山本七平botまとめ/【危機の日本人③】なぜ日本が米国の理不尽な要求に従わねばならないのか?…その理由を理解しようとしない日本人/~成功しすぎた異端・日本が覚悟しておくべき事とは~

山本七平著『危機の日本人』/第四章 未来への課題/199頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

1】【成功しすぎた異端-日本人と日本経済】残念ながら日本は「自由圈の御威光」ではないし、自らが「御威光」になる気もなく、もっと呑気で責任を負う義務がなくかつ高収入を得られるナンバー2、いわば「副社長」の位置に安住したいなら、「崔家門の知恵」に学ぶべきである。<『危機の日本人』

2012-08-24 15:57:59
山本七平bot @yamamoto7hei

2】だが、その場合、きわめて不合理な要求をされることは覚悟せねばなるまい。…日本学者ペン=アミ・シロニー教授は…次のような面白い指摘をしている。「貿易不均衡を生じた場合、赤字を出している側がその不均衡を立て直すというのが慣例になっていた」と。

2012-08-24 16:27:53
山本七平bot @yamamoto7hei

3】これは今でも慣例であって、債務国でありかつ貿易赤字国である国に対しては、先進国・債権国は、その不均衡を立て直せと厳しく要求している。だが日本はこの点で奇妙な地位に置かれていると氏は指摘している。

2012-08-24 16:57:53
山本七平bot @yamamoto7hei

4】「1973年のオイル・ショックに伴い、日本の対米赤字は百億ドルに膨れ上がった。しかし誰一人としてアメリカを非難する者はいなかった。それは日本の様に資源のない国は貿易不均衡のあおりを受けても仕方がないのだと考えられたから…日本自身の問題であって他の誰の責任でもないという事なのだ

2012-08-24 17:27:48
山本七平bot @yamamoto7hei

5】時は移って1983年、日本の対米黒字は二百億ドルにも上った。すると突然にアメリカがわめき始めた。購買力では、1983年の二百億ドルと1973年の百億ドルは全く同じにもかかわらず……」大変に面白い指摘である。

2012-08-24 17:57:59
山本七平bot @yamamoto7hei

6】シロニー教授は、ここから、先進資本主義国における、成功しすぎた異端である日本人とユダヤ人の対比という問題に進む。それは確かに一つの捉え方であり、その点に関心のある方は前掲書を読んでいただくとして、私は別の面からこの問題を捉えてみたいと思う。

2012-08-24 18:27:50
山本七平bot @yamamoto7hei

7】確かに、アメリカはアメリカの債務国で赤字国である国に対しては「お前の責任だから何とかしろ」と要求しつつ、一方アメリカの債権国で黒字国である日本に対して「お前の方でこの黒字を何とか解消しろ」という。これはまことに得手勝手な話であって、その態度には論理的な一貫性はない。

2012-08-24 18:57:57
山本七平bot @yamamoto7hei

8】だが、この矛盾を徹底的に追究したらどうなるであろうか。もちろん双方に様々な言い分があるであろうが、要約すればその時の相手の言い分は「そう主張するなら、お前は自由主義世界の安全と秩序に全責任を負う『御威光国』になれ」という事、簡単にいえばアメリカの肩がわりをせよという事である。

2012-08-24 19:27:52
山本七平bot @yamamoto7hei

9】だが日本はその責任を負う気はないし、負うことも不可能である。まことに残念なことだが「今の掟」では、経済力だけでは御威光国にはなれず、軍事力を持つことを要請される。では日本はアメリカの軍事力を肩がわりする気はあるのか。

2012-08-24 19:57:58
山本七平bot @yamamoto7hei

10】全然ないし、第一それは不可能であり、そんなことをすれば経済的に破綻して、元も子もなくしてしまう。ということは、自らの責任において秩序を保持し、それをあたかも自然的環境のように自分の責任で守る意志は日本にないということである。

2012-08-24 20:27:54
山本七平bot @yamamoto7hei

11】その場合は「御無理、御もっとも」として、御威光国の秩序維持に協力すること以外に、方法がない。日本は決して過去の失敗を繰り返してはならない。「御威光国」は経済力と軍事力のみならず科学技術をも含めた総合的国力を要請される。

2012-08-24 20:57:57
山本七平bot @yamamoto7hei

12】過去の日本は経済力なしに、軍事力だけで「御威光国」になれると夢想した。否、妄想をしたと言ってよい。現在もしその逆、すなわち軍事力なく経済力だけで「御威光国」になれると妄想したら、同じ失敗をくりかえすであろう。

2012-08-24 21:27:49
山本七平bot @yamamoto7hei

13】もちろん、そんな妄想は今の日本人には毛頭ない、という人もあろうし、事実、ないのかも知れない。しかし、経済力は持っても政治には一切無関係といいうるのは個人のみであって、国家はそうはいかない。

2012-08-24 21:58:01
山本七平bot @yamamoto7hei

14】というのは、自らにその意志がなくても、日本の経済力がアメリカの御威光を損ずる結果になれば、日本がまるで自然的環境のように依存している現在の体制を崩壊させる恐れがあるからである。

2012-08-24 22:27:54
山本七平bot @yamamoto7hei

15】勿論崩壊させて自らの意志に基づく新体制を樹立する意志と計画があるなら別だが、そうでないなら自らも発展しつつ同時にその発展を可能にしている政治的・経済的環境を維持していくにはどうすべきかを考えるべきで、その為には実に矛盾した相手の要求を受け入れる覚悟をしておく事が必要であろう

2012-08-24 22:57:57
山本七平bot @yamamoto7hei

16】というのはその矛盾は、実は日本に内在しているからである。だがこういっただけで反発を生ずるかも知れぬ。というのはこういう考え方は、日本人の伝統的な機能至上主義的発想とは相容れない。

2012-08-24 23:27:51
山本七平bot @yamamoto7hei

17】というのは、機能する事自体に価値を置くから、最大限に機能を発揮してきたことを一転して否定され、その成果も努力も無にされることに日本人は耐えられない。それまで高く評価されていたことが、一転して罪悪視されるという結果を招くことを、日本人は理解しないし、しようともしない。

2012-08-24 23:58:06
山本七平bot @yamamoto7hei

18】また、相手のきわめて非論理的な態度に、強者の圧力を感じて釈然としないが、それに代わる自らの提案もしない。確かにベン=アミ・シロニー教授の指摘するように、アメリカの態度はまことに論理的に一貫しないのである。ではそれに応ずるのはなぜか。

2012-08-25 01:27:55
山本七平bot @yamamoto7hei

19】過去において似た様な問題はしばしば出て来ているが…戦前・戦後を通じて一貫しているのが次の言葉であろう。政府の弱腰、アメリカベったり、対米媚態外交等々。だがそういいながら多くの場合、日本は屈伏する。すると屈伏の連続が屈辱感となり、それがある程度たまって来るとどこかで爆発する。

2012-08-25 01:57:48
山本七平bot @yamamoto7hei

20】これは簡単にいえば、そのとき自分がなぜそれをしなければならないかを明確に意識せずに「無理難題に屈伏させられた」「外圧に敗れた」と受けとっても「自分がそれによって発展して来た環境を、その発展のゆえに破壊することがあってはならない」と考えないからである。

2012-08-25 02:27:51
山本七平bot @yamamoto7hei

21】ではそう考えずに、屈伏・屈伏の屈辱感から、あくまでも屈伏せず、外圧をはねのけたらどうなるか。自らがそれに即応することによって維持・発展してきた環境を自ら破壊して、自らも崩壊する結果になってしまうことになる。

2012-08-25 02:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

22】【論争をしない日本】もっとも現代の日本にはまだその徴候は現われていない。現われていないから安心だと言えるであろうか。実はそれが言えないのである。ベン=アミ・シロニー教授の言う通りアメリカの主張は理不尽である。

2012-08-25 03:27:50
山本七平bot @yamamoto7hei

23】こういう場合ユダヤ人なら徹底して相手に論争を挑むであろう。そして一つでも譲歩すれば、別の面で相手に何かを譲歩さす。だが日本人はそれをしない。またはっきり言って出来ない。シロニー教授のように、相手の理不尽を相手の論理でつかむという術にたけていないからである。

2012-08-25 03:57:47
山本七平bot @yamamoto7hei

24】彼らはこれを反射的に行いうるが、それは伝統の違いであって、日本人にこの真似はできない。しかし日本人は、言葉にはならなくてもカンは鋭いから、何となく納得できないという気持は抱いている。だが、それがしだいに蓄積して来ると、いつかは爆発する。

2012-08-25 04:27:52
山本七平bot @yamamoto7hei

25】日本人がよく口にする「今度という今度は我慢ならない」が出てくるのである。これが出てくるのは非常に危険だから、以上のように整理して、日本が何が故に理不尽な要求に従わねばならぬかを、はっきり納得しておく必要があるであろう。

2012-08-25 04:57:43