「イン・ジ・エンド・オブ・ザ・オーダリー・エイジ」＃２

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「私はここに居ます。ドーモはじめまして、私に名はありません。ボンズとお呼び下さい」「ドーモ、ボンズ＝サン。バフォメットです。貴様が、か。ブラックゴート＝サンは強いニンジャではなかったが、弱いニンジャでもなかった。ニンジャを殺されたとなれば、我々も黙っているわけにはいかん」２３

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「と言いますと」「ブラックヤギ山賊団は我々イヴィルデーモン山賊団の傘下よ。それがヒョロヒョロのニンジャ１人に壊滅させられた？フザけた話だ。貴様には死んでもらう」バフォメットは冷酷に告げた。「そうでしたか、分かりました。お好きに…」「ダメ！ボンズ様、ダメ！」２４

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シギが叫ぶ。飛び出そうとするが、山賊のサスマタに首を押さえられる。血を吐く。「実際お世話になりました」ボンズのアルカイックな声。「キュルソン＝サン、連れて行け」「ヨロコンデー！」キュルソンと呼ばれたサンシタ風のニンジャがボンズに手錠をかけ、鎖をバイクに繋いだ。２５

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「ウヘハーッ！」キュルソンとその配下がバイクを走らせる。ボンズが引きずられてゆく。シギが、村人たちが喚くが「イヤーッ！」バフォメットがこれを一喝！「…さて人間共。少ないとは思うが蓄えを全て出せ。供物だ」「アイエエそんな…やっと取り戻したのに…」「イヤーッ！」「アイエエエ！」２６

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…カネが、食料が、まだ加工していないプロセッサの実が、バフォメットの眼前に積み上げられてゆく。「取り戻したと言ったな貴様。貴様が何をした？やったのはあのニンジャボンズだ。人間ごときがニンジャに逆らえると思うか？愚か者の人間が」バフォメットが蔑む。供物が積まれてゆく。２７

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「これで全部です。どうか、どうかオタスケを…」「フム。助けて欲しいか」「オタスケを…」村人全員がドゲザする。「ところで貴様ら、あのボンズはいいのか？」「アイエッ？」「貴様らが助かれば、あのボンズはいいのか？」「アイッ、アイエッ？」「これだから人間は愚かなのだ。話にならぬ」２８

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「貴様らが初めにボンズの命乞いをしていたら…気が変わったかもしれんな。だがダメだ。薄汚いモータルどもめ、ファック＆サヨナラ重点だ」「おっ、お助けを！オタスケー！」「この期に及んで誰が助ける？ボンズはいないぞ？ファック＆サヨナラ重点！」「「「重点！」」」山賊たちが気勢を上げる！２９

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バフォメットの瞳孔がH字状に変形。頭からは捻じ曲がったツノが生え、ニンジャ装束の下から黒い毛皮が現れる。ブラックゴートと同じジツか？違う、巨大化する身体は人間のシルエットを取り続けている。胸が豊満に膨らみ、ヤギ頭は村人達を睥睨。背中の皮が裂け、黒い羽根が広がる！アクマだ…！３０

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「サヨナラだ、クズの人間共！最後の供物は貴様らだ！メエエエエーーーッ！！」アクマ…バフォメットが吠え、山賊達が武器を掲げる。村人達はドゲザのまま失禁。エンジン音が、銃声が、スラッシュ音が、悲鳴が響き、地上のジゴクが現れた。３１

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「ウヘハーッ！」キュルソンがバイクを走らせる。鎖に繋がれたドレッドボンズは体を丸めてダメージを最小限に抑えようとする。だが限度はある。地面に、岩に、バイオ樹木に叩き付けられ、秒ごと新しい打撲と骨折が生まれる。錫杖は離さない。これが無くては最後に自分を弔えないではないか。３３

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３０分ほど走行すると、キュルソンとその一団は手頃な空き地にバイクを停めた。ボロクズ同然になったボンズはしかしまだ呼吸をしていた。「アーン？しぶてェー！スゴイしぶてェー！スゲェー！ニンジャスゲェー！アッ、俺もニンジャかァー！スゲェー！」ボンズは這いつくばったままだ。３４

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「…私が死んで、彼らが生き延びる。このような順序になっただけです。彼らもいずれ救われます」「ボンズの言う事は難しいなァー！ヨシ優しい俺様がカイシャクの前にタネアカシだァー！」「ちょっとキュルソン＝サン、それは…」「うるせェバーカ！」咎めた山賊をキュルソンが軽く張り手！優しい！３５

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「どっちにしろあのシケた金持ち村はオシマイだァー！この稼業ナメられたらオシマイだからなァー、バフォメット＝サンなら絶対見せしめにファック＆サヨナラする！オマエは無駄死に、人間共も無駄死に！ヤッター！ガッカリしたまま死ねェー！」キュルソンがボンズの頭にストンピングを繰り出す！３６

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ボンズはゴロゴロと転がり、これを回避。「…それは、困る。救われないではないですか」「アーン？知らねェー！死んだら救われんじゃねェーの？言ってたじゃん！イヤーッ！」再度のストンピングを転がり回避。「…違うのです。生か死か、その階梯の話はしていません。私でなければ救えないのです」３７

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ボンズは錫杖を頼りにゆっくりと立ち上がる。「エーッ！狂ったァー！コワイ！イヤーッ！」キュルソンがスリケンを２枚投擲、しかし２枚ともがあさっての方向へ飛び、不運な山賊に突き刺さった。「エーッ！？」「彼らを救えないなら、せめてあなた方を救いましょう。私が救います」「アレーッ！？」３８

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ボンズのドレッドヘアーに紫電が走る。眼球が激しく動く。「アレレアバーッ！？」キュルソンがガクガクと痙攣、血を吐き、エジャナイザ踊りめいた動きをする。山賊に動揺が走る！エジャナイザ踊りは指数関数的にスピードアップし、限界に達したキュルソンが…爆発四散！「エジャナサヨナラァー！」３９

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「エジャナイザ！エジャナイザ！」次に踊り始めた者は、無線LANをインプラントしている盗賊…全体の７割程度だ。集団ヒステリーめいたそれは次第に生身の者にも伝染し、「ルルァックァラー！」「アバーッ！」互いの武器で同士討ちを始めた！「ダァーッ！」「ズラッガーッ！」「アババーッ！？」４０

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「NAMUAMIDABTDZ…。NAMUAMIDABTDZ…」紫電を発しつつネンブツを唱えるドレッドボンズの周りで、山賊達が殺し合う。ジゴク？違う、救いだ。少なくとも心を病んだボンズにとっては、そして超常の力を持つニンジャにとってはそうなのだ。「アバッ」最後の山賊が自害した。４１

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「NA、MU、A、MI、DA、B、TDZ」シャリーン。錫杖を一度打ち鳴らすと、弔いは終わった。ボンズはネンブツ・ウォークを始めた。随分と久々に思われた。４２

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彼は満身創痍のまま一晩歩いた。バイオパンダやバイオトドの死体が足跡のごとく残った。薄暗い朝日の中彼が見た物は、炭化したミノル村だった。ダイブツジェネレーターが崩れ、灰が舞った。ボンズはドゲザ姿勢でうずくまった。そして呻いた。４４

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それは慟哭だったか？それとも他の何かだったか？誰のためのものだったのか？死んだ村人達か、悪行を運命づけられていた山賊達か、あるいは自らのためか。高潔なボンズであり、かつ狂人であり、かつニンジャである彼の心は窺い知れない。ただうずくまり、声を発していた。４５

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その時、天から一筋の光る糸が降りてきた。古事記に記された、罪人のジゴク脱出譚めいて。４６

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「イン・ジ・エンド・オブ・ザ・オーダリー・エイジ」＃２おわり　＃３に続く