ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/08/19
夕暮れの日差しの中僕と彼女はバスを待っていた。古びたバス停のベンチに座って彼女は夏の盆にはさみしい人がたくさん帰ってくると語った。しばらくしてやって来たバスに僕は乗った。彼女は乗らなかった。僕がさようならと言うと彼女はもう来ちゃ駄目よと笑った。 #twnovel
2012-08-19 00:56:19ダラダラ過ごしているだけで時間が過ぎてしまうことに気づいた自分は、ダラダラ出来なくなる薬を買い、飲んでみた。途端に全ての時間が意味を持ち始めた。読書をし、勉強をし、仕事をしている。時間が異様な密度を持ち始める。どれだけ辛いと感じても、もう逃げ場はなくなっている。 #twnovel
2012-08-19 03:23:40指輪も香水もダメ。諦めるしかない。二人を結ぶアイテムが存在してはいけない。 だからせめてこれくらいはいいよねと、君は私の肩に痕を残す。 かじる。かじる。その痛みを受け入れる。きっと君の心も痛い。ごめんねと言いかける。でも君が先に言う。 「ごめんなさい、好きです」 #twnovel
2012-08-19 11:33:08#twnovel 蝉の鳴き声で目覚める。寝ぼけながらのラジオ体操。冷たい麦茶と何日も続くソーメン。カブトムシに餌をやり、朝顔に水をやる。夏休みの宿題は手付かずで、最終日目前から泣きながら手をつける。懐かしい夏休み。今は遠くなったあの風景を、通りすがりの子供達が過ごしている。
2012-08-19 12:42:45ことばの海なら浮き輪はいらない。大きく息を吸って飛び込んだ。鰯の大群が泳いでいる。弱い魚という字面とは裏腹に陽の光をぎらぎらと跳ね返すそのダンスはとても力強いものだった。急に影が差す。散り散りになる鰯の群れ。その真ん中を特大フォントの鯨が悠々と通り過ぎていった。 #twnovel
2012-08-19 13:08:37体調が悪いのか、腹からキュルキュル音がする。気分が悪くなるなどの症状はないが、異常に腹が減る。食べても食べても追いつかない。キュルキュル。内蔵の音というよりは機械が生む、無機物同士がこすれ合うような音だ。蝉の声がやけに低い。落とした空瓶はずっと床に向かう途中だ。 #twnovel
2012-08-19 13:16:59喫茶店の窓から外の景色を眺めていた。道向かいの古いビルの屋上で少女が手を振っている。辺りを見回すが応えている人はいない。試しに小さく手を振ると少女は笑顔で大きく手を振り返してきた。 #twnovel 少女とビルは夕闇に消えた。きっと曾て其処にいたのを誰かに気づいてほしかったんだ。
2012-08-19 17:15:11台所で米をかかえているところを、ばぁさんに見つかった。鼻で笑った後で何事もなかったかのように振舞う。バレたなら開きなおって練習するしかない。 #twnovel じぃさんたら、孫をうまく抱けなかったもんだから、米なんかで練習してる。俺には必要ないとかで、我が子の時にサボったからよ。
2012-08-19 21:11:27背筋がゾクリとした。生温かい風が身体に纏わりついていたのに。突然背中に感じた冷気。第六感が見るなと訴える。でも恐怖に好奇心が打ち勝った。ゆっくり振り向くと。自分にそっくりな奴がこちらを見てニヤリと笑う。ドッペルゲンガーは死の予告。そいつが呼んだ。「兄ちゃん」 #twnovel
2012-08-19 22:51:21#twnovel そのひとは万華鏡の中に住んでいた。華やかな虚像に見え隠れする姿を探して、毎日筒を覗きこんだ。煌めく黄金色の向こうで手を振るひとに思わず手を振り返したその瞬間、意識は硝子片の向こうに移っていた。色彩に埋もれた迷宮の向こうから、あのひとが妖しい微笑で見つめている。
2012-08-19 22:57:01#twnovel 気づいたとき、私は彼の腕にいた。異端として人間に追われ、崖を落ちた記憶が蘇る。彼の機能は停止していた。壊れたら直らないロボットのくせに、私をかばって。私は彼に口づけし、体を重ねた。機械たちに創られ、育まれた半生物の私。可能性に賭けて融合を試みる。心を、あげる。
2012-08-19 23:05:00#twnovel 百年にわたり都市を管理してきた巨大コンピュータが取り壊される。新しいシステムは既に完成している。解体処理のさなか、コンピュータの中に胎内仏よろしく眠っていた小さなコンピュータが発見される。人型の。旧式の。少女は母の死と共に目覚める。新システムの網を破壊し、跳ぶ。
2012-08-19 23:30:21