ヨウカイスレイヤー第五話より「バット・フー・イズ・ザ・イービル・ヨウカイ」#1

第五話「フラワリング・サツバツ・ナイト」 ファンタズマゴリア・ケイム・フロム・ジゴク #1:http://togetter.com/li/352567 バット・フー・イズ・ザ・イービル・ヨウカイ #1:http://togetter.com/li/361069 続きを読む
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ヨウカイスレイヤー・第五話「フラワリング・サツバツ・ナイト」より「バット・フー・イズ・ザ・イービル・ヨウカイ」#1

2012-08-24 16:42:28
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「イヤーッ!イヤーッ!」無人のハクギョクロー・スゴイヒロイニワで、リアルユーレイを携えた少女が一心不乱にシナイを振り続けている。彼女の名はコンパク・ヨウム。眉の上で切りそろえられた銀髪。その胸は平坦であった。彼女の得物である二本のカタナ、ロウカンとハクロウは部屋の中だ。1

2012-08-24 16:46:15
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シナイは一般的なバイオバンブー製ではなく、トレーニング用の金属製シナイである。これは通常のものよりも三倍重い。つまりこのシナイを振ることによって、通常の三倍の速度でバイオバンブーを振ることが出来るという算段だ。「イヤーッ!」ヨウムは左手一本で金属製シナイを振るう。2

2012-08-24 16:50:02
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「まだだ……まだ足らぬ!」ヨウムは素振りを続けながら悪態をつく。「あの時もそうだ!レイム=サンやユカリ=サン達に、そして何よりも守るべき我がロード、ユユコ=サンにまで助けられるなどという失態!」ヨウムは力任せにシナイを地面に叩きつける。シナイが少し変形した。3

2012-08-24 16:58:23
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ヨウムはイアイドー25段のタツジンであったが、彼女の祖父でありメンターでもあるコンパク・ヨウキからは酷評されていた。((ヨウムよ、オヌシの太刀筋は迷いがある。迷い、情け、全てを捨てカタナと一体になれ))幼少期から何度も聞かされたインストラクションがニューロン内でコダマする。4

2012-08-24 17:04:45
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「迷いは捨てたはずなのに!イヤーッ!」SLAAASH!ヨウムはバイオバンブー製シナイで金属製シナイを切断!これはイアイドー30段を有する者でも実際難しいとされるワザマエ!だがヨウムの顔に喜びの色はない。「教えてくださいメンター!私には何が足らないのですか!」当然、返事はない。5

2012-08-24 17:10:41
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コンパク・ヨウキは、ヨウムが一人前になるのを見届けるよりも前に行方をくらました。突如メンターでもある、愛する祖父を失った幼きヨウムは三日間泣き続けた。成長した自分を誰が認めてくれる?ユユコ=サンが?おじいちゃんが戻ってくるのか?様々なセルフ問答を繰り返すも答えは出なかった。6

2012-08-24 17:14:21
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トレーニングをやめると、ヨウムはハクギョクロー内へと戻った。この館の主であるサイギョウジ・ユユコは出かけていていない。「三度の飯」「死」「サクラモチ」極太オスモウ・フォントで書かれたショドーが、長い廊下に複数飾られている。その突き当たり、両開きのフスマをヨウムは開く。7

2012-08-24 17:20:49
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センコめいた香りが彼女の鼻孔を刺激する。異常なし。いつもの匂いだ。タタミ六枚分のその部屋はヨウムの自室である。物は少なく、綺麗に整頓されている。ヨウムは飾られている二本のカタナを手にした。体格に似合わぬ長刀のロウカンと、斬った生物をソクシさせると言われる刀ハクロウだ。8

2012-08-24 17:26:15
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「スウーッ……ハアーッ……」ヨウムはザゼンし、ヨウカイスレイヤー、またの名をハクレイ・レイムから教わったチャドー呼吸を行う。「スウーッ!ハアーッ!」集中力と血中ダンマクが高まる。ニューロンがスパークし、クリアになった記憶から重要と思われる記憶をサルページする。9

2012-08-24 17:31:28
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((よいか。ハクロウは肉体を斬るものではあらぬ。その者の迷い、精神を斬るカタナだ))ぼやけてはいるが、声の主は確かにヨウキのものだ。((ハクロウはむやみに使うものではない。迷いある太刀筋ではタケノコ一本さえ斬れぬからだ。ハクロウを振るう時は己の迷いごと断ち切るのだ……))10

2012-08-24 17:36:08
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ニューロン内、記憶の海に沈んでいた祖父のインストラクションが当時の記憶とともに蘇る。ハクロウ。ユーレイなら刀身に触れただけでオタッシャ重点と言われ、ヨウムも先の戦いで何度か使用したカタナだ。「懐かしい。当時は意味をそのまま捉えて、ハクロウでセプクしかけたのだったか」11

2012-08-24 17:42:55
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ヨウムは笑みを浮かべながら、ハクロウを見る。「見ていて下さいヨウキ=サン。私は一人前になってみせます」ヨウムは決断的にフスマを開く。スパーン!勢いのいい音がハクギョクロー全体に響く。「イヤーッ!」ヨウムは一瞬で長い廊下を駆け抜けた!そして一閃!「イヤーッ!」12

2012-08-24 17:46:36
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イッセン・ジツからの連続イアイ・ギリ!ハクギョクロー内に浮かぶユーレイたちがハクロウとロウカンで斬られゆく!「イヤーッ!」ユーレイたちはソクシ!ナムアミダブツ!「オーボンの/夜に抗う/死の裁き」ヨウムはふと思い出したハイクをつぶやくと、死が渦巻くこの地を飛び出した。13

2012-08-24 17:55:01
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「ユユコ=サンは元気になってから食べ歩きが重点だ。ならば帰りは夕飯後頃。それまでなら!」彼女は跳躍し、盛んに咲き乱れるオーガニック・ヒガンバナに目をくれず稲妻めいた速さで階段を駆け下りる!「実戦修行、あるのみ!イヤーッ!」ヨウムは走り去り、すぐに消えた。14

2012-08-24 18:00:55
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「……そうかい、そいつは大変なこったな」燃えるような赤い髪を持つその死神は、虚空に向かって話しかけた。否、虚空ではない。彼女の眼前には一体のユーレイが風船めいて浮いている。それらは体を得ていない為話すことができないが、冥界に住まうものや死神はそれらとの意思疎通ができるのだ。16

2012-08-24 21:05:25
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彼女、オノヅカ・コマチはシニガミ・ヨウカイクランに属しているため当然ユーレイと会話できる。「アンタの苦労もよく分かるな。オタッシャの瞬間はどうだったよ?アタイの管轄では殺されたユーレイを見る機会が実際少なくてね」コマチは自前の折りたたみ式タタミを取り出し、その上にアグラした。17

2012-08-24 21:16:24
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サンズ・リバーのセセラギが辺りを支配する。そこに時折入り込む相槌。生前の肉体が安易に予想できる、四角いシルエットを持つユーレイが舞い踊る。コマチはユーレイが生者であった時の武勇伝を聞くことが趣味であった。そのため、頻繁に仕事を忘れ上司のヤマザナドゥに棒で叩かれている。18

2012-08-24 21:21:11
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「ハハ、カートゥーンめいていると思ったが、まさか本当に嘘とはな」不意にコマチが笑った。会話の内容は不明だが、おそらくユーレイが生前について語っているのだろう。「……アー、……うん、ワカル。いるぜ、こっちにもダンゴ中毒の哀れなヨウカイが。あいつはまだ死にそうにないがね」19

2012-08-24 21:29:40
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「っと、そろそろ行かないとまずいな。アンタもこんな辛気臭いところにずっといたかないだろうよ」彼女は辺りを軽く警戒してからタタミをしまい、代わりに大鎌を取り出した。刃部分がグニャグニャと変形している奇妙な形だ。「イヤーッ!」コマチはそれをユーレイめがけ振り下ろした。20

2012-08-24 21:36:12
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……だが、特に何も起こらない。「ヘヘ、コイツは偽物さ。裁くのはアタイの仕事じゃない」コマチはサンズ・リバーへ歩む。ユーレイもそれに続く。ほとりにはボロボロの船が浮かんでいる。底に穴が開いているようだが、沈む気配はない。「乗るかい?と言っても乗らないと何も始まらんがね。ケハハ」21

2012-08-24 21:44:18
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二者は河岸まで歩き、ボロ船に乗り込んだ。「分かりやすい話さ。生きる者は誰だって……まあ例外もいるっちゃいるんだが、死ぬ。そいつらは善人もまとめて皆いったんジゴクへ送られる」コマチが譫言めいて言った。「そこで裁かれるんよ。アンタみたいなのは問答無用でジゴク行きさ。ケヘヘッ」22

2012-08-24 21:49:30
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何事もインガオホーよ、とコマチは呟いた。「たまにいるのさ、アンタと同じ奴らが。全員が全員それぞれの因果を抱えてるってやつさ」船はいつの間にか対岸近くまで来ている。「さて、船旅はあっという間よ。ここからはアンタ次第だ、せいぜいぬるめのジゴクに落ちることを願ってるぜ。ケハハハ」23

2012-08-24 21:51:57
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ユーレイはオジギをするかのように体を捻じる。コマチは鎌を持った方の手を振った。ユーレイはゆっくりと浮遊しながら消えていく。「さて、一仕事終わったことだし、アタイは寝るかな」彼女は折りたたみ式タタミと圧縮されたフートンを取り出し、小さな船上にそれらを広げた。24

2012-08-24 21:53:15