【MM2R】テツ戦記【あるモヒカン】

2011年末につけていた、MM2Rの妄想プレイ日記。 練習がてらまとめてみた。野バスかわいい。筋肉は正義。
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里村邦彦 @SaTMRa

テツは筋肉とモヒカンを信奉している。武器を使うは咎めまい。道具を使うもよしとしよう。異様な術とて鍛えた技なのだ。だが何故この男は戦いを避けようとしたか。テツにはそれが許せぬ。戦車の砲撃にも耐える肉体、改造だけでこうはゆかぬ。鍛え上げた筋肉が必要だ。何故だ。何故だ。テツは激怒した。

2011-12-15 18:41:50
里村邦彦 @SaTMRa

「ウオオーッ!」テツは咆哮した。「馬鹿なーッ!」爆発。強力な戦車。奇怪な術。魔人、四天王カリョストロの最期であった。襲われていた老婆の遺言、テツには皆目判らぬ。サラとポチが覚えている。テツは安心させるように老婆の手を握り頷いた。老婆の最期に見せた涙、何故か知らずテツの心に沁みた。

2011-12-15 18:52:33
里村邦彦 @SaTMRa

サラは天を仰いだ。テツは向こうで黙々とドラム缶を押している。馬鹿馬鹿しい罠で囚われたグラップル刑務所デスクルス。囚人はドラム缶を押す。名を忘れるまで押す。嫌気。サラはテツを見る。異様に馴染んでいる。ドラム・ドー。あの男、昔これをやって鍛えていたのか。あの狂気めいた筋肉への信仰は。

2011-12-15 20:17:15
里村邦彦 @SaTMRa

「テメエ、名前を思い出せるか」「ムウ?」テツは唸った。何を訊かれたか判らぬ。久々の徹底した基礎トレで、身体に懐かしく心地よい熱。下らぬ質問に煩わされたくなかった。「よし。明日もドラム缶押しだぞムシケラ!」「ムウ」マリアやアパッチもこのように言った。そのようなものだ。テツは頷いた。

2011-12-15 20:17:24
里村邦彦 @SaTMRa

「脱走すンのよ」「ムウ?」テツは唸る。「逃げんのかよ!」ミシカが喚く。サラは頭を振った。そうではない。「この輪っかをぶっ壊せる。コントロール室の前に下水口があった」「ムウ」「下水への道は見つけた。止めたら暴れ放題よ」「それはいい」「いいな!」「いいでしょう」そういうことになった。

2011-12-15 20:34:18
里村邦彦 @SaTMRa

テツは激怒した。己の至らなさにである。幾体もの賞金首を撃ち砕いた。鍛え上げた。思い上がっていた。あの忌々しき自律戦車はテツの筋肉とモヒカンとを撃ち砕いたのである。「奴を斃す」「止めないンだよねえ」「ム」「ヨッシャア!」犬が力を込めて鳴いた。とうとう主人の性分を心得たようであった。

2011-12-15 22:20:21
里村邦彦 @SaTMRa

「ウラーッ!」テツは咆哮した。鉄と火に挑む。強壮なる自律戦車。砦めいた威容。砲弾を嵐。軍勢の如き飛行機械の群れ。スパナスリケン、女衆の火砲が切り裂く。砲弾の抉った傷。筋肉で食い止める。支えるのは信仰だ。慣れ親しんだ死が目の前にある。モヒカンが乱れた。テツは気にせずスパナを構える。

2011-12-15 22:44:03
里村邦彦 @SaTMRa

凌ぎ攻めた時間が長いか短いか判らぬ。テツにもそうだが女衆にもだ。だが到頭、自律要塞が煙を吹いた。「テツ! やンだよ!」「ムウッ!」渾身の力とドラム・ドーを込めたスパナ! 激突、弾倉で誘爆する砲弾! テツはモヒカンを正す。爆音が轟く。「ウム!」「ッター!」「はあ……もうやンないよ」

2011-12-15 22:45:51
里村邦彦 @SaTMRa

レインバレーに二体のヌシあり。すなわち空飛ぶ犬の首と歩く戦艦。テツは勝利の咆哮を上げた。台風めいたチョップの嵐が地上戦艦を叩き割ったのだ。「人間よね、あンた」「ム?」「…私が悪かった」「でも、ここまで来たんだよなあ!」ミシカが言う。「グラップラーのやつらの本拠地だぜ!」「ウム?」

2011-12-16 01:01:27
里村邦彦 @SaTMRa

テツは巨大な脳髄を見た。赤いワイヤフレームの顔が吐き散らすのは、意味の取れぬ呪詛の言葉だ。ミシカはガンをつけ、犬は周囲を警戒していた。警備機械の蠢く気配。「これがグラップラーってわけ?」言うのはサラ。「ムウ」テツにはこの顔の執念が判らぬ。確かなのは、この脳に筋肉がないことである。

2011-12-16 18:47:45
里村邦彦 @SaTMRa

「うががががーっ!」断末魔の悲鳴をあげ、巨漢のモヒカンが崩れ落ちる。サイバネから火を噴き、背負ったボンベに誘爆。爆発四散! 「やった、やったじゃないかよ! テツ!」ミシカの歓声。「ム」テツには判らぬ。あの男が見事なモヒカンであり、筋肉とバイオとサイバネの三位一体であった事の他は。

2011-12-16 19:55:08
里村邦彦 @SaTMRa

「え、そいつって確かさ。テツの」「やめときなよ」ミシカをサラが制した。「ここまで来たらあと一歩なんだ。止める気はないンだろ?」「無論」テツは頷く。未だ筋肉に力が満ちていた。テツはモヒカンと筋肉を信奉する。今やテツは憤怒するモヒカンと筋肉の化身である。ポチは主人に寄り添い高く鳴く。

2011-12-16 19:57:32
里村邦彦 @SaTMRa

テツには彼の亡霊の妄執が判らぬ。消える間際まで、死にたくないと亡霊は叫んだ。判らぬ。死にたくないとは何かが判らぬ。テツには死ぬことが判らぬ。テツは筋肉とモヒカンを信奉している。筋肉を鍛え、魔物と戦い、寝て起きて飯を食い、女の下に通い、鍛え、戦い、寝て起きて飯を食うのが人生である。

2011-12-16 21:50:40
里村邦彦 @SaTMRa

テツは夜明け前に街を出た。そうするのが相応しいように感じたからである。「どこ行くのサ」サラだ。「賞金首を探す。強いだろう」「アシッドバレーの外へ?」「ム」サラは直観した。テツはその信仰に殉じるだろう。戦うだけ戦い死ぬだろう。「置いてくンじゃないよ相棒」「オウ」テツは恥しげに頷く。

2011-12-16 21:54:38
里村邦彦 @SaTMRa

「アニキ、姉御、置いてかないでくれよな!」バウ、と犬が鳴いた。バイク二台と野バスのマツカゼがいた。テツは破顔した。払暁、荒野を車列がゆく。モヒカンを誇らしげに立てた筋肉質の男が先頭だ。あとを二台のバイク、犬が追い、最後にじゃれるようにバスが続く。そして、一行は荒野の果てへ消えた。

2011-12-16 21:59:29