「キョート・ヘル・オン・アース」破「ライジング・タイド」#6

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スローハンドはチョップ突きを繰り出した。心臓をくり抜く。一撃。二撃。三撃。無傷。膝を蹴り砕こうとする。だが弾き返される。股間に蹴りを繰り出す。一撃。二撃。三撃。四撃。無傷!ゴライアスは反撃せず、両掌を上向け腰の横に定めた姿勢を維持する。……ムテキ・アティチュードか!? 25

2012-08-07 14:11:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スローハンドは広間にエントリーしてきたニンジャ達が包囲にかかっている事に気づいている。ゴライアス同様、ロード直属ないしパラゴン傘下のニンジャであろうか。ゴライアスを含め五人。全てがマスターニンジャであろうか?そして踵に再び違和感!間に合わぬ。エネルギースリケンは左踵を破壊! 26

2012-08-07 14:19:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!」スローハンドは呻いた。ヘイスト・ジツ解除!「フーンク……」ゴライアスはムテキ・アティチュードを維持!濁った眼光が見下ろす!四人の新手がアイサツ!「ドーモ。ヴェラーです」「ドーモ。ヘリオンです」「ドーモ。バードゥンです」「ドーモ。ノクターンです」「イヤーッ!」 27

2012-08-07 14:39:11
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スローハンドは再び加速した!彼は傷ついた足を駆り立て、カラテを構えたノクターンのワン・インチ距離に辿り着くと、喉笛を引きちぎって殺し、ヴェラーの側頭部に蹴りを叩き込んだ。バードゥンが後ろからタックルをかけてきた。緩慢だ。スローハンドは蹴ろうとしたが、片足の傷が重い。 28

2012-08-07 14:44:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

バードゥンがスローハンドを捉える。不可思議な重圧がかかる。なんらかのジツだ。加速で振り払うしかない。スローハンドは肘打ちをバードゥンの延髄に叩き込む。二撃入れようとしたが、ヘリオンのヤリめいたサイドキックに対応せねばならぬ。彼は片手でいなす。そこへ丸太めいた拳が飛んで来る。 29

2012-08-07 14:48:39
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ゴライアスだ。バードゥンに動きを封じられたスローハンドは側転で回避できない。裏拳を拳めがけ三度繰り出す。ゴライアスの指骨を二本折った。だが弾き返し切ることができぬ。ガードするしかない。スローハンドは側頭部に腕をそわせ、ゆっくり飛んでくる拳を受ける。ミシミシと腕骨が軋む。 30

2012-08-07 14:52:16
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「……!」スローハンドは顔を歪めた。躱す事ができねばヘイスト・ジツの恩恵は無い。単にゆっくりとした衝撃を受けるだけだ。鎖骨に虹色の刃が生える。スローハンドは己のスリケンをヤバレカバレめいて三枚投げた。出口のパーガトリーの後姿めがけ。パーガトリーは振り返った。 31

2012-08-07 14:57:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

パーガトリーは庇いに入ろうとした部下の一人を制した。必要が無いのだ。……スリケン三枚はパーガトリーのもとへ辿り着くことはなかった。彼の身体の周囲半径1メートルに球状に展開する不可視のカラテ粒子がスリケンを破壊したのである。 32

2012-08-07 15:01:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

パーガトリーは慇懃無礼にオジギし、踵を返して悠々退出する。斜めからゴライアスの逆の手が降って来る。スローハンドは裏拳でこのチョップを打ち返す。一撃。二撃。三撃。ゴライアスの手を破壊。ヘリオンの二度目の蹴り。片手で絡め取り、よろめいているヴェラーめがけ投げ飛ばす。33

2012-08-07 15:05:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ」ヴェラーとヘリオンが倒れ込む。「サヨナラ」断末魔の痙攣を繰り返していたノクターンが爆発四散する。バードゥンの延髄にさらに一撃。拘束力が弱まる。その首を後ろ手に掴み、180度捻じって折り、殺す。虹色の刃が鎖骨を突き破る。スローハンドは耐える。苦痛に耐える。台座! 34

2012-08-07 15:14:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スローハンドは跳躍した。そして手を砕かれ苦しむゴライアスの身体を蹴ってさらに飛んだ。屋根つきの円形台に着地した。パラゴンが陰気な目を細め、カラテで立ちはだかる。ドラゴン・ニンジャが目を見開き、スローハンドを見る。スローハンドはパラゴンのミドルキックをすり抜け、駆ける。ロード。35

2012-08-07 15:20:31
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加速が切れる。「ロード!マイロード!」スローハンドは嗄れ声で訴えた。彼は膝から崩れ落ち、片手を突いた。「イヤーッ!」「グワーッ!」その背をパラゴンの容赦無きストンピングが踏み潰し、釘付けにした。「ロード……ロード……」スローハンドは震えた。白金のキツネオメーンが彼を見た。 36

2012-08-07 15:26:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「サヨナラ!」下ではバードゥンが爆発四散した。パラゴンの踵に容赦なく背中を抉られながら、スローハンドは言葉を絞り出した。「わかっていただきたい……二心など無し……私、私は、私はただ、ヨロシサンの科学力によって、ギルドを……ロードの御力を一層盤石のものに……私は……!」 37

2012-08-07 15:29:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ムフゥーン……」ロードは脈打つ琥珀の玉座に背中をもたせ、恍惚とした呻き声を漏らした。「よいぞ、パラゴン=サン……徐々に満ちておる……甘露であるぞ……」「ハーッ!」スローハンドの背中を踏みつけたまま、パラゴンは片膝をついた。「グワーッ!」スローハンドは苦悶! 38

2012-08-07 15:36:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ロード!どうか、どうかこの毒蛙めの佞言から目を覚まされよ!この者はヨロシサン製薬を理不尽に遠ざけ、ギルドを理不尽なドグマによって支配しようと目論んでおるのです!神話……神話など!なんたる欺瞞!私は真の支配の形を!格差社会の形を知っております!私は……」ロードは片手を上げた。39

2012-08-07 15:42:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

円形屋根に沿った円形カーテンがぐるりと囲い、外界の視線を隔絶した。「ロード……」スローハンドは震えた。「ヨロシサン製薬にこそ……バイオ、バイオテックにこそロードの1000年2000年に渡る無限の支配があるのです!」「マジックモンキーの寓話を知っておるか」ロードは唐突に言った。40

2012-08-07 15:47:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……!」スローハンドは玉座のロードを見上げた。ロードの低い声は常よりも幾分しっかりとしていた。何かがロードの身に起こっている。名状し難い何かが。「マジックモンキーは己の所業の意味に気づく事ができなんだ。己が飛翔する大地が何であったのか気づく事は無かった。余は汝を哀れに思う」41

2012-08-07 16:23:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……?」「ヨロシサン製薬への怒り。パラゴン=サンの私怨であると考えておるな」「私は……バイオテックこそがギルドを、ロードを」「テメッコラー……テメッスッゾコラー!」パラゴンが背中を踏みにじる!「グワーッ!」「よい」ロードはパラゴンを制した。「この者も所詮、哀れな存在である」42

2012-08-07 16:29:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ロードはおもむろにその手を自らの頭の後ろへやると、飾り紐を解き、オメーンを外した。「ニンジャミレニアムの始まりに、私はヨロシサン製薬を完膚なきまでに叩き潰す。これはケジメである」スローハンドはキツネオメーンの下から現れたロードの顔を直視した。年老いたクローンヤクザの顔を。 43

2012-08-07 16:36:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ア……アア……アアア」スローハンドは恐怖のあまり小刻みに震え出した。真実への恐怖であった。クローンヤクザは槽培養され、成人として生まれ出る。そして数年で免疫力を失い、死に至る。年老いたクローンヤクザなどというものは存在せぬ。つまりロードはクローンではない。つまりロードとは。44

2012-08-07 16:46:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドゴジマ・ゼイモンを知っておるかね」ロードはスローハンドを見下ろした。「かつて内閣総理大臣を暗殺したレジェンドヤクザ……それがクローンヤクザの遺伝子提供者だ」「アア……アアア……」「"提供"」ロードは自嘲的に笑った。そして続けた。「つまり、私がドゴジマ・ゼイモンだ」 45

2012-08-07 16:53:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

既に二者は包囲されている。二者がイクサを始めた時と同様だ。だが今度は包囲ニンジャ達は撤収しない。殺しに来たのだ。空はほの白い。夜明けには随分早いにも関わらず。異常な何かが起こっている。キャバアーン!キャバァーン!下方で断続的に異様な音が鳴り響いている。黙示録のラッパめいて。 48

2012-08-07 18:32:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そのまま分断せよ」パーガトリーと名乗った指揮官ニンジャ……当然ながらグランドマスター位階であった……の尊大な立ち振る舞いを、ニンジャスレイヤーは睨み返す。パーガトリーは続ける「おかしな真似をさせるなよ。正義も恥も知らぬクズ犬は敵とも容易くユウジョウする。誇りが無いゆえにな」49

2012-08-07 18:38:48