しいお仲間は騙せても、当時を知っている人は騙せないと思いますよ。
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
『「構築なき脱構築」派の一人として、だれもやらない清涼院批判を書いた。』これがつまり、竹本健治の影響で、というやつで、当時、業界で評判の芳しくなかった、ちょっと変なミステリを書く若手がここに入れられた。しかし、西尾維新や舞城王太郎などが登場し、清涼院へのオマージュを捧げはじめ、新本格の退潮がハッキリしてくると、笠井潔の論調も変わり、清涼院への評価も変わってきた。この時、竹本健治云々はなんら清算されなかった。
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
つまり、問題なのは笠井潔の「清涼院流水」評価は、それが批判であれ肯定であれ、状況によってどうにでもなる、いい加減な物だったということである。『天啓の器』における竹本健治描写に明らかなように、笠井は竹本健治を批判したいと「構築なき脱構築」派などというものを捏ち上げ、そこへ当時、業界的に不人気だった清涼院を放り込んだ。また、西尾維新や舞城王太郎、佐藤友哉などを持ち上げる方向で、清涼院への評価の変更を行ったという、じつにいい加減な話だ。
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
ここで感想を述べている何人かの人も、笠井潔の誘導にしたがって、笠井が軌道修正し始めた時期のものしか読んでおらず、全体の流れなど把握してはいない。もちろん、笠井潔の来歴など知らない。笠井潔がかつて、柄谷行人との対談で「学生運動をやってた頃、党派の仲間の前で〈理屈なら何とでもつけられる〉と言ったら、顰蹙を買いました」と自慢げに思い出話をしていたことも知らないだろう。昔そんな考え方で「革命」を論じていた人間が、そう簡単に変わるとでも思うのだろうか?
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
笠井潔はしばしば、学生運動の敗北、そして連合赤軍事件の悲惨な結末を、思想的に突き詰めたのは自分だけで、その成果が『テロルの現象学』だというようなことを臆面もなく言うが、これは学生運動に参加した人たちから見れば、ずいぶん得手勝手な「自己賛美」としか映らないだろう。
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
あまり世間をご存知ではないオタク的読者は気にもしないだろうが、リーダーが存在しない建前となっている「探偵小説研究会」にしても「限界研(旧 限界小説研究会)」にしても、そのサークル名じたいに、笠井潔の名が特権的に刻まれていることくらいは、気づいて欲しい。当時、巽昌章も法月綸太郎も「探偵小説」という言葉は使っていなかったのに「探偵小説研究会」なのだ。「限界小説」などというネーミングセンスが誰のものかも、おのずと明らかだろう。
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
つまり、建前と実際とは、おのずと違うのだ、これは「社会人の常識」。で、笠井潔自身の語る「清涼院流水評価の変更理由」も、もちろん、ご本人に都合の良い「建前」である。それを鵜呑みにするのは、被告なり原告なりの供述を、一方的に鵜呑みにするのと同じ、初歩的な誤りであり、そんなことでは本は読めない。
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
もちろん、当時、笠井潔は日本の本格ミステリ界の理論的支柱であり、重鎮中の重鎮だから、ミステリ業界には、そんな笠井潔を陰口する人はいても、公然と批判するものなどいなかった。私は、部外者だから、平気でやれたのだ。で、清涼院にしても批判された過去を思えば内心穏やかではなかったろうが、良い方に評価が変わったのだから、今更ことを荒立てる必要は無いとなったのは、当然のこと。
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
しかし、その清涼院にしても、後に『ぶらんでぃっしゅ?』で笠井潔を揶揄しているのだが、そのことを知っている人が、ここに何人いるだろうか?http://8010.teacup.com/aleksey/bbs/665
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
この事実を的確に指摘したのは、はらぴょん氏である。ぜひご参照願いたい。→ 眼が悪い~『清涼院流水のぶらんでぃっしゅ?』に関する妄言http://d.hatena.ne.jp/dzogchen/20051231
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
なお、笠井潔と東浩紀の往復書簡『動物化する世界の中で』を読んだことのない人には、こちらをご紹介したい。引用がたくさんあって、わかりやすいはずだ。→笠井潔が、真に望んだこと。 一一 往復書簡『動物化する世界の中で』に見る、笠井潔の欺瞞性(http://homepage2.nifty.com/aleksey/LIBRA/kasai_higasi.html
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
東浩紀は、この往復書簡でこう書いている『ところが、いまこのタイミングで佐藤氏の話題が出されたことの背景には、いささか厄介な本格推理業界の事情があるように思います(読者のみなさんには申し訳ないですが、その詳しい説明は省略します)』
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
一方、笠井潔は流行ジャンルに属している自身を臆面もなく誇り、思想の世界を見下して、こう書いている。『本格ミステリの小世界は、たとえば現代思想の小世界と比較して、はるかに風通しがいいと僕は感じています。この相違には、業界の構成者の品性や性格の問題というよりも、もう少し構造的なものがある。簡単にいえば、本の売れ行きが一桁か、ある場合には二桁以上も違うという事実でしょう。市場のヤスリにかけられているかどうかは、決定的な相違ですから。』 
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
当時はこのように、東浩紀の属する「思想」の世界を、「数」の権威で見下せた。しかし、いまでは形勢は逆転して、東浩紀はオタクのカリスマであり、日本思想界のリーダーの一人。一方、笠井潔は「限界研」を拠点とする、時代遅れの思想家だ。その読者数は『二桁』以上の開きがあるだろう。昔の自身の「暴論」が、ブーメランとなって還ってきたかたちである。
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
さて、ご意見のある方は、どなたでもどうぞ。私は、笠井潔のように「罵倒」したりはしませんから、どうぞご安心を。
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
で、ここの書き込みは、早晩削除される可能性が高いから、ログは採っておきます。
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
笠井潔が『笠井は自己批判していないとかほざくような無知蒙昧な輩』とか『知りもしないことを偉そうにほざく、下らない人間』とか、熱くなって「陰口」していたのは、私のことではなかったようです。それは、私が上で紹介している、はらぴょんこと原田忠男‏ @harapion 氏のことであった。
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
私と同様、昔から笠井潔を追っかけてきた笠井ファンである原田氏 @harapion も、笠井潔の「歴史修正主義的」発言には我慢がならず、本年8月6日に、笠井を批判するツイートを3度ほどしているが、笠井の「陰口」は、これに対してのものであったようだ。
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
ということは、やっぱり笠井潔は、私を完全黙殺し続けているということになる。これは自慢できることのようにも、ちょっと寂しいことのようにも思える。でもまあ、笠井潔ご本人はもちろん、「限界研」のお仲間にまで「黙殺指示」を出してくれているというのは、じつに光栄な待遇だと考えていいだろう(笑)。
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
@Neka518さま、たくさんコメントしてしまい、申し訳ありません。決して貴方に対しては、何ら含むところはありません。貴方が笠井潔のファンであったとしても、そうです。ただ、私は古いミステリファンであり、古い笠井潔ファンとして、本にはなっていない「歴史的事実」を明らかにしたかっただけなのです。ここに書いたことも、初耳だった方は少なくないはずだと思います。
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
私も知らなかったんだけど、清涼院流水に詳しい原田氏によると、清涼院は『探偵儀式 THE NOVEL』という作品で、笠井潔とその取り巻き批判をしてたんですね。 RT @harapion ええっと、笠井さんから無知蒙昧な輩と評されたはらぴょんですが、この問題について関心のある方は、清涼院さんの「探偵儀式 THE NOVEL」という小説、重版はされてないので入手困難本ですが、頑張って入手して読んでくださいね。http://t.co/f8SIX745
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月29日
原田氏のは「探偵儀式 THE NOVEL」評は、これ必読です! RT 「探偵儀式 THE NOVEL」に対する私の論評はこちら。『清涼院流水 VS 本格ミステリ作家クラブ』 http://t.co/VKr73ucD 
アレクセイ @alekseytanaka 2012年8月30日
「こちらの話題もおすすめ!」から流れてしまいそうなので、私の「まとめ」をこちらでもご紹介しておく。→「マルクス葬送派」笠井潔と「笠井潔葬送派」の私http://togetter.com/li/362605?f=reco1
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