ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/08/26

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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ふき(かざとき) @huki_999

薄闇に赤いランプが灯っている。微かな光しか届かない水底、画一的なラインを描く建造物の合間を魚群が泳いでいく。セラミックの外壁、その隙間から生えた海草や珊瑚が小さな海の生物たちを守っていた。建造物を造った者たちのことなど忘れて、海底の時は流れる #twnovel

2012-08-26 02:24:52
しゅうこせんせい @siyucco

僕の彼女は、体内の水分含有量が多いらしい。瞳を覗くとオパールの様に色が揺れる。色の濃い入浴剤を使うと、彼女のお尻はうっすら色が付く。眠れない夜、彼女の身体に耳を当てると、波に似た音がする。彼女は凪いだ海のようだ。僕は心から安心して、次第に眠りに包まれるのだった。 #twnovel

2012-08-26 02:27:30
Stella Rossa @redstaruni

私はもりそばと名付けられたが、双子の兄はうおのめで、そっちのほうがひどいのであんまり気にしていない。兄も兄で私のほうがひどいと思っているようだ。そんな私たちの趣味は他人にアダ名をつけることで、例えばこの前私達を哀れんだりする奴がいたからくつべら、と名付けた。 #twnovel

2012-08-26 04:50:44
はたなか茶 @cha_hatanaka

レモン柚子グレープフルーツ。貴方は優しいひとだから、と彼女は言った。多分いま手を離せば永遠に失う。けれど抱きしめ続けることはいとも容易い。それほどに力ない彼女の抵抗。震える脊椎。小さく嫌々する髪に、何言ってんだよ、と、息を吹き込む。シャンプーのあまい香りがした。 #twnovel

2012-08-26 08:49:46
紺屋 @ysga1002

逢魔が時には影踏み鬼がやってくる。この村に伝わる迷信だ。勿論私も信じていなかった。夕暮れ刻、前方に家路を急ぐ少女の姿があった。その後ろに、見慣れぬ男が一人。男が少女の影を踏みつけた瞬間、少女の姿は影も形もなかった。男は私を振り返り、歪な笑みを浮かべて姿を消した。 #twnovel

2012-08-26 11:06:34
しぃとろん @seatoron

メタボなスーパーマンが地面すれすれを飛んでいた。行き交う人々とぶつかる。「スーパーマンなんだから、もっと上を飛んでよ!」「マントに『重い!』と言われてしまって…」「大きなマントにすれば?」「それだとマントに僕が隠れてしまって、みんながわからないじゃないですか…」 #twnovel

2012-08-26 12:49:00
Gabb-- @itisnot

ふしぎの国に迷い込んだ僕らがまず驚いたのは、この場所にある全てのものがぬいぐるみだってことだ。城も兵士も野菜も犬も、全部が柔らかなフェルト素材。料理も水もふかふかした塊で、僕らには食べられそうにない。住民も食べようとしなくて、尋ねると僕らのことをじいっ、と見た。 #twnovel

2012-08-26 13:22:08
カンナ堂 @kan_nami

公園で夜咲きの白い花々を眺めて帰ってきた。幽かな香りだったのにまだ残り香がまとわりついている。鳥のように巨大な蛾が受粉の媒介をしているのだという。くぐもった音がするのでカーテンを開けた。残り香のせいだろうか、網戸には見たこともない巨大な蛾がびっしりたかっていた。 #twnovel

2012-08-26 14:00:02
雪月 @setugetufuka

乙姫は悩んだ末に、開けてはいけないとだけ言って玉手箱を渡した。玉手箱は時間を吸い込む。開けなければ浦島太郎の時間は進まず、そうすればいつか戻って来てくれるかもしれない。そう願って渡したのに。亀の報告を聞いて乙姫は泣き崩れた。彼女は本当に浦島太郎を愛していたから。 #twnovel

2012-08-26 17:01:48
falsewhere @nowherenotime

#twnovel 半分の月を見上げながら思う。この夜を待ち望んでいた。この月のために、ぼくは以前、奇しくも半月ほど前、空に浮かんだもう半分の月を捕らえて、広口の硝子瓶に保管しておいたのだ。今こそあれを解き放とう。と、大切に仕舞っておいた瓶を取り出したのだが、中は既に空っぽだった。

2012-08-26 18:31:32
みお @miobott

#twnovel 秋を感じる涼やかな夕暮れ、私は川縁で足を滑らせた。滴を散らしながら私は川の中に滑り落ちる。そこで一瞬気を失った私は、白い女の手によって救われた。女はその柔らかい膝に、私の頭をそっと載せ撫でる。はたと気付けば私は水浸しのまま、白膚を持つ柳の根元で眠っていた。

2012-08-26 18:34:52
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

月が欠ける速度に従い私は痩せ衰える。体重が標準を下回ると、異常だということに気がついた。今では月は爪の先ほどしかない。私と云えば骨と皮ばかりの有様だった。しかし、新月を迎えても消えることはなく安心する。月が満ち始めると今度はお腹が膨らみ始め、唐突に妊娠が発覚した。#twnovel

2012-08-26 18:46:36
すわぞ @suwazo

#twnovel 蝸牛を机の上に置く。睡眠薬を注射しピンセットで蝸牛を殻から引き出す。そっと。蝸牛という生き物は実は扉であり箱でもある。「さあ、何が出てくるかな」教授が呟く。蓋を失った殻から金色の砂がざらざらと零れだす。見る間に研究室を埋め尽くし、窓を割り、なおも砂は流れゆく。

2012-08-26 21:37:06
birdboiled @birdboiled

#twnovel 同窓会。どうも飲みすぎたようだ。トイレから帰ってくると自分の席にはもう別のやつが座っていた。仕方なく隅っこの、どうしても名前を思い出せない男の隣に座る。さりげなく名字を聞き出そうとするとそいつは笑った。あの頃は名前、なかったよ。働きはじめて、売人から買ったんだ。

2012-08-26 23:37:42
鋼雅⚔「独眼竜政宗の休息」配信中 @kougaakatuki

#twnovel 幽霊諸君! 近年、我々幽霊にとって由々しき事態になっているのをご存じだろうか。電球はやたら長持ちし、建物は次々補強され、家具も固定されている。つまり、我々の存在を人間に知らせる手段が年々減っているのだよ! 今後どうすればよいか、話し合おうではないか!

2012-08-26 23:42:40