「現代思想 1985年4月号 後期 レヴィ・ストロース」を引っ張り出してP.42〈クレチャン・ドロワからワーグナーへ〉を読んでる。
- momonokoko
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METのワーグナー リング チクルスが日本で開催されているので、小さい本棚から「現代思想 1985年4月号 後期 レヴィ・ストロース」を引っ張り出してP.42〈クレチャン・ドロワからワーグナーへ〉を読んでる。
φ(..)メモ:12世紀フランスの騎士道物語ロマンスの吟遊詩人 クレティアン・ド・トロワ http://t.co/ZUZMTuHj
2012-08-19 18:23:57クレチャン・ド・トロワからワーグナーへ クロード・レヴィ=ストロース 現代思想1965年4月号P.42の冒頭「わが子よ、ほら。ここに、時空はひとつに溶け合う」。第一幕、場景が変じてゆくそのかたわらで、グルネマンツがパルシファルに語りかける言葉がこれである。(1
2012-08-19 18:29:52おそらく、それはかつて神話に与えられたもっとも深遠な定義をなしていよう。ことをグラール神話にかぎれば、この定義はいっそうはまりがいいにちがいない。グラール神話こそは、その歴史的起源、その発生の地をめぐって、ありとあらゆる仮説が提起され、いまなお提起されつづけているものなのだ。(2
2012-08-19 18:33:18目を古代エジプト、ギリシアに向けて、グラール伝説に神の死と再生のまことに古い信仰の残響を聞き取る者がいる。その神はオシリスであろうと、アティス、アドニスであろうと差しつかえはない。いずれにせよ、この仮説にもとづけば、グラール城訪問は奥義こそついに伝わらなかったとはいえ、(3
2012-08-19 18:37:53豊穣儀礼の名残りそのものとなろう。 ほかにまた、グラール伝説のキリスト教起源を主張する者もいる。もちろん、その見方がさまざまであることはいうまでもない。典礼という点からして、グラールの共回りは病者の信徒団、さらにはビザンチンの儀礼を思わせるところがあるという。(4
2012-08-19 18:41:28たとえば、ギリシア教会の「大いなる披露目の儀式」がそれであり、そのさい、「聖なる長槍」とよばれるナイフで聖体パンに切れ目を入れるという象徴行為が司祭の手で行われる。別の見方として、グラール物語が旧約から新約への移行を象徴しているとする説もなされた。それによれば、(5
2012-08-19 18:47:10魔法にかけられた城はソロモンの神殿をかたどっており、食物があふれ出る杯(あるいは石)おあそのまま契約の板とマンナにほかならない。長槍はアーロンの砦である。しかしながら、こうしたキリスト教にこだわる見方からは、どうにも腑に落ちないことが出てこよう。(6
2012-08-19 18:50:15古いグラール物語では、聖なる器(杯にせよ聖体器にせよ)が女性によって運ばれている。奇妙と言わざるを得ない。この物言いに対しては、女性は聖なる教会の寓喩であり、主人公のグラール城訪問は地上の楽園への帰還の謂であるという見方がなされている。(7
2012-08-19 18:56:14クロード・レヴィ=ストロース クレチャン・ド・トロワからワーグナーへ 続きP.43:(グラール神話について)これとは別に、イランの伝承を重視する解釈もある。この伝承に登場する神話的人物は、一軍の悪霊をひきいて、決然、天使たちに戦いを挑む。ひとたび傷ついて地に倒れてからは、(1
2012-08-20 18:00:13手足のきかぬまま、孫たちによる戦いの再開を待たなければならない。孫が勝ちをおさめ、それと同時にこの人物は生気をとり戻す。この寓話との関連で、アラブ人の手をへて西洋に伝えられたヘレニズム期エジプトの神秘哲学者たちの理論を挙げておく必要がある。それによれば、天上の知恵は(2
2012-08-20 18:04:36大杯に盛られて、この世にくだされた。至上の認識をわがものとするには、そこに身をひたすだけでよい。これぞまさしく知者の洗礼というに足る。この盃は同名の星座と混同されていたらしい。そもそも、古フランス語のグラール(graal)という語はギリシア語のクラテール(κρατήρ)から(3
2012-08-20 18:10:00派生しており、ラテン語のクラーティス(cratis)「篩(ふるい)」を介しているかもしれない。それはともかく、末期ラテン語のグラダーリス(gradalis)、「鉢、腕」があいだにあることはたしかだ。それゆえ語源の点からしても、グラールはいかにも隠れた力をもつ(4
2012-08-20 18:18:30天上の物体とするにふさわしい。もちろん、おしまいに精神分析による解釈がくる。しかし意外にも、格別なことは何もいわれてはいない。血まみれの長槍を男根の象徴、グラールそれ自体を女性器の象徴とみなすにとどめている。とはいえ、グラール神話には長槍の穂先が杯に浸されるさまを描いている(5
2012-08-20 18:22:06版もあり、根拠がないわけではない。今日では、まったく別の方向により広く意見の一致ができつつある。グラール物語中の数多くの要素が、実はケルト神話に由来しているらしいのだ。ガリアやアイルランドの伝承に、その断片が保存されている。そうとすれば、グラールは奇跡をうむ器のひとつと(6
2012-08-20 18:26:05とらえることができよう。すなわち、皿にせよ、籠、丼、角盃、鍋にせよ、それを用いる者は尽きることなく食物を手にし、あまつさえ不滅の生命を手にいれることもないではない。さらにまた、アイルランドの伝承や、通例いうところマビノジヨン集に収録されたガリアの伝承に、血を流す魔法の長槍(7
2012-08-20 18:30:55があらわれることも見逃しのできない。聖杯伝説の本文で、グラールの王は腿に傷を追った君主として描かれている。乗馬も狩りもできぬ身に、気ばらしは釣りをおいてほかにない。「漁夫王」のあだなも、由来はここにある。水浴びに湖へ出かける王の描写は、ワーグナーの作品をもって嚆矢とする。(8
2012-08-20 18:37:05いずれにせよ、アンフォルタスはその水との縁によって、あおる超自然の存在とはなはだ近い。つまり、ガリア神話の至福なるプランであり、それはアイルランドの神ヌアドゥと対応する(その名はまさしく「漁夫」を意味する。)いずれもが不思議の剣、魔法の鍋の作り手として、まことに誉高い。(9
2012-08-20 18:41:38まだある。と、続くのだがここで止めとこ。まだ冒頭ですからね。レヴィ・ストロースの軽やかなステップと様々な事物の衝突でインターフェイスが更新されてゆくさまは、そのままドゥルーズやデリダに受け継がれてる。(10
2012-08-20 18:46:05現代思想|1985年4月号特集=後期レヴィ=ストロース「クレチャン・ド・トロワからワーグナーへ」続き。3回目:まだある。ケルト神話では、王国の崩壊、人、家畜、畑の不毛不妊は君主の腎虚や無為な暮らしぶりに端を発することが多い。これはグラールの国を打ちのめした呪いに(1
2012-08-21 18:27:25比すことができる。グラールの国が「荒れ地」と化したのも、王の体がきかなくなって以来のことだからだ。この魔法が解けるためには、よそから北訪問者が問をいくつか発しなければならない。これまた、アイルランドやガリアの伝承に見出だせる主題である。しかしそうはいっても、グラール物語として(2
2012-08-21 18:31:01世に知られたもっとも古い版がイギリスに由来するわけではない。それはシャンパーニュ出身のフランス人詩人クレチャン・ド・トロワに帰せられる。制作は一一八〇年と九〇年のあいだのことだ。………(3
2012-08-21 18:38:03と、ここからようやく本題のクレチャン・ド・トロワのからワーグナーへの話が始まる。J・フラッピェ著作「クレチャン・ド・トロワとグラール神話」(高等教育出版協会による再販、一九七二年、パリ)を参照にしたクレチャン・ド・トロワとその創作活動の要約が記述されている。(4
2012-08-21 18:49:49クレチャン・ド・トロワは、保護者フランドル伯爵フィリップ・ダルサスから受け取った書物よりインスピレーションを得てある物語を創作したらしい。
2012-08-21 18:55:51