「森の防潮堤」構想と宮脇昭氏への土木工学的観点からの批判(2012年3月-6月)
10年ぐらい前、ある市民大学で某大学の先生が、森は炭素を貯めると話した。どこにどんな形で貯めるか聞いたら、土の中にとの答え。砂礫地に新しく発達する森や低温で分解せず泥炭などが発達するならともかく、エコロジー派が好きな安定したホンモノの森(極相林)では、炭素の収支はあまり変化しない
2012-06-01 12:57:39森が炭素を吸収するという人は、森が無限に拡大すると言うのか。重力があるため、垂直方向には限界がある。スカイツリーが林立する森は出来ない。水平方向に拡大すると食料生産の場を失う。便利な里山・低山は木材などの生産の場に、奥山は多様な生態系と水源林や保安林に、高山は保全を軸に整備を。
2012-06-01 13:07:14※極相林と二酸化炭素吸収量の関係については、たとえば次のページを参照。
→▼CO2吸収源としての森:4.森と地球温暖化:森学ベーシック|私の森.jp http://watashinomori.jp/study/basic_04-2.html
→▼極相林は二酸化炭素の吸収には役立たず?|岡山理科大学 植物生態研究室(波田善夫) http://had0.big.ous.ac.jp/thema/q_and_a/co2&climax/co2&climax.htm
里山復活は都市近郊の話。地方では野生動物被害が増加する。薮を刈ったぐらいではサルも防げない。薪炭生産も大規模には無理。里山・低山帯は木材生産を中心に。輸入に頼る限り、紙と木材需要で熱帯雨林破壊。日本の低山帯は熱帯雨林より高い生産力。資産寝かしの零細民有林を商業ベースにのせる必要。
2012-06-01 17:01:20※獣害(野生鳥獣被害)は非常に深刻な問題になっている。とくに植生との関わりについて、次のまとめを参照。
→▼東北地方の植生とシカ害をめぐって(2012年4月3日) - Togetter http://togetter.com/li/287071
荒れ地、火砕流、山火事の跡に先駆性植物が芽生え、陽樹が育ち遷移を繰り返し極相林へ。しかし地形・水系・微気象、多様な環境に適応し、遷移の途中段階の植物相も残り、多様な動物相を保持する。所かまわず究極の森、ホンモノの森を植えるのは移り行く自然の豊かさを知らないもの。そんな社会も危険。
2012-06-06 07:40:00奇跡の一本松と言われた陸前高田の松原に対し、森の防潮堤提案者はそこにマツを植えた事が間違い、一本松は失敗の象徴と言う。根が深く入らないマツは、津波で根こそぎ流されたと言う。しかし調査では、2〜300年生の太いマツは幹の途中からへし折られ、若いマツが根こそぎ流されたという報告あり。
2012-06-06 07:46:27※被災海岸林のマツの具体的な被害状況について、たとえば植物の菌根菌を専門とする小川眞氏による次の現地報告がある(「名取市閖上浜の海岸林再生」「陸前高田市高田の松原」)。
→▼[PDF]「白砂青松再生の会」お便り No.28(2011年11月23日発行)|日本バイオ炭普及会 http://biochar.jp/pdf/hakusaNo28.pdf
→▼[PDF]「白砂青松再生の会」お便り No.29(2012年3月27日発行) http://biochar.jp/pdf/hakusaNo29.pdf
※なお、東日本大震災の津波による海岸林被害については、各種の調査報告がすでに公表されている。当まとめ末尾の資料リンクなどを参照。
海岸の砂浜に広葉樹なら深く根が入ったのか? 根の伸びは土壌、地下水位や地下水の塩分濃度にも関係する。ショウロ菌と共生するマツを勧める研究者もいる。数年単位の課題である瓦礫処理問題とは切り離して、100年単位で海岸林.海岸の利用方法、景観の問題は科学的合理性と住民の希望で考えよう。
2012-06-06 07:55:30潜在自然植生によって構成されるホンモノの森、究極の森をつくろうという考え方には、どこか優生思想、民族浄化思想につながるものを感じる。究極のゴールを目指して走るのが自然なのか、人間なのか? 置かれる環境、生まれる境遇は様々。出たとこ勝負の出来心、私の性にはその方が合う。
2012-06-06 08:18:02※管見の限り、「マツの根は浅い」「それに比べて広葉樹の根は深く入る」と宮脇昭氏が断定する根拠、検討できる客観的資料は提示されていない。逆に、マツを「深根性」とする資料は数多い。
※なお、2013年3月にweb配信されたインタビュー動画で、宮脇氏は「私が掘ってみたら浅かった」旨の発言をしている。
→▼「世界で唯一の防波堤林、がれきを活かした鎮守の森を作ろう!」宮脇昭氏インタビュー(2013年3月5日)|IWJ Independent Web Journal http://iwj.co.jp/wj/open/archives/64723
→▼130311 「命の続く限り、木を植え続ける」宮脇昭氏インタビュー - Togetterまとめ http://togetter.com/li/470141
※「ショウロ菌」はマツの菌根菌。海岸林のマツの根の耐塩性を強める可能性も指摘されている。
→▼ショウロ|明間民央のページ http://cse.ffpri.affrc.go.jp/akema/public/mycorrhizalfungi/shouro.html
→▼小川先生らの新刊『海岸林再生マニュアル』のご案内〔2012-11-02〕|水守人の会の活動案内、活動報告 http://mizumoribito.blog133.fc2.com/blog-entry-85.html
※また、次のまとめも参照。
→▼樹木と菌根菌の共生を利用した緑化技術と植生維持の話〔2013-11-13〕 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/589585
2012年6月17日
津波被災地の町の設計が決まらないうちから、防潮堤の高さを住民に決定させようとしている。急ぐ理由はゼネコンへのばらまきか。浸水区域の再開発。居住するのか高台移転か。農業・水産業か、工場誘致か、観光か、海浜公園か眺望と景観か。土地の利用方法によって、どこまで強固な防潮が必要か異なる。
2012-06-17 16:21:24ブログMaystorm Journal更新「森(緑)の防潮堤について/強度の検証と郷土の設計図が見えない」http://t.co/HTQmgMRk「一石二鳥を狙う森の防潮堤計画、その問題点」「防潮堤の高さと体積、瓦礫の量」「被災地では土が不足」「郷土の設計図が見えない」をテーマに
2012-06-25 09:48:35@kinoryuichi 宮脇昭氏の提唱する森の防潮堤に対する懸念をまとめました。読みにくい文章で、申し訳ありません。http://t.co/HTQmgMRk強度が検証されていない問題と、防潮堤はコンクリであろうと森であろうと、先に守るべき町づくりの設計があって、防災計画が必要。
2012-07-05 09:18:16@loveyassy 宮脇氏提案「森(緑)の防潮堤について/強度の検証と郷土の設計図が見えない」http://t.co/HTQmgMRk「一石二鳥を狙う森の防潮堤計画、その問題点」「防潮堤の高さと体積、瓦礫の量」「被災地では土が不足」「郷土の設計図が見えない」疑問と懸念のまとめ。
2012-07-06 22:46:39
(補註)
※当まとめ前半で触れられているダム事故の原因の理解について、@f_zebra さんよりコメント欄に次の解説をいただいた。
→▼http://togetter.com/li/359591#c1113356
▽「ロックフィルダムについては必ずしも「浮力」が問題となるわけではありませんが、強度を要求される盛土構造物で規格の揃っていない瓦礫等を主要な堤体材料として使う事はあり得ません。
木材等の有機物を含む瓦礫を、腐食による体積変化で崩れても周囲に危険を及ぼさないよう緩い傾斜で積み上げること自体は可能ですが、そこに堤防としての強度を期待することはできません。」
→▼http://togetter.com/li/359591#c1113357
▽「盛土構造というのは何も考えずに土を盛っているだけに見えますが、支持地盤の強度や要求される性能に応じて綿密に設計され、それぞれの部位で材料も細かく指定されます。
なるべく近場で採取可能な材料を選んで輸送距離を減らす工夫はしますが、特性の不明な(バラバラな)瓦礫等を使う事は考えられません。
土木工学の感覚からは、完全にナンセンスで検討の価値すらない、というのが率直なところです。」
(参考)
▽東日本大震災の津波による海岸林の被害状況に関する調査報告資料は多数ある。以下、一例として。
→▼津波と海岸林に関する調査研究事業:平成24年1月|森林保全・管理技術研究会 http://www.hozen-ken.jp/menu/2012-01tunami-mokuzi.html
→▼シンポジウム「海岸林の再生に向けて」〔2012年7月27日〕|森林総合研究所 東北支所 http://www.ffpri.affrc.go.jp/thk/research/meeting_for_reading_research_papers_etc/sympozum/20120727.html
→▼林野庁|第1回 東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会(平成23年5月21日) 配付資料一覧 http://www.rinya.maff.go.jp/j/tisan/tisan/110521si.html
→▼林野庁|第4回東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会(平成23年12月4日) 配付資料一覧 http://www.rinya.maff.go.jp/j/tisan/tisan/dai4kaikentoukaisiryou.html
→▼宮城県|海岸防災林に適した植栽樹種に関する調査報告書〔2012年3月〕 http://www.pref.miyagi.jp/soshiki/sinrin/chousahoukokusho.html